ソフトバンク(孫正義社長)は3月17日、ボーダフォン・グループPLC(ボーダフォンPLC)とボーダフォン日本法人の買収で合意したと発表した。買収額は1兆7500億円で、日本企業によるM&A(企業の合併・買収)では過去最大規模となる。

 ソフトバンクグループは、日本テレコムなどの固定通信・固定ブロードバンドや「Yahoo! JAPAN」を中心とするコンテンツサービスを提供しており、ボーダフォンの1500万人以上の顧客を一気に取り込み、グループで回線数が2600万回線、売上高2.5兆円となることで、「総合デジタル情報通信サービス会社」(孫正義・ソフトバンク社長)を目指す。

 「顧客基盤や全国的なネットワークを考えると、新規でやるよりも買収の方が速く、時間を買った」――買収合意後の記者会見で、ソフトバンクの孫正義社長はボーダフォン買収の理由についてこう語った。新規の携帯電話事業者として05年11月に総務省から1.7GHz帯の携帯電話事業の免許を受けてから、全国的な通信ネットワークや顧客開拓の投資をゼロから始めるより、すでに全国的なインフラや営業基盤を持つ企業を取り込むのが得策と考えた。


 今回の買収では、ソフトバンクが全額出資する子会社がボーダフォン・グループから日本法人の発行済普通株式の97.7%を取得する形で行う。残りの2.3%の株式を持つ少数株主に対しては、TOB(株式公開買い付け)で取得する予定。子会社は1.7GHz帯の免許を受けたBBモバイルになる見通しで、買収後の会社の名称は未定。

 買収資金は、ソフトバンクが2000億円、ヤフーが1200億円を出資。残りの資金はボーダフォン日本法人の受け皿となる子会社が、買収相手企業の資産を担保にして資金を借り入れるLBO(レバレッジド・バイアウト)で1兆1000-2000億円を金融機関からの借り入れで調達する。また、ボーダフォンインターナショナルホールディングスB.V.が新株予約権付き優先株式で3000億円、劣後債として1000億円を投資する。ボーダフォングループは優先株を保有する間は取締役1名を指名権も持つ。買収にかかる借入金は子会社がすべて返済する。孫社長は「ソフトバンクのリスクマネーは2000億円のみ」であることを強調した。

 また、コンテンツサービスでボーダフォングループとのJV(ジョイントベンチャー)での提携を検討していることも明らかにした。ヤフーのコンテンツサービスを約5.1億人のボーダフォングループの携帯電話向けに展開していく計画で、世界的なネット事業戦略を加速する。会見でボーダフォン日本法人のウィリアム・モロー社長は「出資もするし、JVにも深くかかわるのでボーダフォンが日本からいなくなるわけではない」と日本市場からの撤退という見方を否定した。


 同時にヤフーとの業務提携についても発表した。ヤフーは携帯電話向けの「ヤフーモバイル」といったコンテンツ、サービスなどを提供する。井上社長は「携帯電話向けサービスはキャリア(携帯電話会社)の依存度が強く、自分たちの思ったサービスはなかなかできなかったが、今度は一緒にサービスを作っていける」と意欲を見せた。


 ボーダフォンを買収したことで、新規事業者として交付を受けている1.7GHz帯の免許の扱いが今後焦点となるが、孫社長は「今回の買収で我々を新規事業者と見るか、既存事業者とみるのか、総務省とよく相談したい。その過程で手放すかどうか決める」と語った。また、ADSL事業参入の時のように携帯電話でも低価格化を進めるのかとの質問に対しては「まだコメントする時期ではない」と明言を避けた。