これまで、低価格帯のデスクトップPCと言えば、ショップブランドPCやデルをはじめとしたBTOメーカー、そしてソーテックなどの格安路線を前面に打ち出したメーカーが常に主導権を握っていた。しかし、ここに来てアップルが5万8590円という“超”低価格のデスクトップPC「Mac mini」を投入し、大きな話題をふりまくなど、その競争にちょっとした異変が起きはじめている。アップルだけでなく、NECもそのラインアップを拡大しつつあり、デスクトップPCの低価格競争が再び激化する可能性もでてきた。

 これまで、低価格帯のデスクトップPCと言えば、ショップブランドPCやデルをはじめとしたBTOメーカー、そしてソーテックなどの格安路線を前面に打ち出したメーカーが常に主導権を握っていた。しかし、ここに来てアップルが5万8590円という“超”低価格のデスクトップPC「Mac mini」を投入し、大きな話題をふりまくなど、その競争にちょっとした異変が起きはじめている。アップルだけでなく、NECもそのラインアップを拡大しつつあり、デスクトップPCの低価格競争が再び激化する可能性もでてきた。

 NECでは、主軸のVALUESTARシリーズとは全く異なるシンプル・低価格路線の新シリーズ「ValueOneシリーズ」をラインアップ。シリーズの上位機種である「MT400/1A」が店頭価格7万円台中盤、下位機種の「MT200/1A」については6万円台中盤と、激安路線の他メーカーと真っ向から張り合う低価格路線をとっており、この市場での同社の意気込みが伺える。「BCNランキング」2月2週から、平均単価8万円未満のデスクトップPC販売台数シェアトップ20をみると、早くも9位に「MT200/1A」がランクインしている(表)


 また、この分野のパイオニアであり低価格PCで世界シェアトップのデルは、最小構成で5万円台というビジネス向けデスクトップ「OptiPlex 170L」を用意。シェア世界2位のHPも同様のビジネス向けタイプのデスクトップ機「HP Compaq Business Desktop dc5000 SF」を6万8040円という価格で発売するなど、海外資本のBTOメーカーも低価格機種により一層の力を注いでいる。

 これに、国内低価格PCの先人であるソーテックが最小構成で4万4800円という2005年春モデル「PC STATION PT」シリーズを投入、さらには同価格帯のラインアップを数多くもつeMachinesや新興勢力トライエムジャパンなどが加わり、「大手メーカー」「海外資本BTOメーカー」「従来の低価格路線メーカー」という図式で、低価格競争が激化していく様相を呈しはじめている。

 それでは、ここで低価格路線デスクトップPCの特徴をみてみよう。2月2週のデスクトップPC全体における、平均単価8万円未満モデルの構成比率は23.3%(図1)。昨今のデスクトップPCの多くは、DVDでの動画鑑賞やTV鑑賞機能、サラウンドスピーカーシステムによる強力なAV機能など、エンタテインメント機能を充実させたものが多かったが、低価格路線デスクトップをみると総じてシンプルな構成のものが多い。


 PCとしての最低限の機能を備え、エンタテインメント的なハードウェア、アミューズメント的なソフトウェアは一切含まず、内容は至ってプレーンなもの。スペック的には、Athlon64やLGA775 Pentium4などの最新コンシューマ向けCPUを搭載するものは少なく、Celeron-DやAMDのSempronなど、バリューCPUを搭載し、256MB程度の容量のメモリというのが大方のようだ。

 また、各社がシンプルな低価格パソコンのラインアップを拡大する一方で、思わぬ副産物も生まれている。それが「タイプの多様化」である(図2)。基本的にシンプルな機能という特徴は共通だが、拡張性のあるミドルタワータイプ、省スペースのスリム型タワーやキューブ型、Mac miniのような手のひらサイズの極小キューブまで、デザインやサイズは思いのほか豊富。そのため、自分のニーズに合った低価格マシンを手に入れることができる。


 例えば、将来的にさまざまな拡張カードを増設して機能アップを図りたい人なら、拡張ベイおよび拡張スロットが豊富な「ミドルタワー型」、オフィスなどで机の上のPC占有スペースを少なくしたい場合は「コンパクトタイプ」、また、リビングなどインテリアに凝った部屋に違和感無く溶け込むマシンが欲しい場合は「キューブ型」といった具合に、特徴の異なったPCが豊富に存在するおかげで、用途にあったタイプを選べるようになっている。

 以上、ざっと低価格路線のデスクトップPCを検証してきたが、これ以上、低価格化が加速した場合、この分野は果たしてビジネスとして成り立つのだろうか。低価格路線に限らず、PCというのは総じて「儲からない」というのが常識。IT不況が叫ばれる現在ではあるが、実は不況というのはPCやハードウェア類の製造部門だけであり、ソフトウェア産業やITコンサルティング分野は好調。こうした状況のなか、各メーカーはパソコン本体ではなく、オプションパーツ類やバンドルソフトの追加などで利益を上げてしのぎあう「痛みをともなう争い」が続いているのが現状である。

 しかし、アップルの「Mac mini」のような、シンプルな構成で内容的にも価格相応のマシンながら、明確なコンセプトと自身のブランド力を巧みに利用して大きな注目を浴びる製品が登場したことは、今後、この分野が大きく変わる一つの転機となるかもしれない。かつてのピピン@アットマークのようなシンプルな構成と、「インターネット用途限定」といった明確なコンセプトを打ち出した極めてシンプルなマシンがこの分野を席巻し、単なる低価格デスクトップPCとは異なる新たな分野をつくり出していく可能性もあるだろう。(フリージャーナリスト・市川昭彦<Aqui-Z>)