【台北発・安藤章司】台湾のITベンダーが主戦場とするパソコン業界は、価格競争が激しく、付加価値による差別化が難しい。そこで打ち出したのが“情報家電化”戦略。6月2-6日に開催したアジア最大級のコンピュータ見本市「コンピュテックスタイペイ」では、昔ながらのパソコン向け部品の展示もある一方で、情報家電系の商談も大幅に増えた。

 台湾のITベンダー大手は、得意とするパソコン技術をベースに情報家電に積極的に進出。ライバルである日本メーカーは、コンテンツ保護技術などのセキュリティや、日本独自の仕様で防衛戦を展開する。一方、日本メーカーのシェアを狙う台湾ITベンダーは「攻めるより守るほうが難しい」(台湾ITベンダー幹部)と、余裕の表情だ。

 パソコン用ディスプレイからスタートした台湾のベンキューは、自社のディスプレイにHD画質の映像を転送できるHDMI端子を搭載し、テレビとしても活用できる製品づくりに力を入れる。また、パソコン大手の台湾のASUSTeK Computer(ASUS)は、従来のパソコンとは一線を画す、デジタルライフ全般にわたっての製品づくりに取り組んでいる。パソコンで培った製品開発の素早さやデザイン力、品質の高さをテコに、「5年以内をめどに世界全産業で上位5位のブランド力を目指す」(ASUSTeK Computerの沈振来社長)と、鼻息が荒い。

 しかし、各社とも日本市場を攻めあぐねているようだ。デジタルテレビやBD(ブルーレイディスク)、HDDレコーダーなどの情報家電は、パナソニックやソニーなど日本企業が強い分野。さらに、コンテンツ保護技術などのセキュリティや、日本独自の仕様が台湾ITベンダーの行く手を阻む。日本では、テレビに視聴制限システムであるB-CASカードへの対応や、コピーを厳しく制限するHDDやBD、DVDレコーダーにはさまざまなセキュリティ技術を実装しなければならない。こうした技術は台湾ITベンダーが得意とするパソコンとの互換性は極めて低く、自らの強みが生かしにくい。

 台湾ITベンダーのなかからは、日本市場の現状について厳しい意見も聞かれる。ベンキューの王文※副会長は、「日本の情報家電は“第2の携帯電話”になりかねない」と、苦い表情を浮かべる。日本メーカーは、高付加価値の携帯電話をつくる技術を持ちながら、あまりに閉鎖的な進化をしてしまったために“ガラパゴス症候群”に陥り、世界でのシェアをとれなかった。

 パソコンをベースとしたオープンな技術や価格の優位性を武器に、台湾ITベンダーは、中国や南米、東欧、ロシアなどの振興地域へ売り込み攻勢をかける。独自の技術にこだわる日本メーカーが、もし世界のシェア争奪戦の趨勢を見誤ると、携帯電話のような「失敗」を繰り返すことにもなりかねない。

※玉へんに粲