今、「しゃべる辞書」がホットだ。大学入試センター試験に、英語のリスニングが導入されたこともきっかけとなり、電子辞書メーカー各社は音声機能に力を入れている。3月の「BCNランキング」では、音声機能搭載モデルが全体の50.6%と初めて5割を突破した。そこで「音声機能」をキーワードに、電子辞書の最新トレンドを探ってみた。

 今、「しゃべる辞書」がホットだ。大学入試センター試験に、英語のリスニングが導入されたこともきっかけとなり、電子辞書メーカー各社は音声機能に力を入れている。3月の「BCNランキング」では、音声機能搭載モデルが全体の50.6%と初めて5割を突破した。そこで「音声機能」をキーワードに、電子辞書の最新トレンドを探ってみた。

●既に音声機能つき電子辞書が主流

 音声機能を搭載した「しゃべる」電子辞書が初めて製品化されたのは、今から10年前の1996年こと。しかし、当時は音が悪いうえ収録語数にも限りがあって実用レベルには程遠いものだった。その後、ハードの進化は進んだものの、ほとんどのエネルギーは収録コンテンツ数の拡大に費やされてきた。しかし徐々に「入れられるコンテンツはほとんどすべて入っている」飽和状態となり、数の競争は一段落。次なる進化の形として登場し始めたのが音声機能、というわけだ。

 音声機能には、実際に発音した声を収録し再生する「ネイティブ発音」とコンピュータに発音させる「合成音声」の2種類がある。「ネイティブ発音」は実際の音を収録・再生するため大きなメモリが必要となるが、メモリ価格の下落と技術の進展で、最近では実用に耐えるだけの音声データ数を収録できるようになってきた。これが新しい音声機能の流れをつくったともいえる。そのため現在はほとんどが「ネイティブ発音」。一部「合成音声」を部分的に採用している機種もあるが、「ネイティブ発音」に比べ音は劣るものの、これも実用になるレベルには達しているようだ。

●首位を獲得したのは音声対応の高校生向けモデル

 電子辞書選びでは、まず電子辞書で「何」をしたいかを決めておくことが大切。そのうえでどんなコンテンツが収録されているかをチェックする。どれも同じような形なので、一見して区別がつきにくい。しかし、メーカー各社や販売店は、直感的に目安がつけられるよう工夫しており、パンフレットや店頭POPなどで、「英語重視」「第2外国語」「生活・総合」「コンパクト」といった独自のカテゴリ分けをしている場合もある。これらを参考にしたい。それから「音声機能」が必要かどうかもポイント。もちろん、実際に売れている機種もチェックしておきたい。人気の機種にはそれなりの理由があるものだ。

 では具体的に、「BCNランキング」3月の月次データで売れ筋を見ていこう。同じ機種でも色違いのモデルを用意している場合もあるが、今回はこうしたカラーバリエーションは合算して集計した。



 販売台数シェアで1位を獲得したのは、カシオの高校生向けモデル「XD-ST4800」だった。2位には同じくカシオの「XD-ST6200」が続く。3位はシャープの「PW-A8400」。以下6位までがシャープ製品で占めた。7位と8位は再びカシオ。同率8位でキヤノンの「wordtank」シリーズ2機種もランクインした。5位以下はほとんどシェアに差がなく、さまざまなモデルがひしめきあう混戦状態だ。

 1位の「XD-ST4800」は、受験勉強に役立つ50種類の辞書を収録し、ネイティブ発音のコンテンツを多く取り揃えた高校生向けモデル。「センター試験 英語リスニング・トレーニング」という実践型コンテンツも用意されており、受験対策用にはピッタリだ。

●カシオ人気、隠れた理由は?

 他社からも、同様のトレーニングテストを収録した高校生向けモデルが発売されているなか、「XD-ST4800」がトップの座についたのはなぜか。好調の理由を「高校生の間で、口コミで評判が広まっているからではないか」と分析するのは、カシオで電子辞書に一番詳しいという、コンシューマ統轄部 事業企画室の堀清司氏。「以前、学生の使用実態を調査したところ、机から電子辞書を落として壊したり、通学の電車で押されたりと、かなり過酷な条件で使っていることわかった。そこで本体の堅牢性を高めたところ、高校生の間で『カシオは壊れない』というのが定評になっているようだ」と隠れた人気の秘密も明かしてくれた。

 一方、2位の「XD-ST6200」は、定番の英語系辞書や広辞苑などをはじめ、旅行会話など、計100コンテンツを収録した大人向けモデル。ネイティブ発音のコンテンツは、ジーニアス英和辞典など3種類のみだが、独自の6言語音声読み上げ機能も搭載しており、海外旅行などでも役立つ。カラーバリエーションは、シルバー、ブラック、レッドの3色で、一番人気はシルバー。

 カシオは04年春モデルから、ネイティブによる肉声をMP3形式で収録し再生する機能を採用。現在の音声モデル拡大に先鞭をつけた。さらに、05年春に音声機能を搭載した高校生向けモデルが好調だったことから、今年の春モデルでは、大人向けのものを含めほぼすべての機種に拡大。新たに発売する18機種中、16機種に音声機能を搭載した。

 同社のこの戦略で、電子辞書全体での音声対応率が一気に増大。1年前の05年3月では、わずか26.8%しかなかった音声機能搭載モデルの割合は、2月の36.6%から一気に50.6%にアップした。競合他社も今年に入って音声機能を搭載したモデルを発売し始めており、ランキング上位10機種中、音声機能を搭載したモデルは6機種と過半数を超えている。



●「音声」非対応でも人気のモデルも 独自コンテンツやサイズの魅力で

 音声非対応モデルでは、シャープの100コンテンツ収録の「PW-A8400」がトップ。発売が05年8月とやや古いものの全体でも3位につけており、根強い人気を物語っている。コンテンツ収録数は「XD-ST6200」と同じだが、「脳を鍛える大人の計算ドリル」など、書籍や携帯ゲーム機などでも人気の独自のコンテンツを多く収録したのが特徴。本格的な語学学習より、教養を高めるために電子辞書を使いたい人にも楽しめる。

 シャープも音声機能を搭載したモデルを発売しているが、ランキング上位には4位の「PW-M800」、8位の「PW-M100」のように、収録コンテンツや機能を絞った「コンパクト」タイプが目立つ。

 「PW-M100」は、実売1万円を切る価格ながら、ヨーロッパ5か国語の旅行会話を含め、15コンテンツを収録。サイズも小さく、ちょっとした調べものや趣味の海外旅行程度なら十分間に合う。単4電池1本で約400時間連続表示できるバッテリーの持ちも魅力。試しにイマドキの電子辞書を使ってみるのにも良いかもしれない。

●電子辞書は「ハード」の違いで勝負

 この春、カシオがほぼすべてのモデルに音声機能を搭載した理由について、「収録コンテンツは、出版社などから提供を受けるためメーカーの独自色を出すことは難しい。結局『数』の違いでしか差をつけられない。むしろ、液晶画面の見やすさなど、ハード面が重要だと考えている。音声機能は、技術が成熟し実用性が増したことに加え、昨年度から大学入試センター試験で英語リスニングテストが必須となり、ユーザーの要望も高まった」(堀氏)という側面があるようだ。

 音声機能は、後から追加できる機能ではないため、とりあえず対応モデルを選んでおけば安心だ。受験勉強に限らず、最近の英語学習全般の傾向で考えると、「使える英語」として「リスニング」や「会話」がより重視されるようになってきた。電子辞書の「音声化」は必然の流れなのかもしれない。音声機能搭載モデルがさらに増えていくのか、あるいは「エンターテイメント系」のモデルが伸びていくのか、はたまたサイズや価格重視の廉価モデルなどとの住み分けが進むのか……。電子辞書の進化の可能性はまだまだ広がっている。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・約 2200の店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。