電力線をLANケーブル代わりにして、コンセントに接続すればネットワークが使えるPLC(高速電力線通信)アダプターの人気が高まっている。参入メーカーも増え、現在ではPLC製品で販売店の棚1つ丸ごと占領するほど存在感も大きくなってきた。販売も順調で、06年12月に比べると台数で30%程度の伸びを示している。初の家庭向けPLCアダプター発売から半年、BCNランキングデータで売れ筋を探ってみた。


●コンセントに差すだけでホームネットワークを構築できるPLCアダプター

 06年12月、松下電器産業が初めて家庭向けのPLCアダプターを発売して半年が経過した。まだまだ一般の人には馴染みが薄い、新しいジャンルの製品だ。しかし「コンセントに差し込むだけでホームネットワークが構築できる」というキャッチフレーズに心を揺さぶられるユーザーは少なくないだろう。

 PLCとは、電力線をLANケーブルの代わりに通信回線として利用する技術のこと。コンセントに電源を供給するために、既に家庭に引かれている電力線を利用するため、特別な工事は不要。コンセントにPLC対応機器を接続するだけでLAN接続ができるうえ、通常通り電力線としても利用できるというメリットがある。そのため、別途LANケーブルを用意する必要がなく見た目もスッキリさせることができる。なお、インターネットに接続するためには別途モデムやルータが必要なものがほとんどだ。

 それでは、PLCアダプターのメーカー別販売台数シェアを見てみよう。07年1月では、先行して製品を投入した松下が68.0%、松下に続いて06年12月下旬に参入したアイ・オー・データ機器が32.0%のシェアを獲得している。この時点ではPLCアダプターを発売しているメーカーが松下、アイ・オー・データしかなかったため、この2社で市場を分ける形になっていた。

 その後、4月にバッファロー5月にはロジテックと、PC関連メーカーが次々と参戦。07年5月現在では計6社がPLC市場に参入している。しかし、依然松下の勢いは強く、07年5月の月次データでも61.7%と、依然大きなシェアを維持している。続くアイ・オー・データは30.5%で、3位以下を大きく引き離している状況だ。

●機能はほぼ横並びのPLCアダプター 購入の決め手は安心感


 07年5月の月次データでPLCアダプターの売れ筋をチェックしてみた。1位は松下の「BL-PA100KT PLCアダプター スタートパック」で、販売台数シェアは54.0%。家庭用PLCアダプターとして初めて製品化したモデルで、PLCを買うなら松下製、と支持するユーザーが多かったようだ。

 ADSLや光ファイバーのモデムと接続する親機と、パソコンなどの端末と接続する子機を1台ずつセットにした。あらかじめ親機と子機間の通信や暗号化設定をしたうえで出荷しているため、ユーザーは購入後、コンセントに差し込むだけですぐ利用できる。LAN端子を備え、LANケーブルを使ってPCやネットワーク対応の薄型テレビ、プリンターなどの機器をつなぐこともできる。

 通信方式には「HD-PLC」方式を採用しており、通信速度は理論値で最大190Mbps(メガビット/秒)。本体サイズは親・子機とも幅121×高さ70×奥行き40mm、重さは約240g。なお、子機は15台まで親機に接続できる。

 2位はアイ・オー・データの「PLCアダプター スターターパック(PLC-ET/M-S)」で、シェアは26.8%。松下の「BL-PA100KT」と同様、親機と子機をセットにしたモデルだ。

 親機、子機とも仕様は共通で、切り替えスイッチで「親機」「子機」を切り替えて使用することができる。子機は最大15台まで接続可能で、増設時は親機・子機の設定ボタンを同時に押すだけで接続設定が完了する。通信速度は理論値で最大190Mbps、本体サイズは幅121×奥行き40×高さ70mm、重さは約240g。

 各社のPLCアダプターを比較するとデザインなどに多少の違いはあるものの、親機・子機間の設定がボタン1つでできる簡単さや、コンセントの通信速度を測定する機能を搭載している点など、機能面での目だった差異はない。

 ビックカメラ新宿西口店の周辺・通信機器コーナー担当の新井美範さんに選び方について聞いたところ、「通信速度や機能などは各社ほぼ横並び。お客さまは、ブランドイメージや安心感などで製品を決めているようだ。とくに、PLCアダプターの先行メーカーである松下や、PLCネットワーク接続ができなかった場合に、購入後2週間以内であれば購入代金を返金するキャンペーンを実施しているアイ・オー・データの人気は高い」という。

 こうしたなか、他社との差別化を図るために、NECアクセステクニカがルータ機能を内蔵したPLCアダプター「AtermCR2500P」を7月上旬に発売する。これまでのPLCアダプターは別途ルータが必要だったが、「AtermCR2500P」はルータを用意することなくインターネット接続が可能になる。このように、各社差別化を図るために、PLCアダプターに機能を追加していくと、将来的には無線LANのアクセスポイント機能を組み込んだPLCアダプターなども登場するかもしれない。

●諸問題を抱えるPLC 普及の鍵を握るのは安定した通信速度の実現

 インターネット接続に対応するデジタル家電が増加するのに従い、コンセントに差し込むだけでネットワークに接続できるPLCアダプターは今後、さらなる普及が見込まれている。しかし、PLCアダプターを普及させるためにはいくつかの問題を解決する必要がある。

 1つはPLCによる電波の漏えい問題だ。PLCで使われている周波数帯が短波ラジオやアマチュア無線、防災用無線などの周波数帯と重なるため、電力線からもれるPLCの電波によってこれらの無線電波を妨害する可能性がある。このため、現状ではPLC機器の使用は屋内に制限されている。

 さらに、短波ラジオやアマチュア無線などに対する影響が大きくなった場合、電波法により使用停止命令を受ける可能性もある。06年12月にはPLCの妨害電波によって無線通信ができなくなるとして、アマチュア無線家など115人が国に対してPLC機器の販売認可の取り消しを求める訴訟を東京地方裁判所に起こした。しかしアマチュア無線家の訴えは却下されたが、電波妨害に関する問題は解決したわけではなく、今後もこうした動きに注意が必要だ。

 また、通信速度の安定も課題の1つ。PLCはLANケーブルのように有線でつながっているので、通信速度が安定していて、切れにくい、と考えているユーザーが少なくない。しかし、実際はドライヤーや掃除機、照明器具などを使用している時に発生する電気ノイズや、電力線の長さ、ブレーカーの仕様などによって通信速度が落ちてしまう場合がある。


 このようにPLCが抱える課題は少なくないが利点も大きい。ビックカメラ新宿西口店の新井さんは「無線LANの設定は難しいと感じている40-60代のPCユーザーを中心に、(PLCの)関心が高まっている」といい、PLCアダプターが新たなホームネットワークユーザーの獲得に一役買っていることは間違いなさそう。また、最近では1階、2階のフロアを越えた通信はPLCで、同フロア内での通信は無線LANを使って、というように、PLCと無線LANを併用しているユーザーも増えてきているようだ。さらに諸問題を解決したうえで、PLCの屋内利用の制限が撤廃されれば、コンセントにつながる機器はすべてインターネットに接続できるようになる可能性も。そうなると、家電製品全体に大きな変化が訪れそうだ。PLC技術のこれからの進化にも、おおいに期待したい。(WebBCNランキング編集部・山下彰子)


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