ソニー・東芝、ネットブックガチンコ勝負、解像度とキーボードにポイント

レビュー

2009/08/07 21:00

 ソニーが、同社初のネットブック「VAIO Wシリーズ」を8月8日に発売する。女性を意識したデザインと、1366×768ドットの高解像度な液晶が特徴だ。さっそく発売前に実機をお借りし、同じ10.1型で人気を集めている東芝「dynabook UX」シリーズとデザインや使い勝手を比較してみた。

東芝「dynabook UX」シリーズとソニーVAIO Wシリーズ」

 「VAIO Wシリーズ」と比較するのは、東芝が4月に発売した東芝「dynabook UX」シリーズ。09年6月のネットブックシリーズ別の販売台数ランキングで、国内メーカーの製品として初めて1位を獲得、続けて7月も1位に輝いた人気製品だ。なお、「BCNランキング」では、画面サイズが12.1インチ以下、Atomなどの低電圧型CPUを搭載し、発売が08年以降の製品をネットブックと定義している。

 ネットブックの最大の魅力は価格の安さ。7月の税別平均単価は3万9375円。今回比較する2機種は、発売時の実勢価格6万円前後と高価な部類だが、それでも10万円以下で購入できる。さらにコンパクトで持ち運びしやすいのも特徴だ。

 しかし、そのぶんメモリは1GB、HDDは160GB程度、光学ドライブを搭載していないなど、機能やスペックは抑え気味。とはいえ、ネットブックという名の通り、メールのやり取りやWebサイトの閲覧などが主な用途なら十分なスペックだ。そこで、Web閲覧時に重要な画面の見やすさ、持ち歩く際に気になる重さやバッテリー駆動時間など、ネットブックにとって重要な項目を中心に2台を比較してみた。

こだわりの2機種、液晶は「Wシリーズ」、キーボードは「UX」シリーズ



 まずは第一印象を決める「見た目」から。東芝の「UX」シリーズの天板は艶やかで、高級感がある。また、使用した「サテンブラウン」には立体的なストライプ模様が刻まれて指紋も目立ちにくい。一方、ソニーの「Wシリーズ」はマットな手触りで、多少指紋が残るのが気になった。丸みを帯びた柔らかみのあるボディは、「コンピュータ」というとっつきにくい印象はなく、パソコンに詳しくない女性でも手を伸ばしたくなるだろう。横からみればともにスリムで、上品なデザインだ。

借りた2台の天板部分と本体の厚さを比較

 液晶を開くと、同じ10.1型ワイドでも印象はかなり違う。「Wシリーズ」は逆ヒンジデザインを採用。液晶が一般的なネットブックに比べて低くなるため、狭い空間で使う際も場所をとらない。

同じ画面サイズだが、解像度と液晶ディスプレイ部分の高さが異なる
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 もう一点大きく違うのは解像度だ。10.1型程度のネットブックの解像度は1024×600が主流。「UX」シリーズをはじめ、海外主要メーカーのASUS「Eee PC」シリーズや日本エイサー「Aspire one」シリーズもこの解像度を採用している。それに比べて「Wシリーズ」は1366×768ドットと解像度が高く、一度にWebサイトの広い範囲を表示できる。

 実際に同じWebページを2機で表示してみたが、その差は一目瞭然。「UX」シリーズは写真とその上の文字までしか表示できなかったのに対し、「Wシリーズ」は写真の上の文字だけでなく下の文字も表示している。そのため、Webサイト閲覧時はスクロールが少なくて済んだ。また、エクセルを使う際も、広い範囲を表示できるので作業しやすい。

「UX」シリーズでの表示

 ただ、一つ気になったのは文字の大きさ。画面サイズは同じだが、解像度が高いぶん「Wシリーズ」の方が広範囲を表示するため、「UX」シリーズに比べて文字が小さくなり、読みにくい場面があった。Windowsの設定などで文字を大きくすることはできるが、いろいろと設定をしていくのはちょっと面倒。小さな文字が読みにくい方は、購入前にあらかじめ文字の小ささを確認しておいたほうが無難だろう。

「Wシリーズ」での表示、スクロールしなくてもある程度、文章が読める

 そのほか、室内の蛍光灯下で使った際、「UX」シリーズは画面への多少の映り込みと、液晶のフレームに光が反射するのが気になった。「Wシリーズ」は、フレーム、液晶ともに映り込みが少なくて見やすかった。少ないスクロールでWebサイトを快適に閲覧できること、映り込みが少ないことなどを考えると、液晶部分では「Wシリーズ」に軍配といったところだろうか。

 続いて使いやすさのポイントとなるキーボード。記者会見に2機種を持ち出し、会場でメモを取りながら打ち心地を比べてみた。ともに、一つ一つのキーが独立したキーボードを採用している。「Wシリーズ」は、キーピッチが約16.5mmと短くほかのキーも同時に押してしまい、打ち間違えが多くなった。キーストロークも約1.2mmと浅く、打った感覚があまりない。1時間ほど使っていると手が疲れてしまった。

「Wシリーズ」のキーボード
 対して「UX」シリーズは、キーピッチ19mmで、普段使っているデスクトップPCや15.4型程度のノートPCと変わらない打ち心地だ。キーストロークも1.6mmとしっかり打ち込めるので、かなり使いやすかった。

「UX」シリーズのキーボード
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 ネットブックは本体がコンパクトなぶんキーボードのスペースも少なくなり、キー配列が大画面ノートPCのものと多少違う場合がある。この2機種では、「半角/全角」キーの位置に戸惑った。普段使っている15.4型ノートPCのキーボードでは、左上の数字「1」の左隣にあるのだが、こちらはより上部の「F1」の左隣に配置されている。これにはなかなか慣れることができなかった。そのほか、「Wシリーズ」はすべてのキーが同じ間隔で並んでいるのに対し、「UX」シリーズは方向キーが他のキーよりも間隔を空けて配置されているため、キーを押す際に周囲のボタンを一緒に押してしまうことは少なかった。

ともに「半角/全角」キーは「ESC」と「F1」の間にある(左が「Wシリーズ」、右が「UX」シリーズ

バッテリー駆動時間は物足りないので、外出時には大容量バッテリーも



 重さは「UX」シリーズが約1.18kg、「Wシリーズ」が1.19kgとほぼ同じ。会見に出かけた際、行き帰り合わせて1時間程度持ち歩いたが、肩や腕が痛くなるということはなかった。

バッグにすっぽりと収まる2機種

 外出時に気になるバッテリー駆動時間は、メーカーのスペック表によると付属バッテリーを使った場合で「Wシリーズ」が3.5時間、「UX」シリーズが約4.0時間。使用状況にもよると思うが、今回「Wシリーズ」は、会見で1時間、会社で2時間使ったあたりでバッテリーが切れた。もっと長時間持ち歩きたいという人は、外出時はオプションの大容量バッテリーに交換してもいいだろう。2機種ともに、バッテリーの取り外しは簡単にできる。また、「UX」シリーズには、多少価格は高くなるが、大容量バッテリーを標準搭載した10時間駆動モデルもあるので、バッテリー交換が面倒という方はそちらを選ぼう。

バッテリーは簡単に外すことができる(左が「Wシリーズ」、右が「UX」シリーズ)

 余談だが、「Wシリーズ」は裏にまでブラウンの塗装が施してある。脇に抱えて裏が見えてしまっても美しいのだ。最後にインターフェイスを確認する。ともに右側面にUSBポートを2基、「UX」シリーズは左側面にもう1基搭載している。機能を絞ったネットブックではUSBポートを多く備えていた方が、光学ドライブや外付けHDDなど、機能を拡張する際に便利だろう。

右側面にUSBポートが2基

 2機種はそのほか、前面にSD/SDHCカード、マルチメディアカード対応のカードリーダーを備えている。「Wシリーズ」なら、さらにメモリースティック Duo/PROに対応するカードリーダーも搭載しているので、手持ちのデジタルカメラがソニー製という人は、メモリカードを直接挿入できて便利だ。

前面にはカードリーダーを装備

 平均的なネットブックに比べると多少高価だが、デザイン、使い勝手ともにそれだけの価値がある2機種。ネットサーフィンが主な用途で、細部までデザインにこだわりたいというに人は、液晶に優れる「Wシリーズ」、仕事などで文章を頻繁に打つというに人は、キーボードが使いやすい「UX」シリーズをオススメしたい。(BCN・武井美野里)


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店からPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで124品目を対象としています。