日立マクセル、デジタル音楽の高音質技術を開発、九州工業大学と共同で

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2006/08/31 21:31

 日立マクセル(角田義人社長)は8月31日、九州工業大学と産学一体の共同研究の成果として、デジタル音楽の高音質技術「Bit-Revolution(ビット・レボリューション)テクノロジー」を開発したと発表した。

 日立マクセル(角田義人社長)は8月31日、九州工業大学と産学一体の共同研究の成果として、デジタル音楽の高音質技術「Bit-Revolution(ビット・レボリューション)テクノロジー」を開発したと発表した。

 同社は今回の高音質の技術を採用したヘッドホンなどの音響機器製品市場に参入し、新シリーズ「VRAISON(ヴレソン)」を展開していく。「VRAISON」はフランス語の「VRAI(本物の)」+「SON(音)」を合わせた造語。「VRAISON」シリーズ第1弾のPC用高音質化システムヘッドホンは11月の発売を予定している。

 「Bit-Revolutionテクノロジー」は、05年からマクセルと九州工業大学 ヒューマンライフIT開発センターの佐藤寧教授が共同開発したもので、人間工学に基づく音響理論を具現化した技術。圧縮などで帯域が狭まったデジタル音楽をSACDに迫る音質に向上させる。都内で開催された発表会で佐藤寧教授は「高域補間やビット拡張技術といった高音質技術と聴覚特性適応技術といった人に優しい技術とを両立したのが特徴」と語った。

 具体的には、高域周波数の補間・スムージング処理などを行うことによって、周波数とダイナミックレンジを44kHz/120dBまで拡大し、原音の信号波形に近い音をシミュレートする。響き・臨場感・雰囲気などが加わった「より自然な心地良い音」が再現できる。また、ユーザー個人の可聴範囲に合わせた聴覚感度補正など独自技術により、それぞれのユーザーに合った音質で再生することも可能。



 CDのフォーマットでは記録される周波数とダイナミックレンジの上限は22kHz/96dBまで、MP3などの圧縮フォーマットでは16kHz/96dBまでに制限され、自然音に含まれる高域音がカットされている。しかし、カットされてしまった高音部分や微小音は響き・臨場感・雰囲気などを演出する大切な要素とされている。

 今回の研究開発の背景について、グローバル営業統轄本部の松岡建志マーケティング部長は、「インターフェイス技術で、デジタル信号を高音質化することで、現在のインフラを活かし機器を選ばずに一人一人に合わせたアナログ信号に変換することが可能。これまでさまざまなメディアを提供してきたが、人に優しい製品でさらに総合的にサポートしていきたい」と述べた。

 今後は、高音質化技術を採用したヘッドホン、スピーカーなどを順次展開。市場参入にあたってのポイントとして、高音質化技術の導入による本物の音で差別化、ユーザー個人に合わせた聴覚感度補正、ノイズキャンセル、Bluetoothとを組み合わた高性能ヘッドホンの開発、を挙げた。「マクセルのブランドパワーを活かし、中、高級ユーザーへの認知、訴求を図る」(営業統轄本部・三島明夫ブランド・ビジネス開発推進本部長)考え。

 06年年末商戦に向けて、第1弾としてPC用高音質化システムヘッドホンを11月に発売する。USBで接続するコントローラー部と各種ヘッドホンの構成で、「価格帯は2-3万円程度を想定している」(三島本部長)。「Bit-Revolution」採用による44kHz再生、24bit、96kHzサンプリングのほか、聴覚感度補正イコライザ、サラウンド機能を標準で搭載したのが特徴。Mac用は07年春の発売を予定している。なお、詳細は9月下旬に発表する。

 さらに、07年春には、ノイズキャンセルやワイヤレス機能を搭載したAV用、携帯電話用ヘッドホンやスピーカーシステムを順次発売していく。海外展開は07年度から開始する。売上は07年度に国内で20億円を目指す。