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新発想の身につけるクーラー「REON POCKET」、ひと夏試して分かったメリットとデメリット

レビュー

2020/09/05 18:00

【木村ヒデノリのTech Magic #019】 今年は夏の始まりから激しい猛暑に襲われ、9月に突入した現在もまだ秋の気配は見えていない。年々熱中症の重症者が増えるなか、手軽に体を冷却できるガジェットの進化がめざましい。昨年は首からかけるファンが大流行したが、「身につけられるクーラー」というなんともキャッチーな売り文句で登場したのがソニーの「REON POCKET(レオンポケット)」だ。

 実際に使ってみるとかなり優秀で、そのコンパクトさからは想像できなかった涼しさを体験することができた。ただし、特定の条件下では効果を感じにくいこともあったので、夏場の2か月間に実際に使用してみた実用感をお伝えしたい。
 
大きさ・重さ・薄さ、すべてがコンパクト! 新発想の暑さ対策ガジェット
「REON POCKET」を試した

小さい面積でも冷たさを実感できるペルチェ素子式冷却パッド

 はじめに驚いたのは冷却性能だ。小さいきょう体なので、バッテリー容量から考えても送風機能がメインかと思っていたが、50×45mmのペルチェ式冷却パッドはかなり冷たくなる。連続起動時間の制限はあるものの、ここまで冷たい状態を維持しながら駆動は2時間超と実用性は非常に高い。

 逆に送風ファンは、他製品と比べると弱い印象。首掛け式のファンは顔に直接二つ分の風量を与えてくれるため、冷却性能は別にして涼感は与えてくれる。対してREON POCKETは空気を循環させる方式のため、風だけでは思ったほどの涼感は得られなかった。

 一方で、冷却パッドが背中を冷やしてくれることがかなり体温を下げてくれる。涼感を得られるかどうかと実際冷えているかどうかは違ってくるが、長く使ってみると楽になる場面が多かった。
 
冷却パッドは本体の半分を占め、かなりの冷たさを感じることができる

体温コントロールに特化、場面によっては他製品が勝ることも

 実際に体温が下がっていると特に実感できたのは、暑い屋外から室内へ入ったタイミングだ。ペルチェ素子パッドは冷却性能にすぐれているが、ずっと肌に当たっていると冷たいという感覚に慣れてしまう。この点においては体温低下の如何に関わらず、ファン式のものの方が涼しい感覚は得られそうだ。

 不思議だが触感で感じる「風」も涼しさに関係しているらしい。REON POCKETはこうした涼しさを得にくい反面、室内に入った時の汗の引き方が明らかに早い。このためビジネスマンなど、訪問先で汗だくになるのを防ぎたい用途にはかなり有効だと感じた。
 
最近ではファンとペルチェ素子を組み合わせた製品もあるので、
一般ユースにはこちらが適していると思う場面があった
写真は「ARCTIC NECK COOLER(NC-01)」 7800円(税込))※Amazonでの参考価格

 ただし、気温が35℃を超えるような猛暑は別だった。外ではほとんど涼しさを感じられず、室内に入っても暑さが持続してしまうため、日傘などの併用あるいはもっと効果の高い製品が望ましいかもしれない。REON POCKET公式にもアナウンスがあるとおり、本製品は熱中症予防に十分な効果があるものではない。したがって、猛暑日に十分な冷却を求める場合は水冷式ベストなど、ある程度大掛かりな冷却システムを導入するのが無難だろう。
 
より強力な冷却効果を得るのなら、1Lの凍らせたタンクを使い、
4℃前後の冷水で冷却するJAXA共同開発のベストなどがある

新しいコンセプトの商品ゆえのデメリットも

 冷却に限界があるとはいえ、30℃弱の気温であればかなり優秀な製品であるのは事実だ。ただ、コンセプトが斬新なだけに不便だと感じた点がいくつかあった。一番不便だったのは30分という連続稼働時間制限だ。これがバッテリーに起因するものなのか、何かしらの事故を防止するものなのかわからないが、移動中知らず知らずのうちに電源が落ちてしまっているという事象が多発した。常用に30分は短すぎる。せめて60分稼働してくれれば再稼動などの手間が軽減されるので残念だ。このあたりはファームウェアアップデートでの対応を期待したい。

 また、専用のシャツを着用しなければならない点もデメリットに感じた。REON POKET自体には粘着部分があるわけではないので、専用シャツのポケットに入れる必要がある。シャツの色はベージュとホワイトの2色展開なので、インナーとして着るには問題ない。

 しかし何枚も揃えるとなると金額的にはかなりの負担になってくる。冬場なら2~3着でもいいかもしれないが、夏場で一人暮らしだとすれば、着回しのために平日分を用意している人も少なくないだろう。1着は1980円(税込)とそこまで高価ではないが、本体価格の1万4300円(税込)と5着分で合計コストは約2万5000円になる。本体価格を見て安いと感じた人はインナー代も考慮に入れていただきたい。
 
 
インナーは東レの提供品と記載されており、
手触りからもおそらく某社の吸水速乾機能性インナーと同等製品だろう

 最後はコントロールをアプリにかなり依存している点だ。本体スイッチを2秒押しで設定したモードにクイック起動できるものの、連続稼働時間を過ぎて再稼動させるためにはスマホを取り出してアプリを操作しなくてはならない。何かの拍子に接続が切れてしまうと本体スイッチを押す必要があるが、肝心の本体は背中側にあるのでYシャツの下につけている際は非常に困る。Apple Watchなどウェアラブル用のアプリか、専用のリモートリストバンドなどがあるとより便利かもしれない。
 
モードはマニュアルモード、オートモード、マイモードの3種、ウォームモードには送風機能がない

猛暑の屋外でなければ実用的! 今後に期待したいコンセプトの製品

 とはいえ30℃~33℃くらいの環境ではかなりの効果を実感できた。前述した通り、屋外で涼しいというより室内に入った時の体温低下がとても早い。装着しているのがわからないのも良い点だ。ビジネス用途も考慮に入れると首からかけるタイプのファンはかさばるし、見た目的にも使いづらい。

 REON POCKETは冷却性能と連続稼働時間がネックではあるが、このあたりが改善された第2世代が出てくると面白いと思う。本体が大きくてもいいので、冷却性能が高ければ3万円弱でも買いだと感じた。また面白いのが冬場は温める用途で使える点だ。これに関しては冬場に別途検証したいと思う。ソニーはここ数年新しいチャレンジに積極的だが、Xperia Touchのように需要が原因で後発製品が出ないケースもある。REON POCKETに関しては伸び代を感じたのでぜひ次世代機の登場に期待したい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)


■Profile

木村ヒデノリ 
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。