【広がるVR】KDDIの挑戦、VR×通信で世界旅行

オピニオン

2016/10/24 17:15

 KDDIとナビタイムジャパンは、10月20日、KDDIが取り組む「SYNC PROJECT」の第4弾となる、VR技術を活用したリアルタイム遠隔海外旅行サービス「SYNC TRAVEL」を発表した。


リアルタイム遠隔海外旅行サービス「SYNC TRAVEL」

 「SYNC PROJECT」は「遠く離れた人の心をつなぐ」をコンセプトにKDDIが行っている企画で、通信活用の新たな可能性を模索している。

 KDDIのデジタルマーケティング部 塚本陽一部長は「2015年のクリスマスイブに『SYNC DINNER』という企画で『VR×レストラン』に挑戦し、好評を得た。その後、VRを掛け合わせることで生まれる可能性はほかにもあるのではないかと考え、『旅行』という選択肢に辿りついた」と、着想のきっかけを語る。
 

「SYNC TRAVEL」専用のVRゴーグルを持つKDDIのデジタルマーケティング部 塚本陽一部長

 専用のVRゴーグルを装着すると、リアルタイムで海外の旅行先と接続。まるで本当に現地に来ているような360°映像でリアリティある体験を味わえる。特筆すべき点は、VRがつなぐ現地にはガイドがいて、相互にコミュニケーションがとれることだ。ガイドを仲介することで、自由に街を歩き回ったり、ショップで買い物をしたりすることができる。
 

「SYNC TRAVEL」の仕組み
 

「SYNC TRAVEL」が実現する四つの代表例

 サービス発表会で実施したデモンストレーションでは、東京・六本木の会場にいるユーザーがVRを介して、柴又にいるガイドと通信。離れた場所にいながら、下町観光を満喫できた。

 ガイドは、360°カメラを取り付けた移動式のマネキンを引き連れている。マネキンがプレーヤーの分身となり、ガイドの手引きでマネキンが移動すると、ユーザーの視界も連動して同じように移動する。
 

ユーザーの分身となるマネキン

 デモは5分程度の短いものだったが、土産屋を見物したり、団子を購入したりと、密度は濃い。最後には、専用VRゴーグルが備える機能を活用して記念写真を撮影できるなど、本物の旅行と同様、思い出を形にする工夫も凝らしている。なお、体験したVR録画映像とVRゴーグル「ハコスコ」は、後日プレゼントする。
 

体験するユーザーと(右)リアルタイムで見ている映像

 KDDIのパートナーとしてサービスの販売を担うのは、経路探索エンジンによるソリューションを提供するナビタイムジャパンだ。10月5日に開始した旅行プランニングサイト「NAVITIMEトラベル」と連動する形で「SYNC TRAVEL」を訴求する。

 ナビタイムジャパンのメディア事業部 毛塚大輔事業部長は「『NAVITIMEトラベル』は国内・海外の旅行を交通経路だけでなく、宿泊するホテルや旅行プランも含めてコーディネートするサービス。ゆくゆくは『SYNC TRAVEL』の遠隔旅行をきっかけに、実際の旅行を提案し、『NAVITIMEトラベル』でサポートできれば」と、協業の狙いを説明。「SYNC TRAVEL」の魅力は、“行ってみないとわからない空気感を伝えられること”だという。
 

ナビタイムジャパンのメディア事業部 毛塚大輔事業部長(左)と「NAVITIMEトラベル」の概要

 11月3日・4日には、東京・表参道の特設会場で体験会を実施する。抽選で選ばれた28組がイギリス(ロンドン)・タイ(バンコク)・オーストラリア(シドニー)に遠隔旅行することができる。「NAVITIMEトラベル」特設ページで応募を受付け、料金は1組(最大2名)で税込み1980円。体験時間はおよそ15分程度だ。

 プランは未定だが、家で手軽に仮想旅行を楽しんでもらいたいという目論みもある。塚本部長は「旅行に限らず、マネタイズを含めた『VR×○○』の可能性を今後も模索する」とコメント。話題づくりのコラボレーションではなく、新たなビジネスモデルの確立を見据えた挑戦であることを強調した。(BCN・大蔵 大輔)