みんなが使うようになったフォントソフト 店頭で最も「売れた」のはコレ!

特集

2010/01/19 14:49

 今、あなたが目にしているこの文字。その文字の書体のことを「フォント」という。かつては紙媒体を中心とする印刷のデザイン現場で、プロが駆使するものだった。それが今、PCの普及によってわれわれも自在に使える環境が整い、その用途は非常に幅広くなっている。種類も豊富だ。フォントメーカーが提供する最近の書体は、誰でも見やすいユニバーサルデザインのフォントや、味のある手書き風フォント、映画字幕をイメージしたデザインフォントなど、さまざまなシーンで活用することを想定して、バラエティに富んでいる。ユーザーもまた、PCにはないフォントを求めて、フォントソフトを購入する機会が増えている。では2009年、市場を制したメーカーと売れ筋フォントソフトは何だったのか、「BCNランキング」データから探った。

メーカー1位は10年連続でダイナコムウェア



 フォントソフトのユーザーは、デザイン業界や放送業界といったフォントをビジネスに利用する業界だけでなく、一般企業がプレゼンテーションで使ったり、一般ユーザーが普段の生活の中でハガキや名刺などに使ったりと、大きく広がっている。これにあわせて、フォントメーカーが活躍する場所も広がっている。身近な例としては、携帯電話スマートフォンのメニュー表示やメールに、各フォントメーカーが提供する書体が採用されているのだ。フォントメーカーの開発した書体を目にしたり使ったりする機会は、確実に増えている。

2009年 フォントソフト メーカー別販売本数シェア トップ10
順位 メーカー 販売本数シェア(%)
1 ダイナコムウェア 38.7
2 モリサワ 24.5
3 データクラフト 12.0
4 フォントワークス 6.9
5 クレオ 4.2
6 ニィス 3.2
7 大日本スクリーン製造 2.8
8 リコー 1.4
9 イワタ 1.2
10 字游工房 1.2

BCNランキング」09年1月-12月 月次 <最大パネル>


 09年の1年間、最も大きなシェアで「BCN AWARD 2010」のフォントソフト部門最優秀賞を獲得したメーカーは、ダイナコムウェア。38.7%を占めた。2位はデザインと印刷の現場に強いモリサワで、24.5%。ダイナコムウェアは、アップルコンピュータとマイクロソフトが共同開発した「TrueType」の関連製品群を多く開発し、この品揃えが受け入れられて、2位に15ポイント弱の差をつけ、「BCN AWARD」を10年連続受賞した。3位は、グラフィック素材の「素材辞典」で知られるデータクラフトで、12.0%だった。

※2001年はダイナコムウェアの前身、ダイナラブジャパンが獲得

製品別ではダイナコムウェアの「TrueType」製品が他を圧倒



2009年 フォントソフト 製品別販売本数シェア トップ10
順位 メーカー 品名 販売本数
シェア(%)
1 ダイナコムウェア DynaFont TrueType600 + 欧文3000 Vista対応版 10.8
2 モリサワ MORISAWA PASSPORT ONE(新規) 7.3
3 モリサワ MORISAWA PASSPORT ONE (新規) 5.9
4 ダイナコムウェア DynaFont TrueType600+欧文3000 ゴールド for Windows 4.1
5 ダイナコムウェア DynaFont TrueType600+欧文3000 ゴールド for Macintosh 3.6
6 データクラフト FONT WIRE 3400 2.8
7 ニィス ニィス丸徳フォントパック 日本語100書体 2.7
8 ダイナコムウェア DynaFont TrueType600+欧文 3000 Mac 優待・乗換キャンペーン版 2.5
9 ダイナコムウェア DynaFont TrueType600+欧文 3000 Mac版 2.5
10 データクラフト FONTWIRE 3400 EXTRAPACK for Windows 2.4

「BCNランキング」09年1月-12月 月次 <最大パネル>


 製品別で最も売れたのは、ダイナコムウェアの「DynaFont TrueType600 + 欧文3000Vista対応版」で、フォントソフトの10本に1本、10.8%を占める大ヒット商品となった。「DynaFont TrueType600 + 欧文3000 Vista対応版」は、業界最多の3790書体を収録。和文380書体(JIS90字形200書体、JIS2004字形180書体)と特典に欧文フォント3007書体などがある。このうち、和文書体は明朝・ゴシックなどの基本書体から流行のデザインフォントや最新のビットマップ風書体などを豊富に収録。特典フォントも、「欧文フォント」やデザイン性溢れる「アートフォント」、POPなど数字表記に最適な「数字書体」など、多用途に使えるバラエティに富んだ書体を用意している。フォントソフトの年間販売本数を見ると、上位10製品のうちダイナコムウェア製品が半数を占めている。そのすべてが「TrueTypeフォント」関連の製品だ。

(左から)「DynaFont TrueType600 + 欧文3000 Vista対応版」「DynaFont TrueType600 + 欧文3000 ゴールド for Windows」「DynaFont TrueType600 + 欧文3000 Mac版」

 2位と3位には、モリサワの「MORISAWA PASSPORT ONE」がランクイン。店頭で購入したあと、持ち帰ってすぐに利用できる新しい購入スタイルを提案している。「PASSPORT ONE」は、1台だけ契約する新規ユーザーを対象に、購入前に通常2週間ほどかかる書類手続きが一切いらない。ただ、年間ライセンス料金が5万2500円と、幅広い一般ユーザー層にとっては価格面のハードルが高かったようだ。また、5位のデータクラフト「FONT WIRE 3400」は、フォントメーカーやタイプクリエーターとのコラボレーションで生まれたフォントパックで、プロのデザイナー向け。このため、一般ユーザーが多く訪れる店頭では、善戦はしているが上位に食い込めていない。

映像、Webなどの利用シーンで使うフォントは多岐にわたる



 冒頭に指摘した通り、フォントの利用シーンは多岐にわたり、しかもユーザーは拡大している。フォント市場でメーカーが勝ち残るには、増え続けるエンドユーザーの「きれいな書体を、さまざまなメディアで使いたい」というニーズに応え、多くの書体を安価で提供することが必要になる。

 業界トップのダイナコムウェアは、DTP業界はもとより、広告やテレビ放送のテロップなど、マルチメディアや映像メディアからWebサイト、ゲーム製品に至るまで、多くの現場で最適なフォントの開発を続けている。例えば、長年フォントユーザーを悩ませてきた人名・地名・旧字・難字など、漢字特有の「外字」問題にいち早く着目した製品をリリース。また、Webサイトでの文字表示で閲覧者が正しく表示できない環境を見直す展開や、他言語の機器への組み込み用フォントの開発に力を入れている。

 競合他社も含め、縦組みでも横組みでも美しさを失わない書体づくりは、ユーザーの要求が高まれば高まるほど重要になってくる。逆にユーザーは、メーカーがつくり出す新しい書体を使って、紙媒体だけでなく、デジタルメディアやデジタル機器で、見栄えのよいコミュニケーションツールを生み出すことができるだろう。(BCN・谷畑良胤)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで127品目を対象としています。

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