デジタル家電、サッカーで息切れ、PCには底打ち感も、夏のボーナス商戦

特集

2006/08/09 23:04

 夏のボーナス商戦は、世界的スポーツイベントの「ワールドカップ」(W杯)が大きく影響した――。BCN(奥田喜久男社長)は8月9日、パソコンやデジタル家電などの「夏ボーナス商戦」を「BCNランキング」のデータで振り返ったレポートを発表した。W杯開催による需要の前倒しが起こり、AV機器はボーナス商戦本番の7月を前に息切れしてしまったようだ。

 夏のボーナス商戦は、世界的スポーツイベントの「ワールドカップ」(W杯)が大きく影響した――。BCN(奥田喜久男社長)は8月9日、パソコンやデジタル家電などの「夏ボーナス商戦」を「BCNランキング」のデータで振り返ったレポートを発表した。W杯開催による需要の前倒しが起こり、AV機器はボーナス商戦本番の7月を前に息切れしてしまったようだ。

●7月に入り「息切れ」を起こしてしまった薄型テレビ

 夏ボーナス商戦期の5-7月は、薄型テレビを中心にデジタル家電は好調な売り上げを記録したことが「BCNランキング」の集計でわかった。しかし、対前年の伸び率がもっとも高かったのはW杯需要がピークを迎えた6月。逆にボーナス商戦の最盛期となるはずの7月に入ってからは、対前年伸び率の大幅な低下が生じるなど「息切れ」が目立った。

 特に「息切れ」が激しかったのは薄型テレビだ。液晶テレビ、プラズマ、リアプロジェクションテレビを含むこのカテゴリーではW杯絶頂の6月に販売ベースで伸び率(前年同月比)143.1%、金額ベースで同150.1%と高い伸びを示した。中でも37-40型の大画面テレビが好調で、液晶テレビではシャープ、プラズマでは松下と大画面化に積極的に力を入れているメーカーがシェアを伸ばした。なお、同月の液晶テレビの販売ベースで同141.0%、プラズマは同170.6%となった。

 ところがW杯の熱が冷めた7月、台数ベースは同131.4%、金額ベースは同127.2%まで伸び率は低下。今年に入ってもっとも低い伸び率になった。特に金額ベースで影響が大きく、年末商戦用の新モデル投入までに、金額の伸び率が120%を切る可能性もありそうだ。


●地上デジタル対応製品の販売台数が伸びたHDD-DVDレコーダー

 薄型テレビと同様、W杯の恩恵をこうむったHDD-DVDレコーダーは、地上デジタル放送対応製品や、ハイビジョン対応製品など高額製品の販売台数を伸ばし、金額ベースでは前年比でプラスに転じた。

 4月までは台数・金額とも前年割れのまま推移してきたが、W杯熱が盛り上がり始めた5月から台数・金額とも前年実績を超え、6月には台数ベースで同110.2%、金額ベースで同121.4%と2いずれもケタの伸びを見せた。特に5-6月での金額ベースの伸びは著しく、比較的高額な地上デジタル対応製品の販売台数が伸びたため。伸び率は5月に978.2%、6月には830.1%に達したのが理由だと思われる。

 この好調を維持するかとも思われたが、W杯終了後の7月には台数ベースで同78.5%、金額ベースで82.0%と、一気に前年割れ水準に逆戻り。W杯が始まる4月よりも伸び率が低く、W杯需要の反動が予想以上に大きい。需要を先食いしてしまったことも考えられ、年末商戦まで前年比2ケタ割れの状態が続くことも懸念される。


●一眼レフタイプが健闘、7月には久々に上昇したデジカメ市場

 需要が一巡し、前年割れ基調で推移するデジタルカメラ市場だが、一眼レフタイプが健闘し、伸び率90%以上のところでなんとか持ちこたえている状況。特にソニー、松下が一眼レフタイプを投入した7月は、デジタルカメラ市場全体の台数ベースで同98.2%、金額ベースで同96.8%と久々に上向きのカーブを描いた。両社の新製品の発売はいずれも7月下旬であったことから、8月の伸びも期待できそうだ。

 一眼レフタイプの健闘については、これまでハイエンドアマチュアが中心だったが、最近は女性や初心者など購入客層が広がってきているように見受けられる。さらに、1000万画素超のコンパクトタイプが発売されるなど高画素化競争の再燃も考えられる。しかし、勢いがあるのは一眼レフ。金額・台数共に、しばらくの間一定の伸びが期待できそうだ。

●スポーツイベントの影響でマイナス成長を続けるPC市場

 05年3月から06年1月まで前年を上回る成長を続けてきたPC市場だが、06年2月に台数ベースで同90.7%と大きな落ち込みを記録して以来、2ケタの大幅なマイナス成長で推移している。



 まず06年2月はトリノ冬季オリンピックの影響もあり、薄型テレビなどに需要を奪われた。さらに夏ボーナス商戦でもW杯で、2月と同じく薄型テレビに需要を奪われ、5月の台数ベースでは同82.5%、6月では同82.6%と深刻な状況に追い込まれてしまった。

 さらに、W杯だけではなく、昨年6月が前年比108%と好調だったことの反動もありそうだ。そして、マイクロソフトの新OS Vistaの発売延期による買い控えも響いているものと思われる。

 不振続きのPC市場だが、ノートPCでは回復の兆しが見え始めた。台数ベースの伸び率が88.0%だった5月から、徐々に回復し、6月には同92.1%、7月には91.6%と谷から抜け出しつつあるようだ。またデスクトップPCの台数ベースも6月の68.6%から7月には72.0%に上昇。底打ち感は強い。この秋口から緩やかな回復が始まると見込まれるが、昨年末の伸びを超えられるかどうかは微妙なところだ。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など22社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。