Bluetooth搭載ヘッドセットが拡大 スマートフォン人気が追い風

特集

2011/08/29 11:07

 ワイヤレス通信規格「Bluetooth」を標準搭載するスマートフォンの販売拡大が追い風となって、Bluetoothヘッドセットが売れている。3000円前後で購入できる低価格製品の登場やカラーバリエーションの増加など、選択の幅が広がってきたことで、ドライバーなどの従来のユーザーに加え、一般のスマートフォンユーザーにも広がり始めている。

ビックカメラ有楽町店は売り場拡張で品揃えを強化



 「BCNランキング」では、モノラル・ステレオを問わず、通話機能を備えたイヤホンやヘッドホンを「ヘッドセット」と定義している。全体の販売台数は、前年比110~130%と好調だ。このうちワイヤレス通信規格「Bluetooth」を搭載したタイプは、前年比150%前後と顕著な伸びを示している。

Bluetooth対応ヘッドセットの販売台数前年比の推移

 ビックカメラ有楽町店1階のスマートフォン周辺機器売り場は、今年7月中旬頃に展示スペースを拡張し、ヘッドセットの品揃えを強化した。背景には、「スマートフォンがBluetoothを標準で搭載しているので、関心が高まっている」(ビックカメラ有楽町店1階携帯電話コーナーの麓啓太主任)ということがある。今年7月の販売台数は、昨年のほぼ倍に達する勢いという。

ビックカメラ有楽町店1階のヘッドセットコーナー

 「昨年は5000~1万円の製品が多かったが、現在では2000円程度の製品が出てきている」(麓主任)と、価格帯が下がったことが売れ行きに寄与しているようだ。さらに、小型タイプの登場やカラーバリエーションの増加など、製品の選択肢が増えたことで、ビックカメラ有楽町店では「女性ユーザーも増えてきている」(麓主任)という。車内でのハンズフリー通話を目的に購入していたドライバーから、ユーザーは新たな広がりをみせているといえるだろう。

 そもそも日本でコンシューマ向けBluetoothヘッドセットの販売が本格化したのは、2004年頃のこと。国内市場を開拓した専業メーカーの日本プラントロニクスによると、04年11月施行の改正道路交通法によって運転中の携帯電話の使用が禁止になったことで、ドライバーを中心に広がり始めたという。その後、少しずつ市場は拡大してきたものの、1万円前後の高価格帯が主流だったことや、携帯電話のBluetooth搭載モデルが少なかったことなどから、誰もが利用する製品として認知されるまでには至らなかった。しかし、ここにきて、Bluetoothを標準搭載するスマートフォンが急速に普及したことで、Bluetoothヘッドセットに再び大きなチャンスが到来している。

何ができるのか 具体的なシーン訴求がカギ



 バッファローコクヨサプライは、付属のイヤホンを接続するとステレオになる「BSHSBE14シリーズ」を8月中旬に発売。通話は片耳で、音楽はステレオといったように使い分けができるように工夫した製品で、マーケティング部商品企画課の片桐勝春氏は「スマートフォンユーザーの需要に応えるために、Bluetoothヘッドセットのラインアップの拡充に力を入れている」と強調する。

バッファローコクヨサプライ「BSHSBE 14シリーズ」。通話は片耳で、音楽はステレオでと使い分けができる

 また、ロジテックは、ピンクやブルーなどのカラフルなシリーズや、ステレオタイプ、防滴タイプなどの製品を投入し、ラインアップを広げている。このように、各社がスマートフォン普及に合わせて製品を拡充したことで、これまでガラスケースに入れて展示していることが多かったBluetoothヘッドセットが、いまや展示台にズラリと並ぶ状態になっている。お客様が気軽に手に取って、感触を確かめられる環境が整いつつあるのだ。

ロジテック「LBT-MPHS02」シリーズは、6色を揃える

 一方、日本プラントロニクスの荒川啓セールス&マーケティング担当部長は、「スマートフォンの台頭は、改正道交法施行に次ぐ第二の波になる」と期待はするものの、「Bluetoothヘッドセットで何ができるのか、まだまだ認知度は低い。製品数が増えていくことで、どれを選べばいいのかわかりにくくなってしまう」と危惧する。

 この解決のために、同社は今後「カタログやPOPなどで、スマートフォンの対応機種をわかりやすく表示していくことに力を入れていくほか、この機種を使うとこんなことができるといったメリットをアピールしていく」(荒川担当部長)などして、販売促進を図る。また、電話に出るときに「Answer(アンサー)」、出ないときに「Ignore(イグノアー)」と発声することで操作できる「Savor M1100」が、4月15日にECサイトで発売以来、人気を集めていることから、今後さらに訴求を強化していくという。

日本プラントロニクス「Savor M1100」。「Answer」「Ignore」と音声で操作できる

 スマートフォンの普及やタブレット端末の拡大によって、Bluetooth規格自体の利便性がクローズアップされている。ビックカメラ有楽町店のBluetoothヘッドセット売り場では、ロジテックがPOPを使って、ネイルや料理をしているときのハンズフリー通話の利便性をアピールしている。各社が利用シーンをよりわかりやすく訴求していくことで、スマートフォンの周辺機器として、学生や主婦、またランニングなどのスポーツシーンなどで、幅広い需要が喚起できそうだ。(田沢理恵)


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※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年8月29日付 vol.1396より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは