高専といえば、3年制の高校とは違い、5年間一貫して技術系の科目を専攻する国立の高等専門学校。当然、将来の技術者に進路を定めて入学してくる生徒が多い。教員の先生達も、大学院を卒業した博士号取得者が条件。それだけに、授業内容は大学の教養課程よりは、はるかにレベルが高い。

 高専といえば、3年制の高校とは違い、5年間一貫して技術系の科目を専攻する国立の高等専門学校。当然、将来の技術者に進路を定めて入学してくる生徒が多い。教員の先生達も、大学院を卒業した博士号取得者が条件。それだけに、授業内容は大学の教養課程よりは、はるかにレベルが高い。

 展示ブースに足を踏み入れると、そうした理系の雰囲気がムンムンと漂っている。ブース前の人だかりでは、他校の生徒や来場者との間で、プログラムに関する議論が盛んに交わされている。「ぼくなら、ここのロジックは、こうするかな」などと踏み込んだ話が飛び交う。穏やかな口調だが、会話のあちこちで、ちらちらと火花が散っている。それは、そうだ。最優秀チームには、文部科学大臣賞が与えられる。会場の誰もが、真剣なのだ。さて、そうしたなかから、BCN取材班が選んだ作品をいくつか紹介しよう。

●3d-高次元新世代ワーキングマウスって、なに?

 まず、マウスの新しい操作機能を提案したという点で面白かったのが、宇部高専の「3D-Mouse-高次元新世代ワーキングマウスの提案-」(自由部門審査委員特別賞)。最近のマウスはスクロールボタンなどに機能を割り当てられる製品が増えているが、これはマウスを上下左右に傾けることで、様々な動作を指定できるというもの。

 マウスの内部に3Dジョイントを設置することで、手のひら全体でマウスを上下左右に傾けられるように工夫した。写真のとおり、本体が操作面から浮いた構造になっている。このため、左に傾ければ左スクロール、前に傾ければ上にスクロールといった直感的な動作を割り当てることができる。


右が通常のマウス、左が3Dマウス。
3Dジョイントでマウス本体を浮かせているため、手のひらで上下左右に傾けることができる


 スクロールボタンを操作するには、常にボタンに指を添えておく必要があるが、これならば手のひら全体でマウスを包みながら、いろいろな操作を指定できる。標準的なデバイスドライバを使用しているため、ほとんどのOSで、この3Dマウスが使用可能。なかなかのアイデアで、どこかのメーカーから3Dマウスの製品版が登場しても不思議ではない。


3Dマウス発案者の宇部高専5年生の木村昌樹さん


●航空写真で時間旅行、時系列をさかのぼって参照できる地図DB

 地図ソフトに年代別の検索軸と、「時間旅行」というロマンあふれる視点を持ち込んだのが、松江高専の「アカシック・ナビゲータ-時間旅行へ In The Sky-」(自由部門審査委員特別賞)。
 
 国土交通省や国土地理院は、1945年から現在まで40万枚を超える全国の航空写真をネット上で公開している。しかし、残念ながら、この年代別の航空写真は、いまのところ有効に活用されていない。松江高専チームは、この航空写真を使って、緯度、経度の地理情報だけでなく、撮影年次も検索条件に入れて、地形などの変化を時系列をさかのぼって参照できる地図データベースを提唱する。

 サーバー側に航空写真の地図を年代別、地域別に蓄積しておけば、開発の進む都市の地形の変化を、宇宙から時間を追って眺めるように再現できる。人口や交通量の変化などの数値情報を加えれば、今後の都市計画にも応用できそうだ。また、建て売り住宅などを購入する場合にも、年代を指定すれば、その土地が昔どのような自然環境のなかにあったのかが、ひと目で分かる。地図を年代ごとに層別化するということは、時間を視覚的にデータベース化するという試みにも、つながっていきそうだ。


実用性とロマンを感じさせる作品を提唱した松江高専チーム


●高速の「ネズミ捕り」も、これなら完璧

 地元の米子高専からは、自由部門と課題部門で、制御系の技術を応用した面白い作品が出品されていた。「速度監視人」(課題部門敢闘賞)は、自動車免許の違反ポイントが気になるおじさん達が青くなりそうなシステム。高速道路などで速度違反を取り締まるオービスは、仕掛けが大がかりなうえ、設置にも大変なコストがかかる。

 そこで、道路の側壁に速度センサとCCDカメラを取り付け、一定エリアの情報をパソコンで集中管理できるようにすれば、コストも安く、より効果的に違反者を発見できるというわけだ。違反車両が通過した場合は、速度データや車両の画像データをパソコンに自動送信できるため、電光掲示板に警告を表示したり、近くを走行している警察の取り締まり車両に通知することもできる。いわゆる「ネズミ捕り」も、これなら完璧という具合だ。


発砲スチールやベニヤ板で作成した「速度監視人」のシステム模型(左)/スピード違反のトラックが歩行者を巻き込む大事故を起こしたというニュースを聞いたことが、この作品のきっかけという米子高専の2年生トリオ(右)

 自動車のスピード違反の代わりに、卓球競技のライン・イン・アウトや、ネットインを自動判定しようというのが、同じく米子高専の「どっちの文句裁く省 判定はどっち!? -卓球自動判定システム-」(自由部門敢闘賞)。テニスの場合は、国際試合の判定にビデオの活用が決まったが、動きの速い卓球では、とかくこの手のきわどい判定が勝負を左右しがち。

 そこで、ネットインの判定には、ネットに歪みセンサーを貼り付けて、ボールが触れた時の揺れを素早く検知できるようにした。ラインアウトのほうは、2台のUSBカメラから動画像を取り込み、センターラインとボールのバウンド位置の座標を検出することで判定する。卓球台のうえにはボールの自動射出装置やテスターが並べられて、祭りの屋台のような賑やかさだ。


ネットの横には、「さわるな危険」の紙。実は、ネットに触るとセンサーが誤動作するのでというのがホントの理由(左)/同校の卓球部からの評判は上々(右)


●住基情報を災害時の状況把握に活用

 大地震などの緊急対策システムが関心を集めていることもあって、今回の課題部門では、同様のテーマに取り組んだ作品が多かった。大島商船チームの「SAI-安否情報確認システム-」(課題部門敢闘賞)も、そのひとつ。災害が発生するたびに、被害地からの情報が途絶し、被災者や負傷者の状況が把握できないという問題が取り上げられる。そのため救助隊が到着しても、負傷者の所在がわからずに救出が遅れたり、救助物資が滞って必要な緊急処置を施せないという混乱が生じがちだ。

 このシステムでは、救助隊がPDAなどの小型端末を利用して、被災状況を収集するサーバーとの間で、直接様々な情報交換を行える。とくに、被災地域が特定された時点で、住基ネットのデータベースから被災地域の住民情報を抽出して、一元管理できるようにするという発想が目を引いた。

 これが実用化できれば、倒壊した家屋などにどんな住民が住んでいたかも確認できる。さらに安否の確認できた住民や、負傷している人たちの情報もPDAのGUI画面から簡単に入力できるよう工夫した。救助隊員が被災地でも簡単に使えるように、画面に表示される体のイラストに指やペンで触れるだけで、負傷部分や状況をデータベースに登録できる。

 このシステムを作成した松岡秀実さん(5年)によれば、一番苦心したのは、JAVAのGUI画面のレイアウト。しかし、「大地震などの災害に備えて、自分たちの提案が取り入れられて、少しでもたくさんの人たちが救助されるようになれば」という思いから、半年以上をかけてこの作品に取り組んできたという。


被災者の負傷状況を簡単に入力できるようPDAの入力用GUI画面も開発した(左)/住基情報を災害時の状況把握に活用しようと提案した大島高専チーム(右)