• ホーム
  • ライフスタイル
  • <インタビュー・時の人>シャープ 健康・環境システム事業本部 LED照明事業部 事業部長 桃井恒浩

<インタビュー・時の人>シャープ 健康・環境システム事業本部 LED照明事業部 事業部長 桃井恒浩

特集

2011/12/13 10:37

 2009年8月、家庭用LED照明に参入したシャープは、一部のLED電球の市場想定価格を先行する大手メーカーの半額程度に設定し、市場に大きなインパクトを与えた。以来、家庭用LED照明事業の拡大に向けて製品強化を図り、昨年9月には他社に先駆けて家庭用LEDシーリングライトを発売している。節電意識が高まるなか、この年末の注目商品の一つであるLED照明。シャープは、先行したシーリングライトの販売拡大に一層の力を注ぐ。桃井恒浩・LED照明事業部事業部長に聞いた。(取材・文/田沢理恵)

◎プロフィール
(ももい つねひろ)1961年生まれ。大阪府出身。84年、慶應義塾大学工学部を卒業し、シャープ入社。システムエンジニアなどを経て、PC事業の立ち上げ、ネットワークサーバーなど新規事業に携わる。情報システム事業本部本部長室長、パーソナルツール事業部副事業部長兼商品企画部長、健康・環境システム事業本部LED照明事業推進センター副所長兼商品企画部長などを歴任し、11年10月から現職。

LEDシーリングライトの販売に注力
「光のつくり方」では他社に負けない



Q. 09年、他メーカーの半額という価格でLED電球を発売し、大きな話題を呼んだ。大胆な価格は、高額だったLED電球の敷居を下げる大きなきっかけになった。

A.
 意識して他社の半額を狙ったわけではなく、お客様に受け入れていただける価格はいくらなのかを考えた。白熱電球の寿命は1000時間、LED電球は40倍の4万時間。白熱電球を100円とすると、40倍の4000円くらいなら、白熱電球からLEDに切り替えていただけるのではないかという計算だった。 


Q. その1年後には、LEDシーリングライトを発売した。これまでの販売状況はどうか。

A.
 昨年8月に発表したときは、12畳用を7万5000円前後と想定した。メーカーとしては、LEDの先進性を受け入れていただけるのではないかと考えたのだが、販売子会社や販売店からは、「高くて売れない」といわれた。ところが、お客様の節電への関心が高まるなかで、思った以上に販売が伸びている。参入メーカーが増えているので、この年末商戦は激戦になると見込んでいるが、当社はLEDシーリングライトを前面に押し出して販売の強化を図っていく。

Q. 他社製品との違い、強みは何か。

A.
 LEDの粒々感を見せず、また、ギラギラ感をなくして、目にやさしく、広がりのある均一な光をつくることを意識して、商品を開発している。シャープはもともと照明メーカーではないが、LED技術に関しては40年を超える歴史がある。LEDの光のつくり方に関しては、他社に負ける要素はまったくない。むしろ、われわれのほうが進んでいる。また、今年8月に発売したシーリングライトの新製品「03シリーズ」では、より節電を意識し、省エネ性能はトップクラスだ。

Q. 年末に向けて、どのように訴求していくのか。

A.
 家電量販店の照明コーナーにいらっしゃるお客様は、現在は「電球が切れた」という理由で来られている方がほとんど。これから先は、電球が切れていなくても売り場に来ていただけるよう、商品をアピールしていく。エスカレータの途中の階などにパネルを設置するなど、誘導に力を入れていく。

Q. 「プラズマクラスター」搭載製品の展開が進んでいるが、今後、シーリングライトに搭載する考えはあるか。

A.
 プラズマクラスターは、ファンをつけて拡散しなければならない。空気清浄機エアコンのように風を送る製品と違い、照明器具からファンの音がするというのは違和感がある。すでに業務用では商品化した実績があるので、物理的にはできるのだが、家庭用についてはこうした課題をクリアしなければならない。現段階では課題が多すぎて、商品化できるレベルには達していない。

・Turning Point

 入社以来、IT系の道を歩んできた桃井氏。システムエンジニアを経て、PC事業の立ち上げ、ネットワークサーバー、業界初のカラー電子辞書の投入など、「同社初」「業界初」などのものづくりに携わってきた。そんな桃井氏に、会社が命じたのは白物家電を担当する健康・環境システム事業本部でのLED照明事業の立ち上げ。ITとは畑違いだ。しかし、LED照明は、IT製品のように新しい需要を創造していく商品の一つ。新しいものづくりに携わってきた桃井氏の腕の見せどころである。「LED照明にとって大事なのは、光をどうつくるか、どんな光環境を提供するかだ。これまで携わってきたIT製品のハードウェアのものづくりとは違うセンスが必要になる。まだまだ勉強途上」と、新たな挑戦に気を引き締める。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年12月12日付 vol.1411より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは