メモリタイプ8割超に激増、売れ筋が、より鮮明になった携帯オーディオ市場

特集

2005/12/22 05:02

 iPod Shuffle(Shuffle)の登場でスタートを切った05年の携帯オーディオ市場。春にソニーがMP3に本格対応したネットウォークマンで「再参入」すると、メモリタイプでShuffleを追い抜くという離れ業を披露。しかしiPod nano(nano)の発売でアップルが首位を奪還……。携帯オーディオ今年の主役は、メモリタイプだった、といえそうだ。そこで、大きく躍進したメモリタイプの携帯オーディオについてまとめながら、年末商戦も終盤にさしかかった12月第3週の「BCNランキング」で売れ筋の20モデル

 iPod Shuffle(Shuffle)の登場でスタートを切った05年の携帯オーディオ市場。春にソニーがMP3に本格対応したネットウォークマンで「再参入」すると、メモリタイプでShuffleを追い抜くという離れ業を披露。しかしiPod nano(nano)の発売でアップルが首位を奪還……。携帯オーディオ今年の主役は、メモリタイプだった、といえそうだ。そこで、大きく躍進したメモリタイプの携帯オーディオについてまとめながら、年末商戦も終盤にさしかかった12月第3週の「BCNランキング」で売れ筋の20モデルをチェックする。

●11月以降、急激に伸びたメモリタイプ、その要因は?

 携帯オーディオの販売状況を、メモリタイプとHDDタイプそれぞれで把握するため、6月第1週から12月第3週までの動きをグラフ化した。6月時点でのHDDタイプの全販売台数を1として指数化したものだ。これを見ると、秋以降、メモリタイプの躍進が著しい。



 6月時点ではまず、メモリタイプはHDDタイプの倍の台数が出ていた。その後はしばらくは地味に推移したものの、11月の頭をボトムに急激に伸びはじめ、直近の12月台週では6月に比べ約2.5倍と大きく販売台数を伸ばしている。シェアで見ると、8月まではメモリタイプが65%前後、HDDタイプが35%前後で推移していたものが、9月に入りメモリタイプが一気に10ポイント上昇。さらに、ここにきてメモリタイプが80%、HDDタイプが20%と差が開いた。

 影響が大きいのは、やはりメインプレーヤーであるアップルの販売動向だ。9月にはnanoが大きく伸び、メモリタイプ全体を押し上げた。さらに11月以降、特にnanoの2GBタイプの販売台数の伸びは発売時に匹敵するほどの勢い。11月第1週比で実に倍以上の販売台数を記録している。それにもまして活気づいているのはなんとShuffleの512MBタイプ。11月第1週に比べ、実に3倍以上も伸びている。



 もともとこの時期は、AV機器の売り上げが伸びるものだが、それにしてもこの勢いは顕著だ。アップルでは「nanoの2GBは、フル機能iPodという意味では最も安い製品。そこが受けて伸びているのだろう」としながらも、ここにきてShuffleの512MBタイプが伸びている理由については、首をかしげる。「あくまでも想像だが、季節柄ギフト需要が大きいのかもしれない。ちょっとした贈り物に手ごろな価格ということで選ばれているのかも」(広報部)と推測する程度。もしかするとShuffleに音楽も入れて自分の趣味のよさをアピールしつつプレゼント、という使われ方もしているのかもしれない。

 一方nano4GBタイプについては、依然販売台数の上下が激しい。店頭でも「入ったそばからすぐに売れていく」との声が聞かれ、まだまだ供給量に波がある模様だ。こうした慢性的な品薄状態が解消されていくにつれ、さらにメモリタイプの勢いは加速することになりそうだ。

●タイプ別で見たメーカー別のシェア推移は?

 メモリタイプのメーカー別シェア推移では、9月にアップルがソニーをnanoで再逆転し、そのままの水準を維持。逆にソニーはnanoにやられた分を11月のウォークマンAシリーズで奪還を図っているが、まだ20%台には届かず思うように伸びていない。一方、SDカードを使った松下は、新製品の立ち上がりがよく、11月最終週で2桁載せとなる11%台を確保した。しかし最も重要な時期にTV-CFがすべてファンヒーターのリコール告知に差し替えられた影響もあってか、シェアの伸びは鈍化し再び1桁台となった。



 一方ハードディスクタイプのメーカー別シェア推移を見ると、iPod mini(mini)からnanoへと一気にスイッチした9月、それまで70%前後をキープして絶大な強さを見せていたアップルだが、60%前半までシェアを落とした。しかし、その後の第5世代iPodの投入で、落ち込みをカバー。ピーク時にはなんとシェア80%超えを果たした。その後ソニーが新製品2モデルが発売した影響で70%を割り込んだ時期もあったが、すぐに70%台を回復した。



 一方ソニーは新シリーズの発売で20%を超えるシェアを獲得したものの、そこからさらにシェアを押し上げる力はなく、現状では20%を下回る水準で推移している。HDDタイプでは、クリエイティブメディアや東芝、iRiverが後に続くが、売り上げ台数の規模からいえば残念ながら文字通り一桁違う水準に甘んじているのが現状だ。


 メモリタイプとHDDタイプを総合した全体でのシェアを見ると、アップルは9月以降、ほぼ安定して50%台のシェアを維持しながら推移。他のメーカーは10%台のソニー以外はすべて1桁シェアにととまって入るのが現状。メモリタイプ、HDDタイプのいずれもアップルを脅かす製品・メーカーは、まだ現れていないと見てよさそうだ。

●直近の売れ筋ベスト20はこれだ

 ここで、年末商戦も終盤にさしかかった12月第3週(12日-18日)の売れ筋トップ20を見てみよう。なお、カラーバリエーションは合算して集計した。長らく「アップルランキング」状態が続いている上位グループは5位までをアップルが独占。前述のとおりnanoの2GBモデルがダントツのシェアで23.2%。2位にはiPodのHDD30GBモデルがランクインしている。そして3位に、このところ人気再燃のShuffle3の512MBタイプが急浮上してきた。これにnano4GB、iPod60GBが続く。追いかけるソニーは6位に512MBのAシリーズNW-A605で登場。小ぶりな6GBのHDDタイプ、NW-A1000が7位で続く。しかしシェアはいずれも2%台と今ひとつだ。また、撤退しながらも流通在庫の販売でしばらくランキングに登場していたRioだったが、ついに上位グループから完全に姿を消した。


 これまでならこの次のランクあたりにアップル以外の海外勢が顔を出すところだが、今回は9位と10位に松下がつけた。いずれも別売りのSDカードに音楽データを入れるタイプのD-snap Audio。コンポを使いSDカード経由でデータをやり取りするなどの使い方を提案しているシリーズだ。デジカメなどで使用しているSDカードの使いまわしできるというのもメリットになる。9位のSV-SD300は、このシリーズの中でも1万円前半と一番安く購入できるタイプ。10位のSV-SD350Vは、ほぼ同じ仕様でFMチューナー付き。ほどほどに小さく、ほどほどに薄いため手になじむ大きさという印象だ。店頭では女性客が手に取る姿がよく見られた。13位のSV-750OVはその上位バージョンだ。

●ラジカセ並みのモデルやシステムを作り出せるのは?

 iPodは確かに売れている。しかしパソコンがなければ成立し得ない製品であることもまた事実だ。アップルは、すべての製品の中心にコンピュータを位置付けているため、PCレスでも使えるiPodが登場するとは考えにくい。

 しかし、これからもっと携帯オーディオのユーザーを広げようと考えると、「家電」として、PCレスでの環境でも十分使える製品は必要になってくるだろう。そうしたアプローチでは日本勢の活躍が不可欠。アップルとの戦いに、孤軍奮闘してきたソニーだが、ここに松下も加わることで、家電としての流れも生まれてくるかもしれない。06年、まるでラジカセのように誰にでも使えるシンプルで簡単な携帯オーディオプレーヤーの登場に期待したい。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。