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シリコンバレーのニューチャレンジ グーグルが投資した「23andMe」 バイオ技術の格安普及を目指す

ニュース

2009/08/31 11:48

 「パーソナルDNAテスト」の普及を目指す会社がある。シリコンバレーの23andMe社だ。風変わりな社名は、遺伝情報子を決める「染色体(数)とワタシ」に由来する。同社に対する総額900万ドルのシリーズA資金調達では、グーグルも390万ドルを投資した。グーグル共同創設者セルゲイ・ブリン氏の妻アン・ウォジェシキさんは、同社のファウンダーでもある。

個人でも手軽にDNA検査



 同社を利用すれば、個人が簡単にDNAを検査し、膨大なデータベースとインターネットを使って、多様な検査結果を知ることができる。バイオ技術の敷居を一気に引き下げたこのサービスは、米国、欧州を中心に世界51か国で提供されている。ただ、東アジアではまだ行われていない。興味深いのはバチカン市国でも行われていることだ。

 手順は次の3ステップ。

(1)23andMeの販売サイトに登録し、検査キットを購入(399ドル)
(2)1週間以内に送られてくる検査キットに唾液を入れて同社に送り返す
(3)10週間以内にeメールが届くので、自分のアカウントにログインして結果を見る

 たったこれだけで、現在の技術で知り得る個人のDNA情報がわかる。その内容は、遺伝に関わる疾病のリスクや体質、自分のルーツなど86のレポートに及ぶから凄い。

ルーツを辿ることができた!



 以下は、実際に利用してみた体験記――。

 この会社を知って、興味津々、早速試してみた。申し込んで1週間で検査キットが届いた。キットに唾液を入れて宅配便で返送。10週間くらいかかるということだったが、実際には1か月で検査結果が出た。

インターネットで送られてくる調査結果

 同社では22の染色体+性染色体(男はXY、女はXX)と、さらにミトコンドリアDNAを分析する。周知のように1~22までの染色体は対となって両親から1つずつ遺伝し、Y染色体は男性だけ、しかも父親からしか遺伝しない。女性は両親からX染色体を遺伝する。ミトコンドリアDNAは男女とももっているが、母親からしか遺伝しない。つまり、ミトコンドリアDNAを調べると、母方(Maternal Line)がわかり、Y染色体を調べれば、父方(Paternal Line)がわかるという仕組みだ。ボクの場合、母方の遺伝子のカテゴリ(ハプログループ)はAだ。このタイプは、日本人では少数派らしい。

母方の祖先が分布する世界地図。アメリカ大陸に比較的多い

 母の遠い祖先は、マンモスを追ってベーリング海を越え、南米大陸にまで渡った組と同じだという。通称「マンモスハンター」がルーツなのである。

 DNAの検査をしてくれる会社はほかにもあるが、23andMeが他社と違うのは、価格が劇的に安いこと。そして、情報を可能な限りオープン(DNAの生データもダウンロードできる)にし、インターネットを使ったコミュニティサイトで個人間の情報交換もできる。

 23andMeの登場によって、医療機関だけが扱うことができるDNA情報を個人が簡単に共有し合える時代になった。バイオとITの融合、これによって多面的な情報分析とコストの引き下げも可能となった。便利な世の中になったものである。

■著者紹介

坂口 和明
米国シリコンバレーに在住。IAF Software,Inc.のCEO。富士通、山一證券、TISを経て2000年に米国で起業。ERPなどの勘定系システムからデータウェアハウスなどの情報系システムまでの企業情報システム構築を手がける。2007年からは日本、米国だけでなくアジアにまでその活動範囲を拡大。


※本記事は、「週刊BCN」2009年8月31日付け Vol.1298号から転載したものです。