ノートPC僅差で混戦、真冬に発表の「春モデル」が週替わりでトップに

特集

2006/01/27 00:21

 昨年12月19日、NEC、富士通、東芝の3社は一斉に「ノートPCの2006年春モデル」を発表した。NECと富士通は同様に、デスクトップパソコンについても新モデルを発表。1月頃から販売される「春モデル」は、例年、年明けに発表されてきたが、今回は12月に前倒しされ、しかも一部モデルは年末の慌しい最中に発売された。この前倒し戦略の影響が、週替わりのトップ交代劇や、わずか数%のシェア争いとなって、早くも「BCNランキング」に現れている。直近のランキングをもとに、ここ数週間の動きを追ってみよう。

 昨年12月19日、NEC、富士通、東芝の3社は一斉に「ノートPCの2006年春モデル」を発表した。NECと富士通は同様に、デスクトップパソコンについても新モデルを発表。1月頃から販売される「春モデル」は、例年、年明けに発表されてきたが、今回は12月に前倒しされ、しかも一部モデルは年末の慌しい最中に発売された。この前倒し戦略の影響が、週替わりのトップ交代劇や、わずか数%のシェア争いとなって、早くも「BCNランキング」に現れている。直近のランキングをもとに、ここ数週間の動きを追ってみよう。

●年明けは05年秋冬モデル一色、しかしトップは唯一の春モデル、東芝「AX」

 パソコンの新製品発表のタイミングは年3回。それぞれ発表されるのは春モデル、夏モデル、秋冬モデルだ。例年、春モデルは1月から2月にかけて発売され、春の新入学・就職シーズン時期に販売が本格化する。夏モデルはゴールデンウイーク明けの5月頃、秋冬モデルは9月頃に発売され、それぞれ店が活気づくボーナスシーズンがピークだ。一方、デルやエプソンダイレクトなど、ネット通販が主体のメーカーは、こうしたタイミングにはあまりとらわれない。低価格をウリにする、いわゆるショップブランドのPCも、季節を問わず新モデルが投入されている。

 こうした状況のなか行われた「春モデル」の前倒し。その結果、年末年始の店頭には「05年秋冬モデル」と一緒に、発売されたばかりの「06年春モデル」も並んだ。新旧モデルが同じ売り場に並ぶことで「食い合い」が起こって売れ行きが落ちたり、大幅に値崩れするのではないか……そんな懸念もあった。しかし、年末から年始にかけての売れ筋のほとんどが05年秋冬モデルだった。

 しかし、唯一順位を上げてきたのが、東芝の「dynabook AX」シリーズの新モデル「PAAX740LS」。12月28日の発売にもかかわらず、12月最終週(05年12月26日-06年1月1日)の集計で5位、さらに翌週は2位にランクアップし、1月第2週で初の1位を獲得した。直近の1月第3週(1月16日-1月22日)では惜しくも2位に後退したが、トップとのシェア差はわずか0.1ポイントの接戦を演じている。



●デザイン一新とワイド画面成功の秘密?

 「dynabook AX」シリーズは、基本的な機能を押さえたスタンダードノートとしてこれまでも人気が高かった。今回の春モデルでは、液晶ディスプレイのサイズを16:10の15.4型ワイドに変更。また、従来のシルバーを基調とした力強く男性的なデザインからパールホワイトの優しいイメージの女性を意識したデザインに一新した。さらにこのデザインは「dynabook TX」や「dynabook VX」とも共通している。

 HDDとメモリ容量の違いによって2モデルをラインアップするうち、1位になったのは、80GB HDD、512MBメモリを搭載する上位モデル。とはいえ実売価格は、13万円台から14万円台の低価格帯モデルだ。パネルの質感にやや物足りなさを感じるものの、この価格でDVDマルチドライブや無線LAN、Officeまで「全部入り」なのだから、値ごろ感は強くなる。あるショップの店員は「発売と同時に入荷したが昨年中にほぼ完売。年明けからは予約待ちの状況が続いている」と、その人気のほどを語った。

●1月発表のソニーの「VAIO type F」、発売1週目でいきなりトップに!

 しかし直近の1月第3週では、この「PAAX740LS」に代わって、ソニー「VGN-FS23B」がトップに立った。ソニーは「前倒し」を行わず、従来通り1月から春モデルの販売を開始したものの、立ち上がりは好調だ。

 「VGN-FS23B」は、店頭販売用に3モデルをラインアップする「VAIO type F」シリーズの最廉価モデル。東芝「PAAX730LS」と同じく15.4型ワイド液晶を搭載する「大画面ノート」だ。CPUやHDDなどの基本スペックは両者ほぼ同じだが、「VGN-FS23B」は、IEEE1394、FeliCa対応リーダー/ライター、メモリースティックスロット(付属のアダプタでSDメモリーカード、マルチメディアカードにも対応)など、接続インターフェイスが充実しているのが特徴。実売価格は、13万円台から15万円台と、「VGN-FS23B」の方がやや高い。

 東芝はモバイルノートを除き、今回から全モデルにワイド画面を採用した。15.4型ワイドWXGA画面(1280×800ドット)の場合、これまでの15型XGA画面(1024×768ドット)に比べ約1.3倍広く、エクセルでの作業効率もあがりそうだ。またブラウザの閲覧にも便利で、PC本来の用途でもワイド画面のメリットが多い。2機種の好調ぶりをみると、テレビやDVDの視聴に適した「ワイド画面」が、06年のトレンドになりそうな勢いを感じる。

●その他の春モデルも着々とランキングを上げる

 このほかの春モデルも簡単に見ておこう。トップとわずか0.4ポイント差の3位は、05年12月22日の発売のNEC「LL750/ED」。06年春モデルに1位を奪われるまで、ずっとトップを走っていた「LL750/DD」の後継モデルにあたり、13位、6位、3位と、徐々に順位を上げてきた。

 7位、13位、14位は、富士通の「FMV-BIBLO NBシリーズ」の春モデル。他社とは違ったアプローチとしてセキュリティを強化。「FMV-BIBLO」は、今回から指先をスライドさせるだけでWindowsのログオンやWebサイトなどのパスワード認証などが簡単に行える「指紋センサー」を全モデルに搭載した。

 8位には、「dynabook TX」シリーズから「PATX760LS」がランクインした。「dynabook AX」シリーズに比べ、液晶ディスプレイの輝度が高く、さらにharman/kardonステレオスピーカ、光るタッチパッド、さまざまなメディアに対応する「ブリッジメディアスロット」などを備えるのが特徴。よりハイスペックになっている。



●今年はにぎやかな春モデル、真の評価はこれから

 スペックを強化したマイナーチェンジが中心で、全体的に目新しさに欠けるとも言われた春モデル。ノートパソコン向けのデュアルコアCPU「インテル Core Duo プロセッサ」搭載モデルや、この4月スタート予定の「ワンセグ」対応モデルなど、新しいテクノロジーをいち早く取り入れた新モデルも発表されはじめた。さらに2月には、インテル製CPUを搭載した初のMacノート「MacBook Pro」も登場する。今年の春モデルはにぎやかだ。

 東芝の「dynabook AX」シリーズとソニーの「VAIO type F」が好調なスタートを切ったが、シェアはまだ4%前後と低く、NECの定番ノートの追い上げも急だ。手頃な価格のオールインワンノートがランキング上位に並ぶ傾向は続いているが、しばらくは僅差での混戦となりそうだ。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・ 2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。