ソニー、携帯オーディオの週次販売台数シェアで10週ぶりにトップ獲得

特集

2010/11/19 17:56

 「BCNランキング」の週次データによる携帯オーディオプレーヤーのメーカー別販売台数シェアで、2010年11月第2週(2010年11月8日-14日)、ソニーがシェア47.0%で1位を獲得。8月最終週以来、10週ぶりにトップに返り咲いた。

新製品効果で一時はアップルのシェアが5割超え



 2010年8月第1週(8月2日-8日)から8月最終週(8月30日-9月5日)まで、ソニーは5週連続でメーカー別販売台数1位を獲得。9月第1週(9月6日-12日)以降は、第6世代iPod nanoなど、新製品を発売したアップルが再びトップに立ち、特に9月第3週(9月20日-26日)から3週間は、5割を超えるシェアを獲得していた。今年9月以降のアップルのシェアの最大値は、9月第4週(9月27日-10月3日)の56.1%。新製品の発売に伴い、価格が下がった旧モデルもしばらく売れ続け、販売台数を押し上げた。


 対するソニーは、10月にウォークマンの新製品を、11月13日にも上位モデルに当たる「A850シリーズ」を発売。新製品効果で、11月第2週(11月8日-14日)、ソニー47.0%、アップル45.5%で、10週ぶりに1位を獲得した。1位と2位の差は、11月第1週は0.4ポイント、第2週は1.5ポイントとごくわずか。販売台数の差は少なく、拮抗している。

 月次集計では、アップルは2002年8月から2010年7月まで、およそ8年にわたって1位を記録し続けていた。2010年8月はソニーがトップを獲得し、連続1位記録は途絶えたものの、9月と10月はアップルが1位に返り咲いている。

携帯オーディオ メーカー別販売台数シェア<月次> 
メーカー 販売台数シェア(%)
2010年8月 2010年9月 2010年10月
アップル 44.0 49.0 49.6
ソニー 47.8 44.0 43.6
その他(アップル・ソニー以外) 8.2 7.0 6.8
「BCNランキング」2010年8月-10月 月次<最大パネル>

若年層をターゲットに絞ったソニー、戦略は見事に当たる



 ソニーは、10代の若者にターゲットを絞り、音楽プレーヤーとしての基本性能を強化。中高生のおこづかい程度で買える実売1万円以下の低価格モデルにも力を入れ、新製品では、自宅で音楽をイヤホンなしで聴けるスピーカー付きモデルのラインアップを増やした。こうした戦略が、見事に当たったようだ。

 カラーバリエーションを合算して集計した2010年11月第2週(11月8日-14日)の携帯オーディオのシリーズ別ランキングでは、アップルの第4世代iPod touchの32GBモデル、第6世代iPod nanoの8GBモデルに続き、ソニーの10月発売の新製品「NW-S754シリーズ」「NW-S754Kシリーズ」が3位・4位にランクイン。そのほかトップ10にウォークマンが4機種が入っている。このうち、4位の「NW-S754Kシリーズ」と9位の「NW-S755Kシリーズ」は、スピーカー付きモデルだ。

2010年11月第2週 携帯オーディオ シリーズ別(※)販売台数シェア トップ10
順位 メーカー シリーズ名・型番 動画再生 容量 発売年月 スピーカーの
有無
販売台数
シェア(%)
1 アップル iPod touch 32GB(4th) 対応 32GB 2010/09 あり(内蔵) 10.9
2 アップル iPod nano 8GB(6th) 非対応 8GB 2010/09 - 9.3
3 ソニー NW-S754 対応 8GB 2010/10 - 7.5
4 ソニー NW-S754K 対応 8GB 2010/10 あり 7.0
5 アップル iPod nano 16GB(6th) 非対応 16GB 2010/09 - 6.4
6 アップル iPod shuffle 2GB 非対応 2GB 2010/09 - 5.4
7 アップル iPod touch 8GB(4th) 対応 8GB 2010/09 あり(内蔵) 4.9
8 ソニー NW-E052 非対応 2GB 2010/10 - 4.5
9 ソニー NW-S755K 対応 16GB 2010/10 あり 3.7
10 アップル iPod touch 64GB(4th) 対応 64GB 2010/09 あり(内蔵) 3.7
※同じ容量のカラーバリエーションは合算して集計
「BCNランキング」2010年11月第2週 週次<最大パネル>

 BCNのインタビュー取材に対し、ソニーマーケティングの中牟田寿嗣コンスーマーAVマーケティング部門パーソナルAVマーケティング部統括部長は、「外的要因は常にある。それでも、かなりのペースでアップルに追いついてきていると感じている」と、ウォークマン復活の手応えを語っている。その実感は、数字に表れているといえるだろう。

ソニーの今秋発売のウォークマンの新製品
(左からNW-S754、スピーカー付きモデルのNW-S754K、NW-E052)

 ただ、iPodのライバルは、今やウォークマンではなく、同じアップル製のスマートフォン「iPhone」だといわれる。確かに、電話・音楽・ビデオ・ネットなど、1台で何でもこなせるスマートフォンを購入した後、音楽プレーヤーを持ち歩かなくなる人は少なくない。しかし、スマートフォンは、初期費用や毎月の通信料など金銭的負担が大きく、必然的に、アルバイトをしている学生や働いている社会人がメインターゲットになる。一度買ってしまえば維持費がかからない携帯オーディオプレーヤーのターゲットとして、スマートフォンを買えない10代の中高生を据えたソニーの戦略は、非常に当を得たものといえる。

 アップルの携帯オーディオプレーヤーで今一番売れているiPod touchと、iPhone、iPadは、使い勝手がよく似ている。画面サイズやカメラ/GPSの有無など、細かい仕様は異なるが、App Storeからアプリやゲームをダウンロードして楽しめる点は同じ。さらに一部の周辺機器は、使い回しができる。共通の管理ソフト「iTunes」と連動するコンテンツ配信ストア「iTunes Store」の機能強化・ラインアップの拡充も続く。特に「iTunes Store」は、映画の配信ビートルズの楽曲配信を開始するなど、ここに来てテコ入れを図っている。

アップルの新しいiPod touchと「iTunes Store」の「映画」コーナーの画面

 一方、ソニーは、ウォークマン、PSPなど、さまざまな人気ブランドを抱えながら、現状ではそれらが密接にリンクしているとはいいがたい。ウォークマンが携帯オーディオ市場で復権しつつあるといっても、今、ウォークマンをもつ10代の若者が大人になって、新たなプレーヤーとして再びウォークマンや、同じソニー系列の製品を選ぶようにならなければ、長期的な視点でアップルに追いついたとはいえないだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)


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