今や家庭用オーディオの主役、サウンドバーが好調

 サウンドバーが売れている。薄型テレビの前に置くだけで、テレビから出る音の迫力や臨場感が増すとあって人気が高い。コロナ禍の巣ごもり需要で拡大したジャンルの一つでもある。特にここ数年の販売は好調で、昨年は販売台数が前年比で倍増する場面もあったほどだ。ただ、今年に入って販売は徐々に落ち着いてきた。この3月~5月にかけては、販売拡大による反動減もあってか前年を割り込んだが、この6月には再び前年比2桁増に回復した。


 一昔前は複数のスピーカーで構成していたサラウンドシステム。現在では、サウンドバーにとって代わり、販売台数の99.3%を占める。先鞭をつけたのがヤマハ。2005年に発売した「YSP-1」が最初だ。設定を容易にした後継機の「YSP-100」でサウンドバーの認知度は一気に向上した。リアスピーカーなどを使わずに、広がりのあるサラウンド音響が楽しめると注目を集めた。以降、サウンドバーはテレビの外付けスピーカーの代名詞とも言えるようになり、その地位を確固たるものにした。

 メーカー別で販売台数シェアが最も高いのがソニー。特に、この6月によく売れたのがエントリーモデルの「HT-S100F」だ。残念ながら生産は終了。現在は流通在庫のみだが、税抜平均単価(以下同)が1万円そこそこと格安だ。価格は1年前からほぼ4割下落し販売が急増した。3万円台前半のミドルクラスの「HT-X8500」もソニーでは人気商品。一時は品薄でシェアを落とした時期もあったが、6月のソニーの販売台数シェアは50.6%と過半を占めている。
 

 ソニーを追いかけているのが、サウンドバーの元祖ともいえるヤマハだ。昨年6月時点では3割前後のシェアを維持していたが、ソニーに押され、6月現在では15.6%とふるわない。ヤマハの「YAS-109」が最も売れている製品だが、これも生産終了品。エントリーモデルで2万円前後。激しい値下げ攻勢をかけたソニー製品に売り上げを取られた格好だ。そのほか、ディーアンドエムホールディングスの「DHT-S216」、BOSEの「BOSE TV SPEAKER」、ハーマンインターナショナルの「JBLBAR 20AIOBLKJN」などが売れ筋だ。

 テレビが薄型化することで、スピーカーがいい音を再生するのに欠かせない一定の空間を、テレビ本体内に確保するのが難しくなった。このためテレビの音は、ブラウン管時代に比べ悪くなったと言われることもある。音響面での薄型テレビの弱点をカバーするため、サウンドバーは絶好の製品だ。多くのサウンドバーはBluetoothスピーカーとして使える。スマートフォンや携帯オーディオを接続して音楽再生用のスピーカーとして使うスタイルも一般的になってきた。テレビの音声を再生するだけでなく、家庭のメインスピーカーとして、サウンドバーの用途はますます広がっていきそうだ。(BCN・道越一郎)