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乗れる4億円のロボットから倒れないバイク、宇宙気球までカバー、進化したジャパンモビリティショー【道越一郎のカットエッジ】

イベント

2023/11/05 18:30

 東京からジャパンへ、モーターからモビリティへ。大きく変貌を遂げたジャパンモビリティショー2023が5日、閉幕した。これまでの東京モーターショーから名称を変更。単なる車の見本市から、移動、乗り物をコンセプトにした「未来の日本」を感じさせるイベントに進化した。出展社も2019年開催の前回の192社から、475社に激増。自動車業界だけでなく、スタートアップや他産業からの参加も募った。特に空のモビリティの出展も多く「立体的」な見本市になった。一番夢を感じたのは岩谷技研の「宇宙気球」とも言える、「有人宇宙遊覧用気密キャビン」を使った高高度気球だ。展示されていたコンセプトモデルは2人乗り。誰でも宇宙空間を楽しめるようになるという。

宇宙気球ともいうべき「有人宇宙遊覧用気密キャビン」。
キャビンとヘリウム入りの気球で高さ40メートルほどの大きさ。
これで宇宙空間が体験できる

 一般的に宇宙は、高度80~100km以上の空間を指す。岩谷技研の高高度気球が上昇できるのはおよそ25km上空まで。成層圏を出ることはできず、厳密には宇宙空間には届かない「Near Space」体験ができる乗り物だ。しかし、ここまで高く上がれば、空気はなく温度は極めて低い。ほぼ宇宙空間と同じような環境になる。外から地球を見下ろすような、これまで宇宙飛行士しかできなかった経験もできそうだ。1時間以上かけてゆっくり上昇、下降するため、乗客は打ち上げ時の大きな重力に耐える必要がないのも大きな特徴。24年夏には商用を開始し、初回の搭乗費はおよそ2400万円程度になる見込み。しかし、キャビンの搭乗人数を増やすなどのコストダウンを図り、最終的には200万円以下の搭乗費を目指している。
 
ブリヂストンの「月面探査用タイヤ」。
ゴムが使えない宇宙空間で、どうやってタイヤの機能を実現させるか。
ゴムタイヤのスペシャリストが開発した

 宇宙といえば、ブリヂストンの「月面探査用タイヤ」も注目を集めていた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車とともに「国際宇宙探索ミッション」に「チームジャパン」として参加している同社が参考出品したものだ。月面に拠点を建設し宇宙の探査活動を行うという、壮大で国際的なミッション。その中で、月面を自在に走破できる車両のために開発した。マイナス170℃~プラス120℃と激しい温度差があり、宇宙放射線が容赦なく降り注ぐ環境でゴムはすぐに劣化し役に立たないという。しかし、車体が沈み込むこともある砂地のような月面を走る車両のタイヤには、ゴムと同様の弾力性が必要だ。そこで、金属素材を使いながら、周囲にアルミ繊維を巻き付ける構造のタイヤを開発した。地上での応用は難しいかもしれないが、来るべき宇宙時代には必ず役に立つ技術といえるだろう。
 
住友金属鉱山の「SOLAMENT」を使ったビニールダウン。
ダウンジャケットと同じぐらい暖かい

 新素材をひっさげて新たな提案をする出展社もあった。住友金属鉱山だ。その名も「SOLAMENT」。同社が発明した近赤外線を吸収するナノ微粒子CWOを使った素材テクノロジーだ。SOLAMENTには太陽光に含まれる近赤外線を熱に変換する性質がある。ブースでは、SOLAMENTを使った透明のビニール素材のジャケットを展示。一見すると寒々しいが、実際に着てみるととても暖かい。また、太陽光を吸収する性質もあるため、遮熱も可能。車の窓ガラスに使用することで、車内の温度上昇を防ぐこともできる。
 
ツバメインダストリの搭乗操作型ロボット「アーカックス」。
走行時にはタイヤを前に出し姿勢を低くする

 地上のモビリティに目を向ければ、ひときわ異彩を放っていたのが、ツバメインダストリの搭乗操作型ロボット「アーカックス」だ。9月に国内先行受注販売を開始した本体を世界初公開した。本体中央部の黄色いハッチを開け、コクピットに人が乗り込み、モニター画面を見ながら操作する。外部からの遠隔操作もできる。全長4.5m、重量3.5t。バッテリ駆動で最高速度は時速10kmだ。「『いつか実現するだろう』で終わっていた搭乗型ロボットを現実のものにしたい」という思いから会社を設立。ようやく発売にこぎつけた。搭乗型ロボットという新たなモビリティ市場の形成を目指す。超高級車や自家用ジェット機のようなラグジュアリー市場を想定。国内外の富裕層がターゲットだ。1年分の保守メンテナンスを含む参考価格は4億円。納期は受注後12~18カ月で、初期ロットは5台限定だ。
 
ヤマハの倒れないオートバイ「MOTOROiD2」。
ゆるぎない安定感で倒れる感じが全くしない

 ヤマハ発動機が世界初披露した倒れないオートバイ「MOTOROiD2」も大人気だった。「東京モーターショー2017」でデビューした「MOTOROiD」の進化版だ。プレゼンテーションでは、人と機械が寄り添って暮らす近未来を感じさせるものだった。オーナーがオートバイの前に立つとAIで認識。ジェスチャーに従って起動しゆっくり近づいてくる。世界を驚かせた倒れない二輪の安定性は抜群で、信じられないほどゆっくりと走ることもでき、前進、後退も思いのまま。まるで生き物のような錯覚をおぼえるほどだ。人を乗せた状態でも安定性は変わらず、立ち上がってダンスをしても自立したままびくともしない。自動車よりもはるかに個人的な乗り物であるオートバイは、車とは別の進化を遂げていくのかもしれない。
 
全固体電池搭載のコンセプトカー
「ニッサン ハイパーフォース」を紹介する
日産自動車の内田誠 取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者

 もちろん、主役はやはり車だ。今年のトピックスは全固体電池(ASSB)を搭載した電気自動車だろう。充電時間が短いながらも走行距離は長く、ガソリン車に近い使い勝手を実現するとあって、トヨタを筆頭に開発に余念がない。トヨタに負けじと日産もコンセプトカー「ニッサン ハイパーフォース」を内田誠社長自らが世界に向けて初披露。「創業時から続く『他のやらぬことをやる』という精神を体現し日産が目指す未来を象徴」する車として紹介した。最大出力1000kWで加速に優れ、電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」の搭載などで、高い操作性も備える。AR(拡張現実)・VR(仮想現実)機能も搭載。専用のヘルメットの装着でリアルとバーチャルの両方で走りを楽しめる。
 
ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA Prototype」。
自動車メーカーとしてどこまで戦えるのか大いに注目だ

 もう一つ、注目のメーカーはソニー・ホンダモビリティだ。日本を代表する2社がタッグを組んで生み出す新たな車がどこまでやれるのか。1台の「AFEELA Prototype」を配置しただけのシンプルでこじんまりとしたブースには、多くの人が訪れていた。同社では、ユーザーに提供する価値を、Autonomy(進化する自律性)、Augmentation(身体、時空間の拡張)、Affinity(人との協調、社会との共生)の三つとし、頭文字をとり「3A」と定義する。ユーザーにとって唯一無二で愛着を持てる車を目指し、好みに合わせて継続的に進化。新しいモビリティの可能性を追求する。モビリティ開発環境のオープン化を行い、社内外のクリエイターやデベロッパーがアプリケーションやサービスを開発できる環境を提供する。こうした取り組みが、自動運転にプラスアルファで加わる、新たな車の価値をどこまで創造できるか、期待が集まっている。
 
ジャパンモビリティショーの自社ブースで記念撮影に応える、
トヨタ自動車の佐藤恒治 代表取締役社長(左)と
豊田章男 代表取締役会長

 車といえばやはりトヨタだ。ブースのテーマは「クルマの未来を変えていこう」。佐藤恒治社長は、多様な価値観、多様なニーズをキーワードにプレゼンテーションを行った。EVと暮らす未来を示し、カスタマイズすることで自在にユーザーのニーズに応えられる車や、社会をつなぐモビリティの重要性についても言及した。スポーツタイプのコンセプトモデル「FT-Se」、SUVタイプのコンセプトモデル「FT-3e」などをメインにさまざまな生活シーンに溶け込むモビリティを展示していた。

 宇宙から地上、素材までをカバーするジャパンモビリティショー。まだ名称になじめない感はあるものの、これまでより深みのある内容に進化した。近年は、小ぶりな東京ビッグサイトに大ぶりの車ばかりで、少々単調な展示会になってしまっていたが、今回は見所が多く楽しめた。次回はどんなモビリティが現れるのか、今から楽しみだ。(BCN・道越一郎)