デジタル一眼どれ選ぶ? 売れ行きからみたこの冬の人気モデルトップ10

特集

2007/12/19 16:10

 デジタル一眼レフカメラの売り場がホットだ。07年後半でキヤノン、ニコンの2強に加えてソニー、オリンパス、松下電器産業が相次いで新製品を発売。中級機のラインアップも充実しはじめ、年末商戦の目玉の1つになっている。注目が集まっているデジタル一眼の売れ行きを「BCNランキング」で集計、人気モデルやメーカーの勢力図など、最新情報をまとめた。

●エントリーモデルの「Kiss」、人気依然衰えず

 まず最新の売れ行きを機種別でみていこう。12月10?16日の1週間で上位10機種のランキングを作成した。1位と2位はキヤノンとニコンのエントリーモデル「EOS KissデジタルX」「D40x」がそれぞれランクインしている。

 1位はキヤノンの「EOS KissデジタルX」。発売以来1位を独走しており、今、日本で最も売れているデジタル一眼レフカメラといっていい。販売台数シェアは26.2%。19日にBCNが集計したボディのみの市場推定価格(以下同)は6万2100円。センサーサイズの規格であるAPS?Cに準拠した22.2×14.8mmの有効1010万画素CMOSセンサーを搭載。センサーについたホコリを超音波でふるい落とす「セルフクリーニングセンサーユニット」も備えている。

 最大の特徴は女性でも持ちやすい大きさで、重さもボディのみで510gと軽いことだ。カラーはブラックとシルバーの2色で、それぞれに標準ズームレンズがセットになったレンズキットと、標準ズームレンズと望遠ズームレンズの2本がセットになったダブルズームキットをラインアップしている。


 2位のニコン「D40x」はシェア22.2%で、推定価格は6万2800円。同社が「ニコンDXフォーマット」と名づけているAPS?C準拠の23.6×15.8mmの有効1020万画素のCCDセンサーを搭載する。6位にランクインする有効610万画素の「D40」の後継モデル。06年12月に発売された「D40」は発売後の人気からわずか3か月で有効1020万画素にスペックアップした「D40x」として発売された。重さは495gで1位の「KissデジタルX」よりも軽い。

 ただし、「軽い」というメリットと引き換えに注意しなければいけない点もある。「D40x」と「D40」はレンズ内にモーターを内蔵するレンズでなければオートフォーカス(AF)が機能しないのだ。ニコン純正レンズならレンズ名称の頭に「AF-S」「AF-I」がついて入れば使用できる。もちろんこのほかのレンズもマニュアルでピント合わせを行うなら使用できる。カラーはブラックとシルバー、標準ズームがセットになったレンズキットと、標準ズームと手ブレ補正機能「VR(Vibration Reduction)」搭載の望遠ズームの2本がセットになったダブルズームキットをラインアップする。


 4位にはシェア12.1%でキヤノン「EOS 40D」が入った。8月31日発売の中級デジタル一眼レフで、APS-C準拠の有効1010万画素CMOSセンサーを搭載する。ボディのみの推定価格は12万6900円。秒間6.5コマの高速撮影やライブビュー機能、3インチの液晶モニターに「セルフクリーニングセンサーユニット」などを備える。また最大でISO3200までの高感度撮影も可能。高感度撮影時などに画像のザラツキを減少させる「ノイズリダクション」機能や、ハイライト側の白トビを抑える「高輝度・階調優先」機能など画質面で実用性が高い機能も備えている。

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 5位にはシェア7.3%でニコンの中級機「D300」が入った。11月23日に発売されたばかりで、推定価格もボディのみで20万8300円と高価なモデルながら上位にランクイン、人気の高さを示している。有効画素数は1230万画素で「ニコンDXフォーマット」のCMOSセンサーを搭載する。51点のフォーカスポイントや被写体の動きにフォーカスポイントが追随してピントを合わせ続ける「3D-トラッキング」モードのほか、最大ISO6400までの高感度機能などを備える。キヤノン「EOS 40D」と同じ中級機だが、ニコンでは「D300」をプロユースも意識したとしている。

●中級機はキヤノン40Dが手頃な価格で優勢

 07年後半は、中級モデルを中心にしたデジタル一眼の発売ラッシュが続いた。皮切りは8月31日にキヤノン発売した「EOS40D」。10月26日に松下電器産業がエントリー向けデジタル一眼レフ「L10」を発売。11月はソニーが「α700」を1週間も発売日を繰り上げた9日に発売、23日にはニコンが「D300」、オリンパスも中・上級者向けデジタル一眼レフ「E-3」を同時に発売した。さらに11月29日にはキヤノンがプロ向け「EOS-1Ds Mark III」、30日にニコンが同じくプロ向け「D3」を発売。

 途中9月は発売がなかったが、8月から11月の4か月で実に7機種も発売になっている。特に中級機以上のカメラが充実しているが、それぞれの発売日以降の販売台数シェア推移をみてみると、明暗がはっきり分かれている。


 最も好調なのがキヤノン「EOS 40D」。発売した8月の最終週(8月27?9月2日)で一気に23.4%ものシェアを獲得し、その後、年末商戦に突入した12月の第2週でも15%前後の高いシェアを維持している。もともと発売時の実勢価格がボディのみで15万円前後と安く、さらに他のメーカーよりも2か月近く発売したことで19日の集計時点では推定価格12万6900円にまで下がり、中級機としては最も手ごろなモデルになっている。

 ライバル機種と目される11月23日発売の「D300」も発売時の実勢価格がボディのみで23万円前後という価格ながら、発売日の週(11月19?25日)で一気に20.5%のシェアを取り強烈な立ち上がりを見せた。その後も12月の第2週まで10%前後のシェアを確保している。

 一方で元気がないのがソニーとオリンパスだ。ソニーは06年1月にカメラ事業から撤退したコニカミノルタからカメラ技術を受け継ぎ、同年7月に手ブレ補正機能をボディに内蔵したエントリーモデルのデジタル一眼「α100」を発売。この11月に発売した中級機「α700」は、同社のデジタル一眼レフで2機種目のモデルだ。有効1220万画素でサイズはAPS-C準拠のCMOSセンサー「Exmor(エクスモア)」を採用し、約92万画素の3インチ液晶モニターも搭載する。推定価格は16万4500円。

 「α700」は発売になった週(11月5?11日)こそ5.6%のシェアを獲得しているが、その後は伸びが維持できず1%前後に落ち込んでいる。トップ10ランキングでも発売から間もないにも拘わらず直近の週次(12月10?16日)での順位は12位にとどまっている。

 オリンパスが11月23日に発売した中・上級者向けデジタル一眼「E-3」は、有効1010万画素で、17.3×13.0mmのフォーサーズ規格を採用した「ハイスピードLive MOSセンサー」を内蔵。縦と横に回転する2軸可動式の液晶モニターを備える。ボディ内手ブレ補正機能も搭載する。ソニー「α700」と同じように発売直後はシェア3.4%と伸びているがその後はシェアを維持できていない。

 一方でソニーのエントリーモデル「α100」が8位にランクイン。オリンパスもこの4月と6月に発売した「E-410」「E-510」のエントリーモデル2機種がそれぞれ10位と7位に入っており、メーカーを問わずエントリーモデルに人気が集中していることが分かる。

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●フラッグシップ対決は価格差でニコン

 中級機合戦は、やはりキヤノンとニコンが優位で進んでいる。中でも価格面で有利な40Dが一歩リードといったところか。またこの2社はプロ向けデジタル一眼もほぼ同時期に発売して競り合っているが、こちらではニコンが優勢だ。同じプロ向けでも推定価格54万1000円のニコン「D3」が販売台数シェア1.3%を獲得、一方のキヤノン「EOS-1Ds Mark III」はシェア0.2%で83万9900円。やはり価格差が台数シェアに影響しているといえそうだ。


 2モデルとも価格も機能も完全にプロ向けの仕様だが、「一般のユーザーでも中級機やそれ以上のモデルからステップアップで購入していく人がいる」(都内量販店)ようで、「もともと製造数が少ないだけに発売時に店頭に入荷した分は予約数だけで売り切れた」(同)という。一部の一般ユーザーには、高級なプロ向けデジタル一眼レフも人気があるようだ。

 06年12月からメーカーシェアの推移をみてみると、トップグループはキヤノンとニコンで首位を抜きつ抜かれつの熾烈な争いをしている。オリンパス、ソニー、ペンタックスが2位集団を形成し2強に続く地位を狙っている。そんな中で今回、エントリーモデル「L10」を投入した松下電機産業が、どこまで2位集団に食い込んでいけるか注目だ。


 最後に市場全体の動向もみておこう。07年はデジタル一眼レフカメラ市場全体は好調な年だったといえる。前半、販売台数の対前年比は平均200%前後で推移。販売金額も160%前後で推移した。特に夏ボーナス商戦の6月には台数で252.7%、金額で187.3%を記録した。後半はやや鈍化傾向だったが冬ボーナス商戦を迎えた11月には台数で140.6%、金額で147.6%と上昇している。この勢いを12月も維持し、08年以降につなげられるかに注目していきたい。(BCN・岡本浩一)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など24社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。