仙台電波高専はプロコン強豪校のひとつである。7年前の第10回大会競技部門で優勝したのをはじめ、一昨年の第15回大会では課題部門で審査員特別賞(3位)を獲得している。最近ではメンバー不足からクラブ活動が弱体化したこともあって、アルゴリズムの基礎授業を担当する指導教員の佐藤貴之助手(情報工学科)がクラスの有志に呼びかけて、プロコンに出場したいというメンバーを募りチームを構成している。

少数精鋭のチーム構成で
強豪校としての伝統を継承


 仙台電波高専はプロコン強豪校のひとつである。7年前の第10回大会競技部門で優勝したのをはじめ、一昨年の第15回大会では課題部門で審査員特別賞(3位)を獲得している。最近ではメンバー不足からクラブ活動が弱体化したこともあって、アルゴリズムの基礎授業を担当する指導教員の佐藤貴之助手(情報工学科)がクラスの有志に呼びかけて、プロコンに出場したいというメンバーを募りチームを構成している。(佐々木潔●取材/文)

●持てる力を100%発揮してプロコン本選を戦い抜け

 今回の課題部門チームのリーダー格である情報工学科4年生の瀬戸敏文さんは、「(佐藤)貴之先生に誘われるのを待っていました。もし声がかからなかったら、ロボコンのチームに名乗りをあげるつもりでした」と、メンバー入りを喜ぶ。「自分も挑戦してみたいと密かに考えていました」という芳賀将至さん(同)は、取材に訪れた9月8日には、研究室に泊まり込んで2週間になるといって苦笑した。メンバーはほかに仁科裕一郎さん、若山靖宏さん、小林正弥さんの総勢5名。全員が4年生で若山さんだけが電子制御工学科に所属する。

 クラブ活動として取り組まないと、先輩たちの経験や知恵を後の世代に継承できない。上位に名を連ねる強豪校とそうでない学校との差は、そうしたところに現れがちだが、仙台電波の面々は意気盛んでハンディを感じさせない。

 ひとつには、一昨年の上位入賞時のメンバーが研究室に残っていることや、佐藤先生の指導方針が支えとなっているからだ。佐藤先生はプロコンをめぐる学内交渉や調整、プロジェクト進行中のトラブル回避などを自分の役割とする一方で、学生に負荷を与えることも必要だと、考えを述べる。

 「斜に構えて7─8割の力でやろうというのなら、プロコンに出場する意味はない。ベストを尽くしたうえでどう評価されるかがすべてだと、これだけはハッキリ伝えます」というから、先生を兄貴分として慕っている学生たちも手は抜けない。トラブル回避というのは、直前になって慌てないようにマイルストーン(里程標)を前倒し気味に設定していくことと、プロジェクトに関する難関技術のチェックや情報提供で、もちろんシステム自体には絶対に手を出さない。

 取材当日も夏休み中だというのに佐藤研究室には足の踏み場もないほど学生が溢れ、先生も狭い部屋の片隅に置かれた机の前で、カップ麺を片手に学生たちのやりとりに耳を傾けていた。

●絵をスキャナで取り込み、アニメにして遊ばせよう

 課題部門の作品名は「かっぱ」という。Kids Art Polygon Pleasantness Animationの頭文字からとったもので、紙に描かせた子供の絵をスキャナでPCに取り込み、これを2Dあるいは3Dで表示した上で動くようにアニメ化し、その絵に合った音(動物なら鳴き声、乗り物ならそれぞれの駆動音やクラクション)を出して遊ばせようというものだ。この絵は壁紙としての設定や、ファイルとしての保存・印刷もできる。

 「かっぱ」が想定した子供の年齢は3歳から12歳まで。小学生はともかく、幼稚園児までをターゲットに含めた関係で、システムの最大の難関は幼児にもわかりやすいインターフェースをつくることだった。芳賀さんが研究室に泊まり込んでいたのも、このインターフェースについての試行錯誤を繰り返していたからだ。でき上がった作品はキーボードからの誤入力や不正入力をあらかじめ避けるために、マウスだけで操作するようになっており、入力画面も押し間違いがないようにひらがなを使った大きなボタンで構成されていた。

 校長談話でも紹介したように、仙台電波は今年からセメスター制度を採用したため、前期の期末試験は8月上旬には終了してしまう。他校と異なり夏休みは8月14日から9月29日まで。したがって、取材日の9月8日は夏休みの真っ最中で、この日から3日間の予定で各自が分担して作り上げたパーツをひとつのシステムに統合するための合宿初日であった。

 10月7─8日に開かれたプロコン本選では瀬戸さんの堂々とした発表に好感を抱いた審査員も多く、子供が描いた絵をページをめくるように即座に方向転換させる仕組みの面白さに歓声が上がったが、今大会はほかにも「お絵描き」を取り上げた作品が多く、それらのなかから頭一つ飛び出すには至らず、敢闘賞にとどまった。

 メンバーの中では瀬戸さん、芳賀さん、仁科さん、若山さんがプログラマとしての将来を希望し、小林さんはモノづくりよりは文章表現で世に出たいという志を抱いている。そういえば、同校の前身であった国立仙台電波高校のOBには、当時最年少で芥川賞を受賞して話題になった孤高の作家・丸山健二(長野県在住)がいるではないか。自由な校風でユニークな人材を輩出し続ける伝統を生かし、未来を切り開いてほしいものだ。

●自由な校風のもとでのびのびと戦う 宮城光信校長

 仙台電波高専は、改革の労をいとわない自由で清新な校風を特徴としている。国立仙台電波高校から高等専門学校に改組(1971年)されてわずか4年後の75年には、他校に先駆けてシラバス(教育活動に関する詳細な計画書)を公開し、70年代後半からは企業から教員を招請してスパイラル教育を開始した。

 今年からは8月上旬までに前期課程を修了させて9月いっぱいを夏季休暇に当てるセメスター制度も導入した。

 さらに、来年度からは高専として例のない「総合コース」の設置を打ち出している。情報通信工学科、電子工学科、電子制御工学科、情報工学科という4学科(本科)は学科構成や教育内容、進路が近接していることから、入学試験の段階で学科選択に迷う受験生が多い。このため、学科を決めかねている受験生を「総合コース」に受け入れ、入学後1年間かけて「創造科学」等の専門科目の学習を通して各学科の特徴についての知識を与え、1年生から2年生に進級する際に自分にふさわしいと思われる学科を決定するシステムを導入するというのである。

 もちろん、実践的教育の一環としてプロコンの意義は高く評価している。これに取り組む学生たちがのびのびと振る舞い、きちんとした自己主張を持っている点を宮城光信校長は誇らしく感じているようだ。

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今年1月27日に開催されたBCN AWARD 2006/
ITジュニア賞2006表彰式の模様


※本記事「<技術立国の夢を担う ITジュニアの群像 高専プロコンへの道>第23回 仙台電波高等専門学校は、週刊BCN 2006年11月6日発行 vol.1161に掲載した記事を転載したものです。