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カメラグランプリ受賞の実力は? ニコンのデジタル一眼レフD200を試す

特集

2006/05/31 22:35

<strong>――借りモノレビュー、ニコン「D200」</strong><br />
 05年12月16日の発売開始とともに、一気にデジタル一眼レフ市場を席巻。機種別販売シェアで、一時トップに躍り出るものの、あまりの人気に生産が追いつかず一時予約待ちの状態にもなったカメラ、それが、ニコンの「D200」だ。

 つい先日の5月19日には、カメラ記者クラブ・カメラグランプリ実行委員会が選ぶカメラグランプリ2006に選ばれたばかり。その「D200」を試用したレポートをお届けする。なお、あくまでも筆者の個人的な使用感であることをご了解いただきたい。

●ニコンユーザー待望の「D200」は、期待を裏切らない出来映え

 「D200」は、02年発売の「D100」後継機。ニコンのハイアマチュア向けデジタル一眼レフとしては、実に約3年ぶりのフルモデルチェンジとなる。このクラスの新製品を、ニコンのデジタル一眼レフユーザーは長らく待ち望んでいた。その期待を裏切らないだけの充実した機能・画質、カメラとしての質感の高さを備えて、「D200」は登場した。

 手にした瞬間、「これぞカメラだな」と感じる。「D200」はそんなデジタル一眼レフだ。これまでのデジカメは、カメラというよりも電子部品の固まりといった印象があったが、「D200」は、カメラ本体がかつて持っていた「所有する喜びを感じさせる質感」を取り戻したデジタル一眼レフ、といっても過言ではないだろう。

 ハイアマチュア向け、といいながらも、その機能や質感は、ニコンのプロ用ハイエンド・フラッグシップ機「D2x」に限りなく近い。市場実売価格40万円台半ばの「D2x」に対し、「D200」は半額以下の20万円を切る価格。それでいて、「D2x」に匹敵するだけの撮影が楽しめる。もうこれだけでも、「D200」が爆発的な人気を獲得したのがうなずけるというものだ。

 ファインダーを覗くと、その思いはさらに強まる。ニコンのデジタル一眼レフはファインダー像がとにかく小さい。その見え方はあまりにもプアーで、とてもマニュアルでピント合わせなどできたものではなかった。しかし、「D200」のファインダーはかなりいい。マニュアルでも十分ピントが合わせられる。しかも、ファインダー下部と右横を使って盛りだくさんの情報を表示する「D2x」に対し、「D200」はファインダー下部にのみ、必要にして十分なカメラ系の情報を表示する。筆者の場合は、このほうが見やすくて、より被写体に集中できるのでありがたい。

●デジタル一眼レフで、マニュアルレンズが使える楽しさ

 肝心の写りの点でも、まったく申し分ないと感じた。10.2メガピクセルの画像は、十分すぎるほどきめ細かく、なめらかな階調を表現できる。さらに、同じ条件で「D2H」「D70」とも撮り比べてみたが、明らかに「D200」のほうが白飛びが少ないのには驚いた。ニコンの測光システムは、フィルムカメラのころから評価が高かったが、「D200」ではさらにきめ細かな露出制御が効いているようだ。プログラムオートのままでも、安心してカメラまかせで撮影できる。

 また、ピンポイントで露出を合わせたいときは、スポット測光が便利だ。「D200」なら、11点のフォーカスエリアから任意の1点を選んだときに、その1点に連動したスポット測光が働く。キヤノンなど他社の同クラスのデジタル一眼レフでは、スポット測光は常に中央部だけでしか使えないので、測距点に連動するスポット測光が可能な「D200」は、構図を決めたままほとんどカメラを動かすことなくピンポイントで露出を合わせることができる。ポートレート撮影などでは、かなり使い勝手がいい。

 しかも、最新の画像処理システムにより、高速レスポンスを実現しており、起動も速く、RAWでの撮影でも、画像の記録にまったくストレスを感じることはない。とても10.2メガとは思えないほどの軽快感は、すばらしいのひとこと。

 そして、フィルムカメラからのニコンユーザーにとって何よりうれしいのは、「D2x」と同様に、CPUやAF非搭載のニコンの古いMFレンズ(Aiニッコールレンズ)を装着して、RGBマルチパターン測光や、i-TTL-BL調光でのストロボ撮影ができるということ。実際、Aiニッコールレンズを「D200」に装着して使ってみると、いままでのデジタル一眼レフにはなかった、まるで銀塩フィルムカメラで撮っているような撮影の楽しさを実感することができた。この楽しさは、「D200」の大きなアドバンテージだと思う。

 大きく、重い「D2x」では、マニュアルレンズを付けて散歩写真を撮る、といった使い方には不向きだからだ。ほんの少しの試用期間でも、その良さがしっかり実感できる「D200」。なるほど、ニコン会心のデジタル一眼レフである。





●縞ノイズ問題やバッテリー消費の速さは「D200」唯一の弱点

 一方、気になる部分もある。発売当初の縞ノイズ問題が「D200」の評価に影を落としたのは、残念なことだ。

 縞ノイズとは、「D200」で、ISO400以上の感度で極端に輝度差が大きい特殊なシーンを撮影したときに、明るい部分と暗い部分の境目などに縞模様が表れるというもの。縞ノイズが発生する撮影シーンがかなり限られるうえに、A3サイズ以下の印刷では、まったく気にならないレベルであるともいう。ニコンではこの問題を確認していて、すでに修理対応を実施している。また、現在製造販売されている「D200」は、すべて対策済みとのことだ。ただ、縞ノイズの根本原因は、「D200」の高速画像処理システムの要である「CCDからのRGB信号の4チャンネル読み出し」そのものにある、とする見方もあり、もしそうであれば、根本的な解決はハード的な変更を待たなければ難しい、ということになるだろう。

 また、「バッテリーの持ちが悪い」というのも、「D200」の欠点として挙げられることが多い。ニコンの公表した条件下では1回の充電で約1800コマの撮影ができることになっているが、実際にはとてもそこまでの撮影は無理、といったユーザーの声をよく耳にする。実際、筆者の試用でも、RAWで350カットほど撮影したところで、バッテリー残量は約半分になっていた。

 「D200」での撮影では、バッテリーを2個用意し、「マルチパワーバッテリーパックMB-D200」を装着して使うほうがいいだろう。「マルチパワーバッテリーパックMB-D200」はすぐれもので、縦位置撮影でホールディングが安定するだけでなく、2個のバッテリーを装填した場合、電池残量の少ないほうのバッテリーから先に消費して、完全に残量が0になってから、もう一方のバッテリーの電源を使う仕組みになっている。また、バッテリーの代わりに乾電池を使うこともできるようになっている。「D200」ユーザーなら、そろえておきたいオプション品だ。

●紛れもなく銀塩フィルムに別れを告げさせる一眼レフカメラ

 「D200」の画質、操作性、質感の魅力は、他のデジタル一眼レフでは代え難いものがある。2.5型の背面液晶モニタは視野角が広くて輝度も高く、昼間の屋外でもかなりよく見え、撮影後の画像確認がしやすい。さらに、「D200」では、47項目にもおよぶカスタムセッティングが可能で、さまざまな操作や機能を、自分好みに使いやすいようにカスタマイズできる点も多いに評価したい。

 デジタル一眼レフ初心者にはやや持て余すだろうが、総合的に考えると、ハイアマチュアや、フィルムカメラからの移行派にとって、「D200」はベストチョイスなカメラだと思う。

 「デジタルの正統」とニコンが胸を張るだけあって、「D200」の登場は、多くの一眼レフカメラユーザーにある転機を実感させるものとなった。これまで私たちは、フィルムカメラを一般的に「カメラ」と呼び、「デジタルカメラ」をそれとは区別して呼んでいた。しかし、これからは、デジカメこそが一般的な「カメラ」であって、フィルムカメラのほうは一部愛好家が趣味で使う「フィルム(または銀塩)カメラ」として区別して呼ぶのが順当なのかもしれない。そんな時代を象徴するカメラの1つが「D200」だ、といえそうだ。(フリーカメラマン・榎木秋彦)



*テスト撮影は、実機を借り受けた1月に東京で行いました。使用レンズは、特に記述のないものは「ニコン AF-S DX ZOOM NIKKOR ED18-70MM F3.5-4.5G (35mm判換算で27-105mm)」を使用しました。

*WebBCNランキング編集部「借物」レビューとは、借りてきた製品について、個人的な体験をもとに使用感などをまとめたものです。「借物」レビューのほか、編集部員自らが購入した製品を対象とする「自腹」レビュー、社として購入した製品を対象とする「社腹」レビュー、もらい物を対象とする「他腹」レビューなどがあります。