主役はminiSDへ、携帯電話需要を追い風にシェア7割に迫るSD系メモリカード

特集

2006/07/05 00:10

 今やメモリカードは、デジタルカメラをはじめ、デジタルビデオカメラ携帯電話、PDA、携帯オーディオなど、さまざまな機器で不可欠な存在となった。そのなかで最も多く利用されているのは「SDメモリカード」に代表される「SD系」。販売枚数シェアは過半数を超え、ここにきてさらに7割近くまで勢力を拡大してきた。その原動力は携帯電話で多く使われる「miniSDカード」だ。「BCNランキング」からSD系を中心とするメモリカードの動向を探った。

 今やメモリカードは、デジタルカメラをはじめ、デジタルビデオカメラ携帯電話、PDA、携帯オーディオなど、さまざまな機器で不可欠な存在となった。そのなかで最も多く利用されているのは「SDメモリカード」に代表される「SD系」。販売枚数シェアは過半数を超え、ここにきてさらに7割近くまで勢力を拡大してきた。その原動力は携帯電話で多く使われる「miniSDカード」だ。「BCNランキング」からSD系を中心とするメモリカードの動向を探った。

●すでにSD系の4割が「miniSD」、ランキング1位も128MBのminiSD

 「BCNランキング」06年5月のデータでメモリカードの規格別販売枚数シェアを見ると、SDメモリカード(SDカード)、miniSDメモリカード(miniSD)、microSDメモリカード(microSD)を合算した「SD系」が69.1%でダントツ。以前からSD系のシェアは高かったが、この1年で約10ポイントもシェアを押し上げてきた。


 その内訳では、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなど、比較的サイズの大きな製品で用いられる「SDカード」が57.6%。一方、主に携帯電話や携帯オーディオなどで使われる「miniSD」が42.2%で、「miniSD」のシェアが意外に高いことがわかる。


 さらに、SD系のなかで最も売れているのは、松下電器産業のminiSD「RP-SS128BJ1K」で販売枚数シェア5.7%。2位と3位は同じく松下のSDメモリカードで、5位は再び松下のminiSDというランキング。1位の「RP-SS128BJ1K」は容量128MBのminiSDで、メモリースティックやコンパクトフラッシュなどを含めたメモリカード全体でも、半年以上連続して1位をキープするトップセラーだ。全体の販売枚数では依然「SDカード」が過半数を超えているものの、実質的に主役は「miniSD」にシフトしつつあるといえそうだ。


●携帯電話での需要が追い風に

 「miniSD」の台頭の中身を詳しく見てみよう。03年9月の「SDカード」と「miniSDカード」の販売枚数を1として伸び率を比較してみた。「SDカード」はほぼ同水準で推移しているのに対し、「miniSDカード」は、05年に入って急激に伸びている。なかでも05年末以降の伸びは著しい。理由は携帯電話だ。


 「miniSDカード」の利用機器で最も多いと思われるのが携帯電話。ここ1年でも、音楽再生機能を搭載したモデルや、携帯・移動体向け地上デジタル放送「ワンセグ」を視聴・録画できるモデルなど、新しい機能を持つ端末が続々と発売された。こうした新機能を存分に活用するには、データ保存用のメモリカードが欠かせない。こうした状況が「miniSD」の躍進を支えているようだ。

 04年ごろまでは、デジタルカメラの「SDカード」採用率が急速に伸びていた。これが、SDカードの伸びを支えてきたと考えられる。しかしそれ以降はほぼ6割程度で一定。さらにデジタルカメラ自体も、一眼レフは伸びているものの、市場の大部分を占めるコンパクトタイプは頭打ちの状況。メモリカードのユーザー市場として考えた場合も、今後大きな拡大は見込めない。こうした状況でも、「SD系」メモリカードは04年以降も伸びている。これは「miniSD」で携帯市場を獲得したからに他ならない。


 また「miniSD」よりさらに小さい、「microSD」を採用する携帯電話もちらほら登場し始めた。今のところシェアはわずかだが、対応端末の動向次第によってはシェアが急拡大することも考えられる。

 その他、SD系の動向を見てみよう。容量別では、「SDカード」で最も多いのが256MBで33.6%。512MBが31.1%、1GBが16.7%で続く。全体では1G以上の大容量タイプが2割弱を占めた。「miniSDカード」では、128MBが36.7%でもっとも多く、続いて256MBが26.0%、64MBが14.8%を占める。


 また、容量別の上位3タイプの税抜きの平均単価の推移を見ると、SDカードは、どのタイプも05年6月からの1年間で35%程度の値下がり。一方「miniSDカード」は容量によって下落率が異なり、64MBは1割弱とほぼ下げ止まっているが、256MBでは3割弱と、大幅に値下がりしている。



●一風代わった個性派に、大容量の新規格…広がる「SD」の世界

 メモリカードは、規格と容量、価格、転送速度、著作権保護機能の有無くらいしか選びどころがなく、買い物としていは面白みに欠ける。そんななか、デザインや色、おまけなどちょっと他と違った「個性」で勝負する製品も登場してきた。


 たとえばエレコムは、用途によって使い分けられるよう「SDカード」と「miniSD」を4色のカラーバリエーションで展開。エバーグリーンはお守りのデザインを施した「SDカード」など、見た目のおもしろさをプラスした製品を販売している。またバッファローは、着信メロディが3曲ダウンロードできる「おまけ」で他社との差別化を図った。さらに異色の製品としては、ハギワラシスコムの、Vodafone live! BB対応のビデオクリップ入りの「miniSDメモリカード」といったものも。どうせ同じような価格で買うのなら、ちょっとしたおまけがついたメモリカードを選んでみるのも楽しい。

 一方、SDメモリカードの新規格も7月に登場する。大容量・高速転送を特徴とする「SDHCメモリカード」だ。まずは松下が7月に、東芝が9月に4GBのSDHCメモリカードを発売すると発表している。市場のニーズに対応した新規格を続々と打ち出せる幅の広さも、「SD」の強さの一つだろう。松下では、7月にSDHC対応のデジタルビデオカメラも発売する。


 「SDHC」は、従来のSDカードと形や大きさは同じだが、最大32GBまでの大容量化が可能。SDの上位規格「SDメモリカード規格Ver2.00」に準拠した新しいカードだ。ただ、この「SDHC」は、ファイルシステムや対応物理規格のバージョンが異なるため、SDHC対応の製品以外では使用できない。SDHC対応の製品で従来のSDカードを使うことはできるものの、大容量化と引き換えに、互換性の高さがウリだった「SD」の利点を失ってしまったのは残念だ。

 デジタルカメラに加え携帯電話のフィールドもがっちりつかんだSD陣営。今やメモリカードの大本命のポジションを得た。さらに進む大容量化やコンテンツ保護の動向など流動的な部分はあるものの、SD系の天下はしばらく続きそうだ。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・約2200の店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。