スマートフォンの普及を背景に、ソニーがヘッドホン・イヤホンの販売を強化している。ターゲットは、iPhoneやAndroid端末のユーザーだ。専用機である携帯オーディオではなく、スマートフォンなどの汎用機で音楽を聞く人々が増えるなかで、ヘッドホンを変えれば音質が格段によくなることを訴え、販売拡大を狙う。(取材・文/田沢理恵)

◎プロフィール
(いそむら ひでお)1962年2月16日生まれ。85年、関西学院大学経済学部を卒業し、ソニー入社。国内営業でベータマックス、カムコーダなどを担当。デジタルイメージングMKのパンアジア圏統括、ホームビデオMK担当などを経て、08年、ホームAVマーケティング統括部長。10年4月から現職。

ヘッドホンを変えれば音が変わる
スマートフォンユーザーが好調を下支え



Q. ヘッドホン・イヤホン市場の現状をどうみているか。

A.
 全体で台数・金額ともに伸び続けている。AV/IT市場のなかでは、指折りの成長市場だ。これまで携帯オーディオユーザーを主役に成長してきたが、ここ1年くらいで、スマートフォン・携帯電話向けの伸びが顕著になってきた。iPhoneやAndroid搭載のスマートフォンで音楽を聞く人たちが増え、彼らが需要を支えているというのが最大のトレンドだ。われわれが調べたところ、スマートフォンや携帯電話向けヘッドホン・イヤホン市場の今年4~6月の対前年比は、販売台数で約106%、金額で約140%だった。このなかでソニーは、台数が約240%、金額が約460%と大きく伸長している。

ソニーマーケティングの磯村英男統括部長

Q. 具体的には、どのような取り組みをしているのか。

A.
 スマートフォンで音楽を聞く人には、付属のイヤホンをそのまま使っている人が多い。こうしたスマートフォンユーザーをターゲットに、ヘッドホンを変えることで音が変わる、つまり音質がよくなることを訴えて、需要を喚起している。ソニーは、昨年の秋からiPhoneなどの操作に対応した製品を発売し、現在、ヘッドホンで2シリーズ、イヤホンで3シリーズの計5シリーズを展開している。今夏には、Android対応のヘッドホン「DR-ZX302VP」シリーズとイヤホン「DR-EX62VP」シリーズを発売した。また、7月から8月にかけては、東京や大阪で製品の体験イベントを開催した。そのほか、ソニー初の試みとして、「音質保証キャンペーン」を8月31日まで実施した。店頭ではすべての製品の試聴ができるわけではないので、対象商品の音質に満足できなかったら代金をお返しするという試みだ。そのほか、ソニーのヘッドホン・イヤホンや、モバイルバッテリ、液晶保護シート、HDMIケーブルなどのスマートフォンアクセサリを掲載した小さいカタログを作成し、6月から店頭に設置している。大型店では、アップル製品のフロアにも置いている。

Q. ソニーがiPhone対応のヘッドホンやイヤホンを積極的にアピールする意図は?

A.
 例えば携帯オーディオでは、BCNランキングの今年上半期(1月~6月)の販売台数で、われわれのウォークマンは5割以上のシェアを獲得した。しかし、一方で半数弱はiPodが占めている。ウォークマンユーザー向けの周辺機器ビジネスだけに力を入れていたのでは、市場の半分しかみていないことになる。ヘッドホン・イヤホンのクオリティには自信があるので、ウォークマンユーザー以外のお客様にもきちんとアピールして、使っていただきたいと思っている。また、タブレット端末やPSP、ニンテンドーDSなど、ヘッドホン端子を搭載した製品が拡大している。今後もメーカーやデバイスの種類を問わず、市場のニーズに対応していく。

・Turning Point

 BDレコーダーを担当していた2007年11月に経験したことが、今でも心に深く刻まれている。それ以前のBDレコーダー市場にはマニア受けを狙った製品が多く、まだ一般ユーザーへの普及は進んでいなかった。販売拡大に向けた施策を模索するなかで、07年11月に、一般ユーザーをターゲットにしたモデルを投入。ソニーのほか、シャープやパナソニックも、ほぼ同じタイミングで一般ユーザー向けのモデルを発売した。

 3社はほぼ同時にCMをスタート。大手3社の動きが重なったことが、BDレコーダーが一般ユーザーに広がるきっかけとなった。当時、販売店のレコーダー売り場に並ぶ製品すべてが、一週間で入れ替わったという。「メーカーと流通が同じ方向を向くと、一気に広がることを実感した」と振り返る。


※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年9月19日付 vol.1399より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは