カメラというより「写真」の魅力にとりつかれた「写真通」の人たち。作品重視の彼らには、いまだアナログ一本槍の銀塩派も多い。しかし、そんな「通」にもすすめられるデジカメがずいぶん登場しはじめた。そこで、この秋のニューモデルを中心に、そのいくつかご紹介してみよう。なお、発売前のカメラについてはまだ実機での撮影などは行っていない。発表された仕様などに基づく期待値も多分に含まれていることをあらかじめお断りしておく。

 カメラというより「写真」の魅力にとりつかれた「写真通」の人たち。作品重視の彼らには、いまだアナログ一本槍の銀塩派も多い。しかし、そんな「通」にもすすめられるデジカメがずいぶん登場しはじめた。そこで、この秋のニューモデルを中心に、そのいくつかご紹介してみよう。なお、発売前のカメラについてはまだ実機での撮影などは行っていない。発表された仕様などにもとづく期待値も多分に含まれていることをあらかじめお断りしておく。



●「GR DIGITAL」は再び伝説となるのか!?

 リコーが先ごろ発表したデジタル版GR1こと「GR DIGITAL」。筆者も待望していたカメラがついにそのベールを脱いだ。先代ともいえる銀塩GR1は、35mmフィルムを格納しながら信じられないほど薄いボディと、広角28mmで収差の極めて少ない抜群の描写性能を誇るレンズで、プロ・アマ問わず絶賛されたコンパクトカメラだ。それだけにデジタル版のへの期待も大きかった。発表前にはズームレンズや手ぶれ補正の搭載など、さまざまな憶測が飛び交っていたのだが、ふたを開けてみると、銀塩GR1と同じ28mm単焦点レンズで手ぶれ補正機能はなし、とういうシンプルなものだった。

 ボディデザインもGR1をそのまま踏襲。もう少し「アッと驚く何か」を期待していたのは筆者だけではないだろう。しかし発表会場で手にした「GR DIGITAL」の感触は、やはりすばらしいものだった。「GR DIGITAL」は、手に持った瞬間からジワジワーっと「あー、このカメラいい。これは欲しいぞっ!」という欲望がムクムクと湧いてくる希有なデジカメだ。近々実際に撮ってみるチャンスもありそうだが、シャッターを押すまでもなく、完成度の高さはビンビン伝わってくる。

 通常デジカメは3か月で開発する体制が整っている同社で、レンズの設計に1年を費やし、極限まで収差をなくしたと自負する新GRレンズの描写力がどれほどすごいか、1か月後に手にした人は知ることになるだろう。聞けば開発スタッフの間では、銀塩GR21のようにさらに広角レンズを搭載したモデルや、ズームレンズ搭載モデル、さらには、末永く愛用してもらうためにCCDの換装サービスまで検討されているという。銀塩GR1がつくり出した伝説を、デジタルで再び塗り替えることができるか、期待したいところだ。

●コンデジはますます面白くなりそうだ

 この秋発表のコンパクトデジカメ(略してコンデジ)は、「GR DIGITAL」と同スペックの1/1.8型800万画素CCD搭載モデルがハイエンド製品として位置づけられている。その中で特に気になるのは、キヤノンの「PowerShot S80」だ。キヤノンのコンデジには、IXY DIGITALシリーズと、PowerShotシリーズの2系統がある。さらにPowerShotシリーズで広角28mmに対応したモデルがSモデルだ。「PowerShot S80」はそのフラッグシップ機である。これまでのSモデルからボディデザインを一新し、よりコンパクトになった。映像エンジンにようやく「DIGIC II」が搭載された。液晶モニターが2.5型と大型になった。

 特に注目しているのは、これまでデジカメの操作系として主流だった十字キーをやめて、「コントロールホイール」を搭載した点だ。ロータリータイプの操作ホイールということで、コンセプトや操作方法はAppleの携帯音楽プレーヤー「iPod」のクリックホイールと似通っているように思う。実際の操作感はどうなのか? 10月中旬に予定されている発売が待たれるところだ。

 なお、PowerShotシリーズには画質重視のGモデルというのもある。開放F2-F4という明るいレンズの柔らかな描写には根強いファンも多いが、これまでのフラッグシップである「PowerShot G6」はすでに生産終了。キヤノンのサイトでもすでに現行製品ラインアップにその名はない。次のPowerShotの登場も待たれる。

 ほかにもコンデジでは、独自の手ぶれ補正機能「Anti-Shake」を搭載したミノルタの「DiMAGE X1」、コンデジ最大の3.0型液晶モニターを持つサンヨーの「Xacti DSC-E6」、「COOLPIX 900」から続くニコン伝統のスイバルデザインが復活した「COOLPIX S4」、広角28mmで世界初のアスペクト比16:9というCCDを搭載したパナソニックの「LUMIX LX1」、まるでケータイ電話のようなフォルムのソニー「Cybershot DSC-M2」、そして、ついにズームを搭載して思い切ったカラーリングを施したキヤノンの「IXY DIGITAL L3」と気になるカメラは枚挙にいとまがない。

●デジ一眼はフルサイズ撮像素子に期待

 ここで少しデジタル一眼レフ(略してデジ一眼)もみてみよう。最注目機種はといえば、何といってもキヤノン「EOS 5D」だ。「EOS 5D」のとにかくすごいところは、撮像素子に35mmフルサイズのCMOSセンサーを搭載し、それでいて市場予想価格40万円を切る価格を実現したところにある。

 35mmフルサイズは、デジ一眼を使う者にとって究極の理想サイズなのではないだろうか。なぜなら、多くのデジ一眼が用いているAPS-Cサイズの撮像素子では、実撮影画角がレンズ表記の約1.5倍の焦点距離になってしまうからだ。つまり、200mmレンズが約300mm相当となるわけだ。望遠がさらに望遠になるのはまあいいのだが、問題は広角側。APS-Cサイズの撮像素子を持つデジ一眼に、同様に、35mmのレンズを付けると、約52mmとなってしまう。さらに、例えばデジ一眼で20mmの画角の写真を撮るためには、14mm前後のレンズを使わなければならないのである。

 20mmは誰が撮ってもそれなりに絵になる魔法のレンズなのだが、その魔力は消えてしまう。さらに、画角は1.5倍となるが、被写界深度やパースペクティブは開放F値と同様に変化しない。つまり、200mmのレンズでは300mmの遠近感は得られないし、画角は50mm相当でも、被写界深度は広角35mmのままなので、ボケ味も50mmレンズとは違ってしまう。この違いが、35mmフィルムを基準に見慣れた目には、どうにも違和感があるのだ。やはりレンズの焦点距離どおりの画角であってほしい。そのためには、どうしても撮像素子が35mmフルサイズである必要があるのだ。

 35mmフルサイズとAPS-Cサイズについては語り出すときりがないが、とにかく、これまで非常に高額だった35mmフルサイズのデジ一眼が、40万円以下で手に入るようになったのだから、画期的なことなのだ。「EOS 5D」の発売は今月末。その写りには大いに期待したい。

 デジ一眼でもう1つだけ触れておきたいことがある。それはファインダーの見え方についてだ。とにかく普及タイプのデジ一眼はファインダー像が小さい。とてもマニュアルでピント合わせなどできない。そのくらいファインダーの見え方は最悪である。例えば、デジ一眼の中でも最もファインダー像が小さいと言われる「Nikon D70s」のファインダー倍率は約0.75倍なのだが、同じニコンの銀塩一眼レフのフラッグシップモデル「Nikon F6」は、D70sよりも倍率の低い約0.74倍でありながら、そのファインダー像は恐ろしく見やすい。おそらくF6のファインダーは、あらゆる一眼レフカメラの中で最高と言える出来映えではないかと思う。そこまでは無理としても、デジ一眼のファインダーはもう少しなんとかならないものかと思う。もし、カメラ店の店頭などでこの2機種を手に取る機会があれば、そのファインダーを覗いて見比べてみて欲しい。

●モノクロの世界もデジカメで

 最後に究極ともいえる「通」のデジカメを挙げておこう。それは、エプソンの「RD-1」だ。何しろこのカメラ、デジカメなのにレンジファインダー。その上、巻き上げレバーや巻き戻しダイヤルまである。フィルムがないのに一体何を巻くのか? 巻き上げレバーはシャッターのチャージに、巻き戻しダイヤルは各種設定を変更する際のジョグダイヤルとして機能する。シャッタースピードや、ホワイトバランス・撮影品質・撮影可能残枚数・バッテリー残量などの表示はすべてアナログ式。とことん趣味性を追求したメカニカルな感触を生かしたデジカメなのである。

 しかも、レンズマウントはM型互換のEMマウント。つまり、ライカMマウントなどバヨネット方式のMマウントレンズのほとんどがそのまま使えてしまうのだ。アダプターを装着すれば、スクリュー式のLマウントレンズも装着することができる。ライカレンズが使えるということは、当然ながら、オートフォーカスではない。実像式の距離計像を合致させる昔ながらのマニュアルフォーカスである。完全等倍ファインダーを装備して、かつてライカM3で言われた「風景が張り付くようなファインダー」を再現すべく開発陣が努力した成果と言えるだろう、実際、デジ一眼よりはるかに見やすく、確実にピント合わせができるファインダーに仕上がっている。

 「RD-1」開発陣は画質にも相当のこだわりがあるようで、デジ一眼とは明らかに一線を画す味付けを施している。ライカレンズを使うレンジファインダーとくれば、やはりモノクロで撮ってみたくなるが、なるほど、モノクロ画像の階調表現が抜群にすばらしいのである。銀塩フィルムの粒状感すら感じさせる味のある画像を得ることができる。カラーで撮影して彩度を落としてグレートーンにしたのでは、この画質は実現できないだろうと思う。実売で30万円弱。ライカのMまたはLレンズを持っていないと存分には楽しめない極めて贅沢な趣味デジカメ、である。

 贅沢ついでに、デジタルでモノクロのファインプリントを実現したい、とお考えの方におすすめのプリンタも紹介しておこう。エプソンの「MAXART K3 PX-5500」がそれだ。A3プラス対応のプリンタだが、黒色系インクとして、フォトブラックまたはマットブラックの2種類。クレー系インクにグレーとライトグレーの2色と、ほかに5色のカラー系インクを備える。つまり、フォトブラックまたはマットブラック+7色でプリントできるプリンタなのである。カラープリントももちろんできるのだが、とにかくモノクロプリントにおける豊かな階調は、これまでのインクジェットプリンタの常識をくつがえすほどのハイクオリティだ。プロの作品展にも使われるくらいだから、そのプリント画質の素晴らしさは推して知るべし。「カラーRGB」のデータからそのままモノクロプリントすることもできる。一切の暗室作業なしに、完全デジタルでモノクロファインプリントが可能になる。「これからもモノクロにこだわり続けたい」「そうは言ってもデジタルも気になる」という方に、ようやくこうした環境が整ってきた。

●デジカメだからこそ、どんどん「作品」にチャレンジしよう

 少し前までデジカメは、「写真通」にとって困った存在だった。通を名乗るぐらいだからデジタルであってもカメラには興味がある。1台や2台は持ってはいる。しかし、いざというシャッターチャンスに遭遇した時のことを考えると、持ち歩くのはデジカメではなく銀塩のカメラだ。千載一遇のもう二度とやってこないかもしれなチャンスは、しっかりフィルムに焼き付けたい。画像に不満が残るデジタルではだめだったのだ。結局、デジカメは使い道がなくなる、ということになってしまう。

 しかし、昨今のデジカメを取り巻く技術の進歩はすさまじい。「作品」づくりに耐えるデジカメも数多い。二度とやってこないかもしれないシャッターチャンスだって、デジカメで十分というより、デジカメのほうが撮った後確認もできるのでむしろ確実、という逆転現象も出てきているように思う。そして、フィルムがいらないという気軽さはすばらしい。「通」の人にこそ、沢山沢山シャッターを切ってどんどん作品をモノにして欲しいと思う。どんなに撮ってもせいぜいわずかな電気代ぐらいしかかからない。「写真通」なればこそ、デジカメで新たな作品づくりにチャレンジしてほしい。(フリーカメラマン、榎木秋彦)