電子書籍、iPadでどう楽しむ? 各社のコンテンツ配信新規事業に期待

レビュー

2010/07/27 19:47

 アップルの「iPad」が発売されて、間もなく2か月が経つ。iPadはインターネットやメールだけでなく、いま話題の「電子書籍」を楽しむことができる。今回は、その使い勝手に焦点を当てよう。

 まずはiPadの基本性能を確認しておこう。サイズは高さ242.8×幅189.7×奥行き13.4mmで、B5用紙(257×182mm)とほぼ同じくらいの大きさだ。重さは680g(Wi-Fiモデルの場合)で、見た目よりも重い。画面は解像度1024×768ドットの9.7型液晶で、モバイルノートPCとほぼ同等の画面サイズ。内蔵メモリは16GB、32GB、64GBの3種類から選ぶことができる。通信方式は、「Wi-Fi(無線LAN)」と「Wi-Fiと携帯電話の3G回線」の2種類がある。

iPad

 iPadは「iBooks」という電子書籍アプリケーションを搭載している。これを使えば、多くの電子書籍がiBooksで楽しめる。iBooksで読む電子書籍のファイル形式は「ePub」だが、6月21日発表のバージョン1.1からは、PDFも閲覧できるようになった。

 「ePub」とは、米国の電子書籍標準化推進団体「International Digital Publishing Forum」(IDPF)が制定している電子書籍のファイル形式。iPadのほか、多くの電子書籍端末が対応している。耳慣れない名前だが、その実体はXHTMLファイルだ。文字の大きさなどの仕様をユーザーが指定できるので、利便性は高い。しかし、日本語の縦書き表示には非対応というデメリットもある。電子書籍のフォーマットというより、シンプルなウェブブラウザと考えたほうが無難だろう。

iBooksではファイル形式「ePub」で表示する

 また、アップルは、電子書籍を購入する「iBookstore」というプラットフォームを提供している。iBookstoreで購入した電子書籍は、iBooksの本棚に登録でき、いつでも読書を楽しむことができる。ちょうど、iTunesで楽曲データを購入するのと同じ感覚で本が購入できるのだ。書籍を物理的にもつことなく、データとして端末の中で保管し、持ち歩けるのはうれしい。

 さて、iPadで読書をすると、どこが便利なのだろうか。一番は、やはり画面が大きく見やすいことだ。慣れ親しんだ携帯電話の画面よりも、一度に多くの文書を表示することができる。本体を横向きにすれば、本のような見開き表示になるのは使いやすい。紙の印刷物は文字の大きさを変えることができないが、iPadでは文字の拡大・縮小ができるのもいい。

 ページをめくる際のアニメーションも魅力の一つだ。実際の書籍を読む動作を忠実に再現したインターフェースは、「読書している」という満足感に直結する。こうした工夫によって、これまでの電子書籍にはなかった「書籍らしさ」が加わり、何となく電子書籍に抵抗を感じていた読書家にも比較的スムーズに受け入れられるだろう。

ページをめくるインターフェースはスムーズ

 しかし、iPadにも弱点はある。まず、液晶画面が発光しているので、紙の書籍を読んでいる時と比べて目が疲れる。個人差はあると思うが、実際に使ってみて、長時間の読書には向いていないと感じた。また、iPadは見た目よりも重く、ずっと手で持ち続けているのは厳しい。別売のケースを活用するなどして、机上に置いて閲覧すると負担は軽減するだろう。

 最近では、iPadのようなタッチパネル搭載端末の登場を見越して、電子書籍ビジネスの基盤を固めようと、端末メーカーや印刷会社、出版社の動きが活発化している。例えば、ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社の4社が7月1日に設立した企画会社・電子書籍配信事業準備株式会社。これは、書籍、コミック、雑誌、新聞など、ジャンルの異なる電子書籍を配信する共同のプラットフォームを構築・運営する企業だ。

ソニーと凸版印刷、KDDI、朝日新聞社は電子書籍配信事業準備株式会社を設立

 また、大日本印刷(DNP)が今秋オープンを予定している電子書籍販売サイトは、約10万点という豊富なコンテンツを揃えるという。さらに、シャープは電子書籍フォーマット「XMDF」を活用したソリューション事業を開始することを明らかにした。さらに、紀伊国屋では、電子書籍準備室を設置。コンシューマー向けの流通サービスを確立するのが狙いだ。

 いずれの取り組みも年内のスタートを予定しており、ユーザーが電子書籍を楽しめる土台ができ上がるのは近い。今後、電子書籍が読める端末の選択肢が広がり、コンテンツ数が増えてくれば、電子書籍を活用する文化は、急速に広がっていくだろう。(ライター・秋葉けんた)