テレビやHDD-DVDレコーダーなど、HDDを搭載したデジタル家電は珍しくなくなった。しかし、大容量のハイビジョン番組をどんどん録りためていけば、すぐに容量が一杯になってしまう。次世代DVDはそうしたデータの退避先として期待されている。しかしもうひとつの解決策がある。HDDそのものを交換して使う、リムーバブルHDDだ。

 テレビやHDD-DVDレコーダーなど、HDDを搭載したデジタル家電は珍しくなくなった。しかし、大容量のハイビジョン番組をどんどん録りためていけば、すぐに容量が一杯になってしまう。次世代DVDはそうしたデータの退避先として期待されている。しかしもうひとつの解決策がある。HDDそのものを交換して使う、リムーバブルHDDだ。しかも規格を統一することで異なるメーカーの異なるジャンルの製品間でも大容量コンテンツのやり取りができる。テレビやカーナビなどのデジタル家電に搭載することを想定して策定されたのが、リムーバブルHDD規格「iVDR」。この春、日立製作は薄型テレビ「Wooo(ウー)」に初めて「iVDR」を採用した。デジタル家電にも「リムーバブル」の波は訪れるのだろうか?

●日立の薄型テレビにリムーバブルHDD規格「iVDR」

 地上デジタル放送のハイビジョン番組を録画・保存する場合、録画するだけならHDD内蔵レコーダーでも可能だが、沢山の番組を長期的に保存するとなるとDVDなど別のメディアが必要になってくる。しかし、通常のDVDではハイビジョン画質のままでは残せず、画質が落ちてしまう。画質を劣化させずに保存できるのが次世代DVDのブルーレイディスク(BD)やHD DVDだが、BDやHD DVDに対応するレコーダーの価格はまだかなり高く、普及は伸び悩んでいる。

 一方で、HDD内蔵型テレビで録画するという方法もあるが、HDDが壊れることへの不安や、容量不足、テレビを買い替えると古いテレビの内蔵HDDに保存したものは見られなくなる、といった問題があった。

 そこで、日立製作所は4月20日、HDDごと抜き差ししてそのまま長期保存もできる新しい発想のHDD規格「iVDR」を世界で初めて採用した薄型テレビ「Wooo」の新モデルを発売。ラインアップは、プラズマテレビが50V型と42V型、37V型の3機種。液晶テレビが37V型と32V型の2機種。いずれの機種も、容量250GBのHDDも内蔵する。


 このテレビの特徴は、リムーバブルHDD「iVDR」を専用スロット「iV(アイヴィ)ポケット」に挿入すれば、地デジのハイビジョン番組が録画・再生できる点だ。「iVポケット」に対応するリムーバブルHDDは日立マクセルの「iV(アイヴィ)」で、容量は80GBと160GBの2種類。


 日立製作所コンシューマ事業グループデジタルコンシューマ事業部商品企画本部メディア・コミュニケーション部部長の尾関考介氏は「個人ごと・作品ごとに『iV』を用意すれば作品をライブラリ化して保存することができる」と「iVDR」の利便性について述べた。

 最新の5月第2週「BCNランキング」の週次データを見ると、HDD内蔵型テレビは、薄型テレビ全体の4.7%。薄型テレビのシリーズ別販売台数シェアを見ると、「iVDR」対応の「Wooo」の新モデルは、プラズマテレビが38位に37V型、液晶テレビは78位に32V型がランクインしている。

●自由に抜き差しできるHDD「iVDR」――ビデオテープのような使い勝手

 「Wooo」の新モデルが採用したHDD規格「iVDR」とは、「Information Versatile Disk for Removable usage」の略で、HDDをビデオテープのように自由に抜き差しして使えるのが特徴。同規格はテレビだけでなく、PCやAV機器、カーナビゲーションなど、さまざまな機器に搭載することを想定している。また、HDDなのでDVDやフラッシュメモリよりも高速・大量にデータを読み書きできる。

 「iVDR」のラインアップは、カートリッジタイプとビルトイン(内蔵)タイプの2種類がある。サイズは、カートリッジタイプが2.5インチの「iVDR」、1.8インチの「iVDR Mini」、1インチの「iVRD Micro」の3つ。内蔵タイプは3.5インチ/2.5インチ/1.8インチの3つがある。現在製品化されているのは、カートリッジタイプの「iVDR」のみだ。

 もちろん、「iVDR」でなくとも従来リムーバブルHDD製品はあった。しかし、その多くはPCのデータ保存用。そこで、PCだけでなく、メーカーの枠を超えた幅広いデジタル製品でリムーバブルHDDを利用するため、02年に日立製作所をはじめ、三洋電機・シャープ・キヤノン・富士通など8社が共同で、リムーバブルHDDの規格策定を行う「iVDRコンソーシアム」を設立。その後、アイ・オー・データ機器やトヨタ自動車なども賛同し、現在、会員企業は48社。

●初の製品化はアイ・オー・データ機器のPC向けHDD

 ところで、「iVDR」を初めて製品化したのは、実はアイ・オー・データ機器だ。同社は04年に、リムーバブルHDD「iVDRシリーズ」とUSB接続のiVDR専用アダプタ「USB2-iVDRシリーズ」をPC向けに発売した。


 同社ネットワーク&ソリューションユニット企画グループ主任の北村泰紀氏は「iVDR」のメリットについて、「10-20年後、DVDなどのメディアは対応する再生機器が姿を消して、保存したデータが再生できなくなる可能性がある。その点、『iVDR』は規格化されたHDDなので、将来も互換性が確保されていく」と話す。こうした点を考慮して、官公庁や映像コンテンツの制作会社など、業務向けの長期保存用メディアとして需要があるという。

 しかし一方で、一般のユーザーに対する普及は苦戦している。同社アライアンスサービス広報グループの武井亮太氏は「『iVDR』は価格が1つ2-3万円と高いのがネック。ただ、06年11月に著作権保護技術『SAFIA(サファイア)』が改定されたので、今後デジタル家電に広く採用されることを期待している」と課題と展望を語る。


●著作権保護の対応で地デジのハイビジョン番組が録画可能に

 著作権保護技術「SAFIA(Security Architecture For Intelligent Attachment)」とは、受信機器に搭載できる持ち運び可能な記録媒体へのコンテンツ保護方式。同技術は06年3月に、地上デジタル放送推進協会やBSデジタル放送推進協会の認定を取得。この著作権保護技術によって、日立の「Wooo」のような地デジに対応するテレビで「iVDR」規格を採用することができた。コピーガードが施された地上デジタル放送のハイビジョン番組を、ハイビジョン画質のまま録画することができる。

 「SAFIA」搭載の「iVDR」は「iVDR-Secure」という。「Wooo」が採用する日立マクセルのリムーバブルHDD「iV」は、「iVDR-Secure」として世界で初めて製品化したもの。「iV」に直接録画するのはもちろん、「iV」と「Wooo」の内蔵HDD間で、ハイビジョン映像のままムーブすることもできる。


●対応機器が増えれば映像の視聴スタイルに変化も

 しかし、「iVDR」にも弱点はある。それは、対応機器の少なさと価格の高さだ。「iVDR」対応機器は現在、日立の「Wooo」しかない。また、アイ・オー・データ機器の「iVDR」は、現在「SAFIA」非搭載なので、著作権保護されたハイビジョン番組の録画には使えない(「Wooo」に装着する場合、アナログ放送の録画は可能)。

 同社では今後、「iVDR-Secure」も製品化を予定しているそうだが、対応機器が増えて需要が伸びないと、量産効果でメディアの価格が下がることは期待できない。また、容量160GBで3万円強という価格は、他のメディアと比べると割高な感じがするのは否めない。

 今後、製品化が期待できるのが、カーナビゲーションなどの車載機器だ。最近のカーナビはHDDタイプが主流。そのHDDが「iVDR」規格に対応すれば、例えば、あらかじめ「iVDR-Secure」にハイビジョン放送を録画しておき、ドライブ中に後部座席で楽しんだり、地図情報を保存した「iVDR」を利用して目的地に向かったりすることもできる。

 さらに、自分の「iVDR」を持参すれば、映画やドラマなどの作品をレンタルでコピーしてくれるサービスも考えられる。現在の音楽配信サービスのように、「iVDR」専用映像配信サービスも登場するかもしれない。大容量のハイビジョン映像を、さまざまな機器で再生・保存できるようになるHDD規格「iVDR」は、今後、新しい映像の視聴スタイルを提案してくれそうだ。(フリーライター・中村光宏)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。