松下、「コンセントでネット接続」を実用化、PLCアダプター12月9日に発売

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2006/11/13 18:39

 松下電器産業は11月13日、家庭内の電力線を通信ネットワークとして利用するPLC(電力線通信)アダプターを12月9日に発売すると発表した。PLCの実用化は国内初。2010年に1000万台の販売を目指す。

 松下電器産業は11月13日、家庭内の電力線を通信ネットワークとして利用するPLC(電力線通信)アダプターを12月9日に発売すると発表した。PLCの実用化は国内初。2010年に1000万台の販売を目指す。


 発売するのは、PLCアダプターの親機と子機のセット「BL-PA100KT」と増設用アダプター「BL-PA100」。価格はともにオープン。実勢価格は「BL-PA100KT」が2万円前後、「BL-PA100」は1万3000円前後の見込み。

 PLCは家庭内の電力配線(電灯線)をLANケーブル代わりにして利用する通信形態。松下のアダプターは、親機と子機を電源コンセントに差し込むだけで、家庭内の電力配線をネットワークとして利用可能になる。パソコンに保存した映像を別の部屋にあるテレビに出力するといった使い方ができる。



 あらかじめ親機・子機間の通信や暗号化設定をしたうえで販売するため、無線LANシステムのように、PCなどから改めて設定する必要がない。アダプターはLAN端子を備え、PCをはじめ、ネットワーク対応の薄型テレビやプリンターなどの機器をつなぐこともできる。


 インターネットの利用には別途ブロードバンド回線が必要。親機をADSLや光ファイバーのモデムと接続することでPLCのネットワークからネットにアクセスできるようになる。子機は15台まで増設可能で、親機と子機との接続はそれぞれの設定ボタンを同時に押すだけで完了する。

 通信方式には「HD-PLC」と呼ぶ松下が開発した独自技術を採用。通信速度は理論値で最大190Mbps(メガビット/毎秒)、スループット(実効転送速度)は80Mbps。

 変調方式にも独自技術「Wavelet OFDM」を使っており、周波数を細かく分けて通信信号を制御することで、ノイズと抑えると同時に、アマチュア無線や短波放送などと干渉を回避する。

 親機と子機間の通信には米国政府の次世代標準暗号化方式「AES128bit」を採用し、高いセキュリティも確保。アダプターの製造は固定通信機器を手がけるグループのパナソニックコミュニケーションズが行う。

 発表会で藤吉一義・パナソニックコミュニケーションズ社長は「PCなしで簡単に接続でき、高度なセキュリティを持つPLCはホームネットワークインフラの本命。我々は『HD-PLC』を(PLCの)デファクトスタンダードにしたい」と意気込みを語った。

 松下ではPLCアダプターを家電量販店などで販売するほか、NTT東西地域会社やKDDIといった固定通信会社にもOEM(相手先ブランドによる生産)供給し、ブロードバンド回線と一緒に販売してもらうことことで「PLCの普及を加速し、2010年には市場シェアの50%、200億円の売り上げを取る」(藤吉社長)狙い。

 同時に機器組み込み用のPLCモジュールのサンプルを12月1日から出荷を開始することも発表した。サンプル価格は未定。出荷当初は、モデムやルーターを手がける通信機器メーカーに販売するほか、グループ企業への提供も行う。


 すでに松下電工がモジュールを使った電源タップ型のPLCアダプターを開発。07年3月には発売する見通し。今後は松下製の固定電話やファクスといった通信機器のほか、将来的には薄型テレビやHDD-DVDレコーダーなどへの搭載も想定している。