ハイビジョンに必須の新AV端子、急速に普及したHDMI端子とは?

特集

2007/04/25 08:20

 高画質、便利、シンプルと三拍子揃った新しいAV端子「HDMI端子」。デジタル家電、AV機器への普及が進んでいる。HDMIは、デジタルビデオカメラやHDD-DVDレコーダーで録ったハイビジョン映像を、クオリティを損ねることなく楽しむために不可欠な次世代インターフェイス。プラズマテレビでは、搭載率はほぼ100%。液晶テレビも20V型以上に限れば100%近い。「BCNランキング」で、ハイビジョン時代の新スタンダード、HDMIについてまとめた。

 高画質、便利、シンプルと三拍子揃った新しいAV端子「HDMI端子」。デジタル家電、AV機器への普及が進んでいる。HDMIは、デジタルビデオカメラやHDD-DVDレコーダーで録ったハイビジョン映像を、クオリティを損ねることなく楽しむために不可欠な次世代インターフェイス。プラズマテレビでは、搭載率はほぼ100%。液晶テレビも20V型以上に限れば100%近い。「BCNランキング」で、ハイビジョン時代の新スタンダード、HDMIについてまとめた。

●便利で高画質なHDMI端子 リンク機能で脚光を浴びる

 HDMI端子は、映像と音声、制御信号を1本のケーブル(HDMIケーブル)でデジタルデータのまま伝送できる新しい規格「HDMI(High-Definition Multimedia Interface)」に対応した端子。ハイビジョン映像やサラウンド音声に対応し、他の端子よりも高品位な映像・音声を再生できる。ケーブルも1本で済み、接続方法もシンプルだ。

 HDMIには制御機能が含まれるのも特徴。これを利用して、リモコン1つでテレビとHDD-DVDレコーダー、サラウンドシステムなどを操作できる、いわゆる「リンク機能」を搭載するものもある。業界で初めて取り入れた松下の「VIERA Link」、続いて発表したシャープの「AQUOSファミリンク」は、同一メーカーのテレビとレコーダーのセット購入を促し、単なる画質向上だけではない、デジタルならではの利便性を持つHDMI端子に注目を集めるきっかけになった。

 そもそもHDMIは、パソコンとディスプレイを接続するDVI規格をAV機器向けに拡張したもので、ソニー、日立、トムソン(RCA)、フィリップス、松下、東芝、シリコンイメージの7社で構成する業界団体「HDMI Licensing,LLC」が開発、ライセンス管理を行っている。厳密にはいくつかのバージョンがあり、最新版は高解像度(1080p)に対応した「HDMI Ver.1.3a」。HDMIケーブルには、対応するバージョンが書かれていることが多い。通常ケーブルは別売りで、実売価格は長さ1mのもので3000-4000円程度だ。

 以前から大型のフラグシップモデルを中心に搭載されていたが、「リンク機能」が登場した昨年春あたりから一般化。同時に薄型テレビ以外のデジタル家電でも採用されるようになり、存在感が増してきた。

●20V型未満の小型液晶テレビを除いて搭載率はほぼ100%

 デジタル家電の代表格、液晶テレビ、プラズマテレビ、HDD-DVDレコーダー。「BCNランキング」の07年3月のデータでHDMI端子を1つ以上搭載した割合を「HDMI端子搭載率」として集計すると、いずれも7割を超えた。小型から大型まで、幅がある液晶テレビは82.2%とやや低いものの、大型が中心のプラズマテレビはすでに99.9%。HDMI端子の採用については常に液晶テレビをリードしており、100%に達する日も近そうだ。

 平均搭載数は、液晶テレビが1.39個、プラズマが2.06個で、やはりプラズマが勝っている。ただし、液晶テレビは画面サイズ別に集計すると、10-19V型が0.41個、20-29V型が1.19個、32V型が1.71個、37V型が1.89個、40-49V型が2.08個、50V型以上は2.57個で、40V型以上の大型モデルに限ればプラズマと同水準だった。

 HDD-DVDレコーダーは、アナログチューナーのみの低価格モデルを含めた全体での搭載率は75.5%にとどまるが、地上・BS・110度CSデジタルチューナーを搭載し、デジタル放送をハイビジョン録画できるモデルに限れば91.8%。年末商戦時の06年11月・12月には、100%目前の98%台も記録した。

 07年に入って、HDMI端子を省き、価格を抑えた東芝のデジタルチューナー内蔵モデル「RD-E160」の売れ行き好調を受け、その分だけ下がっているが、実質的にはほぼ100%の搭載率と見なしてよいだろう。販売店もテレビ側が対応していれば、HDMI端子での接続をすすめているそうだ。ハイビジョンのデジタル放送はもちろん、アナログ放送やDVDもキレイに表示されるという。


●液晶陣営、本格普及から1年足らずで「1個」から「2個」へ

 液晶テレビを例に取り、HDMI端子の急速な普及ぶりを検証してみよう。「BCNランキング」月次データによると、第1のターニングポイントは、2006 FIFAワールドカップ(W杯)商戦が始まった06年5月。HDMI端子搭載率が初めて5割を突破し、HDMI端子を1つ搭載したモデルが前月から16.7ポイントアップのシェア59.3%で、非搭載モデルの38.6%を大きく上回った。以後、HDMI端子の搭載率が急速に高まっていく。

 このように徐々にHDMI端子が標準装備されるようになると、次に問題になってくるのは、その「数」や「位置」、「リンク機能」の有無。数については、05年5月に「1個」が「0個(非搭載)」を初めて逆転。しかし、06年7月の69.9%をピークに全体に占める割合は減少に転じ、3番手で、06年5月の時点ではわずか2.1%に過ぎなかった「2個」が、07年3月にはシェア45.7%で最大勢力になった。06年9月以降、それまで「BCNランキング」のデータでは集計がなかった「3個」のシェアも伸びている。






 カラーバリエーションを合算した、07年4月第2週(07年4月9日-15日)の液晶テレビ販売台数シェアトップ10を見ると、1位のシャープ「LC-20D10」をはじめ、上位6位まではいずれもHDMI端子数は「2個」だった。20V型や26V型などの中型サイズでも、07年発売の新モデルだと2つ。本格普及からわずか10か月で1個から2個へ、全体的に底上げされたようだ。液晶テレビは、サイズ別販売台数シェアでトップの32V型の場合で、1年前に比べて3割ほど平均単価が下落。そのほか技術的な進歩や機能面の改良を加味すると、ここに来て値ごろ感がいっそう高まってきた。


●リビングの覇権をかけてHDMI端子の争奪戦が始まる?

 HDD-DVDレコーダー以外にも、デジタルビデオカメラ、家庭用ゲーム機、サラウンドシステム、ピュアオーディオ、DVDプレーヤー、プロジェクターなど、さまざまなジャンルの製品にHDMI端子が搭載されはじめている。さらに今年に入って、ソニーのリビング向けパソコン「テレビサイドPC」や富士通の「FMV-TEO」、アップルのメディアプレーヤー「Apple TV」のように、HDMI端子での接続を前面に押し出してアピールする製品が相次いで登場。テレビをネットワークにつなげ、リビングのマルチメディア端末として使う試みが活発化してきた。

 しかし、HDMI端子が1つしかないテレビの場合、複数の機器をつなげっぱなしにすることができない。切替器を使って対応機器を使い分けることも可能だが、せっかくのシンプルさが損なわれてしまう。

 HDMI端子を搭載したテレビが予想以上に普及したため、Blu-ray Disc(BD)に対応したソニーの次世代ゲーム機「PLAYSTATION 3」は、当初発表した仕様を変更し、上位モデル・下位モデルともにHDMI端子を標準装備した。今後こうした動きが他の分野にも波及し、対応機器が増えてくれば、テレビには2個・3個搭載は当たり前になってきそうだ。


 HDMI端子を装備し、動画表示性能を高めた液晶ディスプレイも何機種か発売されており、テレビとディスプレイの境目も曖昧になりつつある。ハイビジョンやBDなどの次世代DVDに対応し、高画質・高音質をウリにする製品では、今後ますます採用が進みそうだ。テレビを選ぶ際は、将来を見越してHDMI端子の数や位置を必ず確認しておこう。(WebBCNランキング編集部・嵯峨野芙美)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。