人気回復する中小型液晶テレビ、個室・2台目需要の拡大やデジタル化で

特集

2007/03/27 11:00

 20V型台以下の「中小型液晶テレビ」に勢いが戻ってきた。4月からの新生活需要に加え、大型の液晶テレビをすでに購入した人たちが個室用に2-3台目として購入するケースが増えているからだ。家電メーカーもデザインや画質に特徴のある新製品を年明けから続々と発売。こうした需要の取り込みを狙っている。そこで、人気が高まる中小型液晶テレビの動向や売れ筋機種について、「BCNランキング」でまとめた。

 20V型台以下の「中小型液晶テレビ」に勢いが戻ってきた。4月からの新生活需要に加え、大型の液晶テレビをすでに購入した人たちが個室用に2-3台目として購入するケースが増えているからだ。家電メーカーもデザインや画質に特徴のある新製品を年明けから続々と発売。こうした需要の取り込みを狙っている。そこで、人気が高まる中小型液晶テレビの動向や売れ筋機種について、「BCNランキング」でまとめた。



●売れ筋は依然30V型台だが、20V型台と40V型台で二極化傾向も

 まず、06年7月-07年2月の間に販売された液晶テレビを対象に、27V型以下を「中小型」として分類。さらに、売れ筋の32V型を含む30V型台、40V型以上の大型モデルについても販売台数シェアを比較した。


 中小型液晶テレビは、メーカー各社が年末商戦で40V型以上の機種に力を入れた影響で、去年の10月から年末にかけ急速にシェアが下落。それまで46%以上あったにもかかわらず、12月には37.5%まで落ち込んだ。しかし、年明け以降は一転、2月には43.2%までシェアを盛り返してきた。

 一方、30インチ台は下降傾向。12月の50.1%をピークに、2月には43.8%までシェアが落ち込んでいる。「年末商戦で大型の機種にメーカーが力を入れたことで、40インチ以上のクラスを求める人が増えた」(榎阪崇志・ビックカメラ有楽町店店長代理)一方で、中小型モデルの人気も戻り始め、その中間に位置する30V型台のシェアが奪われたためだ。

 40V型以上の機種は2月のシェアが12.9%と1割を超えるなど、拡大傾向が続いている。店頭では「これまでは30インチ台が中心だったが、このところ40インチ以上と26型以下の機種に二極化していきている」(同)という。

●デジタルチューナー搭載機種の拡大で、戻ってきた人気

 中小型の液晶テレビが伸びている理由は地上デジタル放送(地デジ)などを視聴できるデジタルチューナー搭載モデルの拡充にある。「BCNランキング」で、27V型以下の地上デジやBSデジタル、ワンセグを含めたデジタルチューナー搭載モデルの販売台数比率を見ると、06年夏の時点では70%台から07年2月には91.8%にまで拡大した。販売されている機種はほとんどがデジタルチューナーモデルとなっている。


 量販店の店頭でも「年末まではデジタルチューナー付きの機種が少ないため、買い控えもあった。しかし、デジタルチューナー搭載モデルが増え、販売も急速に伸びている」(同)ようだ。中小型液晶テレビの購入層は、新生活シーズンということもあり、一人暮らしを始める学生や社会人といった若い人たちが中心。加えて、30-40代のファミリー層が「大型の薄型テレビを持っていて2台目として購入したり、大型テレビを買う時に2、3台目として一緒に買い求めることが多い」(同)という。

 また、中小型液晶テレビはパソコン入力端子や次世代ゲーム機の映像を高画質で出力できるHDMI端子を搭載し、ディスプレイ代わりに使える機種も増えてきた。この点も中小型が売れている理由の1つといえそうだ。

●価格下落を抑える付加価値モデルを各社投入

 メーカー各社も特色のある新製品を相次いで発売し、品揃えを拡充している。
 デザインで勝負するのは、液晶テレビでトップシェアを走るシャープ。3月10日に発売した「AQUOS」の「Dシリーズ」は、本体カラーにブラック、ホワイト、レッドと3色のカラーバリエーションを用意。画面サイズは20、26、32V型をラインアップした。解像度が水平1366×垂直768画素の標準ハイビジョン(標準HD)で、視野角が上下左右176度の「ブラックASV液晶」を採用。20V型では「ASV液晶」を搭載する。


 一方、松下電器産業は高画質機能を前面に打ち出した機種を投入。液晶テレビ「VIERA(ビエラ)」で、動画表示性能やコントラストを向上させた「LX75シリーズ」、コントラスト向上機能搭載の「LX70シリーズ」を2月20日に発売した。


 「LX75シリーズ」は1秒あたり120コマと通常の2倍のコマ数で表示する「Wスピード」機能を搭載。動画の表示性能を向上させたほか、画面全体の映像情報を1画素単位で検知し、デジタル信号とバックライトの明るさを制御する機能「コントラストAI」を装備した。26、32V型をラインアップする。「LX70シリーズ」は「コントラストAI」を搭載し、20、23V型を揃えた。

 東芝も液晶テレビ「REGZA(レグザ)」で、2台目需要を狙った20V型「20C2000」を2月1日に発売した。映像信号を構成する数百万の画素を補正し、色の陰影、濃淡などを鮮やかに表示する映像処理回路を搭載。4×12cmの大型スピーカー2個とデジタルアンプで、ノイズを抑え、ダイナミックな音声を出力できるオーディオ機能などを備える。

 こうした中小型モデルにも高機能機種に力を入れている各社だが、その背景には、付加価値を提供することで価格下落をかわしたいという狙いもあるようだ。中小型液晶は量販店によるとサイズでは「20、26、15V型の順で人気が高い」(同)という。そこで、「BCNランキング」で15、20、26V型の税別平均単価で、価格の推移を見てみた。


 3機種の中で最も価格下落が進んでいるのが、26V型。06年7月には13万5000円前後だったが、07年2月には11万円前後と、値下がりが進んでいる。一番人気の20V型も、緩やかながら右肩下がりで7月から2月までに7000円程度下がっている。ほぼ底値圏にあったと思われる15V型は若干価格が上がったものの、中小型市場全体では下落傾向が続いている。メーカーでは付加価値で30インチ台のような急速な値崩れは避けたい考えだ。

●トップは8万円のソニーの20V型、シャープ、松下の新モデルの人気も高い

 それでは、直近3月第3週(3月12-18日)の「BCNランキング」で、27V型以下液晶テレビのみを対象にした売れ筋モデルを見ていこう。なおカラーバリエーションは合算して集計した。



 シェア17.5%でトップになったのはソニーの20V型「KDL-20S2500」。地上・BS・110度CSデジタルチューナーを内蔵。液晶パネルの画素数は水平1366×垂直768で、PC入力、HDMI端子を1基ずつ搭載する。実勢価格は7万9000円前後

 注目すべきは、シャープの「AQUOS Dシリーズ」。20V型で実勢価格9万5000円前後の「LC-20D10」が発売直後にもかかわらず、シェア10.7%で2位を獲得。また、26V型で実勢価格14万円前後の「LC-26D10」も4.5%で6位に入った。松下も新製品の「LX70シリーズ」で、20V型で実勢価格8万8000円前後の「TH-20LX70」がシェア4.4%で7位にランキングしており、新製品の人気は高いようだ。



●メーカー別では松下に勢い、シャープは「Dシリーズ」でシェア回復なるか

 次に、27V型以下の液晶テレビのみを対象にしたメーカー別の販売台数シェアも見ていこう。トップは44%でシャープ。しかし同社は年末商戦で40V型以上のモデルに注力したこともあり、06年10月の51.1%をピークにシェアは下降傾向。今後は滑り出しが好調な「Dシリーズ」が、シェア回復にどう結びつくかが注目だ。


 2位は21%でソニー。06年7月から20%前後のシェアを常に確保している。ソニーも06年の年末商戦で40V型以上の大型モデルへのシフトを打ち出しており、ソニーの中小型モデルのメインは普及機の「Sシリーズ」のみ。そのため、競合メーカーが新製品を出してきたことで、今後は苦戦も予想される。

 市場で今一番勢いのあるのが3位の松下。06年12月以降にシェアを伸ばし、2月には20.8%を獲得。2位のソニーに0.2ポイント差に迫るまで販売台数を拡大した。また、2月に発売した「LX75/70シリーズ」の人気の高さもシェアを押し上げたと見られる。

●パソコン機能付きテレビとテレビ機能付きパソコンの競争が本格化か

 家電メーカーが、個人利用をメインターゲットとする中小型液晶テレビを拡充してきたことで、注目されるのがテレビ機能付きパソコンとの主導権争い。個室にテレビとパソコンの両方を置くのはなかなか難しい。結局ユーザーは、パソコンも使える薄型テレビか、テレビも視聴できるパソコンのどちらかを選ぶことになる。

 この点で積極的に動いているのはシャープ。「Dシリーズ」を単体で販売するだけではなく、パソコン機能付き液晶テレビ「インターネットAQUOS(アクオス)」の新モデルのテレビ部でも採用。販売拡大に向け余念がない。一方、NECや富士通は、地上デジタル放送のチューナーを搭載したデスクトップやノートパソコンの機種を拡大。テレビ機能を強化しユーザーの獲得を図っている。

 はたして、個室を巡るテレビとパソコンの陣取り合戦はどちらに軍配が上がるのか? つばぜり合いはしばらく続きそうだ。(WebBCNランキング編集部・米山淳)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など21社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。