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デジタル社会の実現に向けて取り組む規制改革 「書面・押印・対面見直し」「キャッシュレス化の推進」「コンテンツの円滑な流通に向けた制度整備」など

 今年6月18日に、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定され、同日付で「デジタル庁(準備中)」のウェブサイト上で閣議資料・参考資料が公開された。この資料をもとに分かりやすく狙いを解説する。

デジタル改革の目的と重点計画の基本方針

 デジタル社会の実現に向けた重点計画は、2020年7月に閣議決定されたIT戦略(世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画)を全面的に改訂して策定するもので、今年9月のデジタル庁の創設を見据え、デジタル社会形成基本法に基づく重点計画を先取りする形で策定したものとなる。

 目指すビジョンとして「一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げ、デジタル社会(インターネットやスマートフォンを活用した、原則オンライン上で手続きが完結する社会)に必要な共通機能の整備・普及を土台に、「国・自治体」「準公共」「民間」において、これまで紙ベースだった各種手続きや相談・連絡(通知)のオンライン化・デジタル化を推進していく。
 
国が目指す「デジタル社会」とは、スマホ・PCを活用した、
オンラインとリアルがシームレスに連携する便利で安心な「人に優しい」社会

 特に生活に密接にかかわるデジタル社会に必要な共通機能の整備・普及の内容は、「マイナンバーカードの普及」「マイナンバーカードの健康保険証としての利用開始」「マイナンバーカードと運転免許証の一体化」の三つ。マイナンバーカードは2022年度末までにほぼ全国民の取得を目指す。いったん延期となったマイナンバーカードの健康保険証としての利用は遅くとも今年10月に開始する予定。運転免許証との一体化は24年度末(令和6年度末)を目標としている。
 
利用者の立場にたち、各サービスのUI・UXにも重点を置く

 今後、本格的なマイナンバーカードの連携を進めていく計画の準公共・民間分野としては、「健康・医療・介護」「教育」「防災」「モビリティ」「農業・水産業(スマートフードチェーン)」「港湾」「インフラ」を挙げた。事業者のバックオフィス業務の効率化の実現を目指す「電子インボイス」など、経済社会のデジタル化(効率化・自動化)も目指す。
 
準公共・民間分野は21年度中に検討を進める予定
 
デジタル社会の実現に向けた重点計画は多岐にわたり、
テレワークやシェアリングエコノミーの普及・推進、活用にも触れている

 さらに官民を挙げたデジタル人材の育成・確保を目指し、児童・学生を中心に、デジタルリテラシーの向上を図る。
 
デジタル化と規制改革はセットと位置付ける

 一方、過去のIT政策の反省をもとに、各分野でデジタル化の効果を最大限に発揮するため、規制の見直しを行う。具体的には「書面・押印・対面見直し」「オンライン利用の促進」「キャッシュレス化の推進」「アジャイル型システム開発に係るルール整備」「デジタル時代におけるコンテンツの円滑な流通に向けた制度整備」など。官公庁では、行政手続きのデジタル化を阻害する紙のFAX利用を順次廃止するという報道もあった。

 新設のデジタル庁が旗振り役となり、社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向け、関連省庁を横断してデジタル改革を推進する一方で、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会」をスローガンに掲げるが、企業・自治体・消費者ともに、インターネットにつながるスマホ・PCの保有を前提とした、デジタルファースト・スマホファーストの新しい仕組みを積極的に取り入れていく必要に迫られているといえるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)