春のデジタル一眼レフカメラ商戦、第2幕の趨勢が明らかになった。トップシェアを獲得したのは、キヤノン「EOS Kiss」シリーズの最新モデルで1220万画素の「X2」。初心者層を中心に、圧倒的に支持されているデジタル一眼の強さは健在だ。しかし、ここに来て新たな動きも見え始めた。「BCNランキング」で動向をまとめた。

●キヤノンがX2効果で余裕のトップ奪還、しかし粘るニコンはすぐ背後に

 「EOS Kiss X2」の発売は3月21日。3月第3週(17日-23日)の「BCNランキング」では、発売直後の2日間だけで24.1%もの販売台数シェアを記録し、ぶっちぎりの1位を獲得した。画素数を増やしたほか、映像エンジンに「DIGIC III」を採用。連写速度を毎秒3.5コマに速め、一層の低ノイズ化も実現。そのほか随所に改良が施されている。デジタル一眼の本命中の本命だけに、当然の結果ともいえるだろう。


 きめ細かなラインアップ戦略で幅広いレベルのユーザー獲得に成功したニコンに習ってか、今回は新モデルが出た後も1010万画素の「EOS Kiss デジタルX」を併売。上位モデルを「X2」、下位モデルに「デジタルX」という布陣で、07年にニコンに奪われた年間トップシェアの奪還を狙う。


 X2効果でメーカーシェアも急上昇。それまで販売台数シェアで1位を走ってきたニコンをかわし、発売直後の3月第3週に48.2%のシェアを獲得してトップシェアに返り咲いた。この時点でのニコンとの差は実に20ポイント近く。4月第1週(7-13日)では50.4%のシェアを記録し、5割の大台乗せを果たした。ところが、ニコンも粘り強さをみせ、じわじわと盛り返している。直近の4月第2週(14-20日)では、トップのキヤノンが44.8%に対しニコンは37.9%。差は7ポイント弱まで縮まってきた。


 キヤノンがニコンを突き放せない要因は、ラインアップの数にありそうだ。XとX2の併売作戦を展開し、これまでの「1本足打法」からの脱却を狙っているキヤノンだが、初級-中級層で後に続くカメラがまだない。直近の4月第2週でトップ10にランクインしているモデルを見ても、キヤノンでは、X、X2の次は「40D」といきなり中・上級者向けになってしまう。一方ニコンは、初級から中級者向けで、そろそろモデルチェンジも近いのではと噂される「D80」が、値下げ攻勢で2位にランクイン。初心者向けの「D60」、入門向けの「D40」が続き、中・上級者向けD300も8位につけている。ラインアップを絞るキヤノン対ラインアップにグラデーションを持たせたニコンという状況はまだ続いているといっていいだろう。

●広がる価格の幅、価格帯ごとの特徴を打ち出して棲み分けへ

 ここで価格の動向を見てみよう。デジタル一眼の税抜き平均価格は、この数年で13万円台から10万円台まで下がってきた。今年に入ってからは10万円を挟んで上下する動きだ。やはり機種別では最も売れているEOS Kissシリーズの価格が全体を大きく左右している。しかし、機種別の価格の動きを見ると、価格帯が大きく2つに分かれていることがわかる。全体に価格が下落しているというより、低価格帯のモデルが新たに加わっている、という構図のようだ。


 現在の売れ筋は8万円以上のクラスで、10万円前後がボリュームゾーンの第1グループ。もう1つは、7万円以下でエントリークラスの第2グループ。5万円前後のD40の存在はやはり破格の存在だ。このクラスだと、機能というより、安さがモノをいう価格帯。価格帯の特徴としては、機能を求めるなら10万円前後、安さなら6万円前後という状況で、棲み分けができているようだ。

●レンズキット率で、初心者へのアピール度を見る

 デジタル一眼レフには、ボディとレンズをセットにして、単体で買うより安く売る「レンズキット」と、ボディのみで売る2つの販売形態がある。ボディだけ手に入れても写真は撮れないから、これから一眼レフカメラを始めようとする初心者はほとんどの場合レンズキットを購入することになる。つまり、一眼レフの販売台数のうち、レンズキットが占める割合を見れば、初心者がどの程度いるか、おおまかの見当がつく。
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 上位5社で、それぞれの一眼レフカメラのうちレンズキットの販売台数が占める割合を「レンズキット率」として、今年に入ってからの推移を見た。意外に低いのがキヤノンで、X2発売までは7割を下回る水準で推移していた。一方ニコンは常に7割から8割の水準で推移している。ただ、キヤノンもX2発売以後はレンズキット率が8割を超える場面が見られ、初心者層へのアピール力が高まっているようだ。


 ここで注目しておきたいのがソニーとオリンパス。ソニーは、キヤノン、ニコンに次ぐ第3位の座を固めつつあるが、ここに来てレンズキット率が8割を超える水準に高まってきている。要因はα350の好調だ。このところ勢いこそ落ち着いてきたが、発売直後のピーク時で8.8%、直近でも5.6%のシェアがあり、キヤノン、ニコンの争いに割って入ろうとしている。また、ソニーに一時期は10ポイント以上も水を空けられていたオリンパスだが、E420の発売で勢いを増し、ソニーに肉薄している。もともとが、レンズキット率が高く、初心者層の購入が多いメーカーだ。

●ますます高まるライブビューの存在感

 ソニーとオリンパスに共通するポイント、それはライブビュー機能の進化だ。コンパクトデジタルカメラでは、「液晶画面を見ながらシャッターを押す」というのは、普通に行う撮影動作。今ではファンダーがついたカメラのほうが珍しくなってしまった。一方一眼レフは、ファインダーを覗いてシャッターを切るのが今のところ標準。手ブレを抑えたり、すばやい動きをタイムラグなく把握したりするにはこちらのほうが有利だといわれている。

 しかし、コンパクトカメラから一眼レフに移行しようとする人たちは、この撮影スタイルに抵抗を覚える人も少なくないようだ。「カメラは、両手で目の前にかざして、画面を見ながら撮るもの」というのが最近の常識になってきている。当然、一眼レフ購入後もこうしたスタイルで撮影したいと思うのが自然だろう。しかし、キヤノンやニコンのカメラにライブビュー機能が搭載され始めたのは最近のこと。いずれも決して使いやすいとはいえない特殊用途の撮影モードといった扱いだった。

 一方ソニーのα350は、ライブビュー専用のセンサーを別に設けるなどして、コンパクトデジカメに似た操作感を実現した。オートフォーカスのスピードは決して早いとはいえないが、他社のカメラと比べれば十分日常的に使えるスピードに仕上がっている。さらに、液晶画面の角度を変えることもでき、ライブビュー機能を活かしたハイアングルやローアングルでの撮影も自在だ。


 世界最小・最薄をうたう、コンパクトなオリンパスのE420も、やはりライブビュー機能がウリだ。α350と同じように液晶画面を見ながらのピントあわせが実用的なスピードで可能。そのうえ、今はコンパクトデジカメでは常識ともいえる顔認識機能までついており、コンパクト感覚でステップアップが可能なカメラといっていいだろう。

●一眼のコンデジ化が進めば、「2強」時代の終焉も

 コンパクトデジカメでは当たり前だが、デジタル一眼ではそうではないものが、もう1つある。手ブレ補正機能だ。2強のキヤノンとニコンは、いずれもレンズに手ブレ補正機能を内蔵する方式。補正機能は優れているが、古いレンズで補正機能が使えなかったり、交換レンズが割高になるというデメリットもある。

 一方その他のソニーやオリンパス、PENTAXといったメーカーは、いずれもボディに手ブレ補正機能を内蔵している。補正の機能はやや劣るものの、すべてのレンズで手ブレが補正できるというメリットがある。コンパクトデジカメからの移行時に、どちらが自然に感じるかは重要なポイントだ。


 このところ量販店では「コンパクトデジカメと同じように撮影できるデジタル一眼を求める人が増えた」という声も聞かれはじめた。今後デジ一眼のコンデジ化がますます進めば、デジ一眼に求められる基本的な機能ががらがらと変わってしまうかもしれない。そうなると、現在コンパクトデジカメで繰り広げられているカメラメーカーと家電メーカーが入り乱れての激しい競争が、一眼レフにも波及するだろう。キヤノンとニコンの「2強」構造が崩れるのは「時間の問題」になるかもしれない。(BCN・道越一郎)

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