波乱含みのコンパクトデジカメ年末商戦、カギ握るブレ対策と大画面

特集

2005/12/14 01:39

 500万画素クラスを下限として画素数拡大競争がほぼ一段落した感のあるコンパクトデジカメ(コンデジ)。差別化のポイントはブレ対策や液晶の大きさ、デザインの美しさに移りつつある。年末商戦序盤の「BCNランキング」で、売れ筋のコンデジを紹介しながら現在の傾向をまとめた。

 500万画素クラスを下限として画素数拡大競争がほぼ一段落した感のあるコンパクトデジカメ(コンデジ)。差別化のポイントはブレ対策や液晶の大きさ、デザインの美しさに移りつつある。年末商戦序盤の「BCNランキング」で、売れ筋のコンデジを紹介しながら現在の傾向をまとめた。

●コンデジ選びのポイントは撮る・見る・持つ

 今コンパクトデジカメ(コンデジ)を選ぶなら「撮る」「見る」「持つ」の3つのポイントをおさえておきたい。まず「撮る」では、「いかにきれいな写真が簡単に撮れるか」に注目だ。もちろん画素数は多いに越したことはないが、500万画素から700万画素クラスのコンデジであれば画素数としては十分。問題はむしろブレだ。どれだけ画素数の多いカメラでも、撮影時に手ブレを起こしたりすれば、きれいな写真は撮れない。

 そこで各社が搭載し始めているのがブレの補正・防止機能。現在多くのコンデジにはこうした何らかのブレ対策の機能が搭載されている。撮影時にカメラが動いてしまうのを補正するのが「手ブレ補正機能」。一方最近では「被写体ブレ防止」を掲げるカメラも出始めた。これは暗い場所で被写体が動いてしまうことによるブレを防止するものだ。この、被写体ブレ防止機能では結果的にシャッタースピードが速くなるため、手ブレの防止にもある程度役立つ。

 次に「見る」。最近のコンデジは2.5型以上の大ぶりな液晶を搭載したものが人気を集めている。撮影時に画像の確認がしやすいのはもちろんだが理由はほかにもある。コンデジは撮った写真を見て楽しむビュアーとしても使われるからだ。撮影後にみんなでカメラを回してその場で写真を楽しむというのはよく見かける光景。その際には画面は大きいほうがいい、というわけだ。しかも、メモリーカードの大容量化に伴って、持ち運べる写真の枚数も格段に増えた。以前撮った写真をカメラごと友人に渡して見せるといった使い方も一般的になってきている。

 最後の「持つ」でポイントとなるのはカメラのデザインだ。現在の主流は薄型。その中でも、金属の質感をそのまま生かしたタイプや、カラフルなバリエーションを特徴とするもの、さらにシックな高級感を演出するもの、きわめて薄いものと、タイプはさまざま。せっかく手に入れるなら持って楽しく、手にしっくりなじむデザインのものを選びたい。カメラのデザインが洗練され、選択の幅も広がったことで、そうした要望にもずいぶんこたえられるようになってきた。

 それでは、実際に今売れているコンデジはどのモデルなのか? 「BCNランキング」11月の月次集計をもとに販売台数シェアのトップ20を見てみよう。なお、今回は機種ごとのランキングを見るため、カラーバリエーションは合算して集計した。

●やはり強い「IXY」、追いかけるのは手ブレ補正で定評のある「LUMIX」

 販売台数シェアが8.5%でランキング1位となったのは、キヤノン「IXYD60」。もうおなじみとなったメタリックで高級感のあるデザインが特徴。まさにコンデジの定番だ。有効素数は500万画素。「EOS-1DS」や「EOS5D」などプロ用一眼レフで採用されているキヤノンのデジカメ用エンジン「DIGICII」搭載で、発表時に話題となった。1.3秒で起動し、ピント合わせのスピードも従来機に比べ30%高速化した。モニターは2.5型の低温ポリシリコンTFT液晶を採用している。手ブレ補正機能はなく、被写体ブレ防止機能を搭載している。



 シェア6.3%で2位につけたのは松下の「LUMIX FX9」。「手ブレ補正機能」を最大の武器にIXYを追いかける。ブレをカメラが検出すると補正用レンズが動き、レンズから入る光軸とCCDとのズレを打ち消すしくみで、暗い場所でもブレの少ないクリアな写真が撮れる。有効画素数は600万画素。独ライカ社のDCバリオ・エルマリートレンズを使っているのも特徴のひとつ。モニターは2.5型で新開発の「高精細パワー液晶」を搭載している。6位には旧モデルの「FX8」もランクインしており、「FX」シリーズの人気の高さがうかがえる。

 同じくシェア6.3%で同率2位となったのが、カシオの「EXILIM EX-Z500」。薄型で500万画素のコンデジだ。省電力設計のうえ大容量バッテリーを採用し、1回の充電で500枚の撮影が可能。モニターには2.7型とやや大きめの液晶を搭載した。手ブレ補正機能はなく、被写体ブレの防止機能がついている。

 今年の11月に発売されたばかりのソニーの「Cyber-shot T9」は、シェア3.0%で同率8位に食い込んだ。手ブレ補正+被写体ブレ防止の2つのブレ対策機能を採用したとあって、出足は順調だ。また、ほぼ同じタイミングでリリースされた富士フイルムの「FinePIx Z2」はシェア2.0%で15位。これには被写体ブレ防止機能が搭載されている。



●ハイビジョンサイズの「LUMIX LX1」や、あの「GR DIGITAL」のランクは?

 上位20位には入っていないものの、個性的派コンデジのランキングも少し紹介しよう。まず、松下の「LUMIX LX1」は世界初となる「16:9」のハイビジョンサイズのコンデジ。シェア0.9%で24位につけている。ずいぶん下のランクのように見えるかもしれないが、11月集計時のエントリーマシンは497モデル。その中での24位だから、かなり売れているほうだといえる。

 また銀塩カメラの良さをデジタルで再現したリコーの「GR DIGITAL」は、0.3%の56位に位置している。銀塩コンパクトカメラで、知る人ぞ知る名機「GR1」をデジカメで再現したもので、マニアの間で待望されていたコンデジだ。最大の特徴は「GR1」同様高画質で鮮明な「GRレンズ」。この28mm単焦点レンズと813万画素のCDDが組み合わさって独特のボケ味も楽しめる。

●相変わらずキヤノンは強いが、2位以下では年末商戦で波乱も?

 最後にコンデジでのメーカー別販売台数シェア推移を上位5社の動きで見てみよう。やはり目立つのはキヤノンだ。6月以降10%台後半で推移してきたが、10月以降20%台に乗せてきており、安定的に強い。逆に動きが激しいのが松下で、6月時点では15%を超えて2位だったものが、7月で4位に転落。その後9月には一時キヤノンにその差2%まで急接近して2位を獲得。しかし、それをピークに11月では15%割れの水準にまで下落、カシオに抜かれ現在は3位のポジションだ。

 一方カシオは15%前後で安定してはいるものの、やや頭打ち感がある。逆に富士フイルム、ソニー、オリンパスは若干ながら上昇傾向。こうしてみると、この年末年始の商戦では、キヤノンを除く各社のランキングには一波乱ありそうな雲行きだ。



 ともあれ、これだけ各メーカーが競い合っているからこそ、誰にでも「いい絵が撮れるカメラ」がどんどん生まれているわけだ。それに近頃、街のDPEショップにデジカメ写真用のプリント受付機が並ぶようになってきた。パソコンやプリンタがなくても、従来の銀塩カメラの代わりにデジカメで普通に楽しめる環境が、それだけ整ってきたということだろう。もしデジカメ未経験なら、そろそろ入手を検討してもいい時期ではないだろうか? またデジカメユーザーでも、時には店頭で最新カメラに触れてみることをお勧めしたい。最新モデルの各段に進歩した使い勝手の良さに驚くことだろう。


*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など18社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。