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コミュニケーションと生活者視点を重視してファンの拡大を目指すツインバード

 2022年に社名を変更したツインバードは長期ビジョン「VISION 2030」で、家電製品事業においては熱狂的なファン100万人を獲得するという目標を掲げている。メーカーとして良い製品を開発するのは当然だが、消費者への認知や共感を呼び起こすマーケティング活動の重要性も高まっている。同社の取締役でマーケティングを担当する浅見孝幸氏にその取り組みを聞いた。

ホームページ内に特設サイトを設けている
ツインバードの匠ブランジェトースター

2つの異なるブランドラインを展開

 2021年にリブランディング(ブランドの再構築)をし、翌年には旧社名のツインバード工業から工業を削除して社名を変更したツインバード。「それまでは、ややもするとマーケティングコミュニケーションにバラつきがありましたので、一貫性を持ったコミュニケーションを心がけています」と浅見氏は語る。

 新しいツインバードを打ち出すためにホームページも刷新し、SNSでの情報発信も強化している。ホームページではメーカーの想いや考えが大きくフィーチャーされ、製品理解もさることながらツインバードという企業に対する理解を促進させる仕掛けになっている。

 浅見氏は「生活者から見て、ライフスタイルメーカーであるツインバードがイメージできるようにクリエイティブの部分も統一感を持った表現にしています」という。多くのメーカーがホームページでは自社の製品紹介やキャンペーンなど、販売促進に重きを置くのとは明らかに異なっている。
 
ライフスタイルメーカーとしてイメージできる発信に取り組む
ツインバード取締役の浅見孝幸氏

 現在、同社では特定の製品カテゴリーではなく、コンセプトを持った「匠プレミアム」と「感動シンプル」の2つのブランドラインを展開している。前者のコンセプトは匠の暗黙知である技を家電の技術によって具現化するもので、後者は本質機能の追求と同時に生活者にとっての“不”を解決するものだ。

 匠プレミアムの全自動コーヒーメーカー CM-D465、D457は“コーヒー界のレジェンド”といわれる東京都・南千住の老舗喫茶店カフェ・バッハ店主が監修し、ハンドドリップで淹れたコーヒーの味を全自動で再現する製品。匠ブランジェトースター TS-D486Bは世界大会で優勝した千葉県・成田のトモニパンのオーナーシェフと共同開発し、焼き立てのパンの食感や味を再現するトースターだ。
 
匠ブランジェトースターは世界大会優勝シェフの技を再現

 いずれの製品も監修者の想いを動画でホームページにアップしているが、その狙いについて浅見氏は「文字や写真だけでなく、動画にして見ていただくことで、監修者である匠の考えやこだわりがより伝わりやすいと考えました。製品にまつわるストーリーも見ていただくことで、より製品の価値を理解してもらえるのではないかと思います」と語る。

 一方、感動シンプルは前述のとおり、使い勝手や機能面で“不”となっている部分を解決した製品群。スチームオーブンレンジ DR-F871W/FH71Bは上下からの蒸気で食材を包み込み、まんべんなく蒸す独自技術のWスチームでしっかりと蒸すことにこだわった製品で、中身が見える冷蔵庫 HR-EI35Bはタッチすると冷蔵室の庫内が見えるローボディ設計の製品だ。
 
スチームオーブンレンジはせいろ蒸しからヒントを得て開発

 「既存のオーブンレンジでは、しっかり蒸せる製品が少ないということが製品開発のきっかけでした。冷蔵庫は上段がデッドスペースになることが多く、その分中段に食材が詰め込まれてしまうことを解消できないかというのが開発のきっかけでした」という。どちらも製品開発ありきではなく、生活者の視点が開発の原点になっている。

 この感動シンプルでも製品によって動画をホームページやYouTubeのツインバード公式チャンネルにアップ。課題解決のポイントやライフスタイルのシーンがイメージできるよう工夫をしている。

 提供価値の異なる2つのブランドラインだが、いずれもターゲットとして据えているのは少人数、あるいは単身世帯だ。「製品の価値を理解していただける方を見定めて、匠プレミアムと感動シンプルという2つの切り口でその方に合うモノづくりに取り組んでいます」。
 
異なる2つのブランドだが、
共通するのはものづくりの信念である『心にささるものだけを。』
 

匠ブランジェトースターの発売後に店頭体感イベント展開

 ツインバードでは匠ブランジェトースターの発売後、2023年12月から全国の家電量販店を中心に店頭体感イベントを展開している。動画も含めたホームページやSNSの活用は、生活者への認知という点でマーケティングコミュニケーションの大きな活動の一つだが、この体感イベントはさらに一歩踏み込んだコミュニケーションの実現といえるだろう。

 店頭体感イベントについて浅見氏は次のように話す。「製品の発売前に消費者を集めてグループインタビューを実施しました。その結果からも匠ブランジェトースターが再現する味には自信がありました。とはいえ、体験に勝る価値訴求はありません。どれだけ多くの人に体験してもらえるかを重視し、家電量販店の店頭等で製品を体感していただくイベントを実施することにしました」。

 12月2日から主に週末の土日、北海道から九州まで複数の家電量販店の大型店舗を中心に毎週、イベントを実施した。通常、店頭イベントではアウトソーシングしたスタッフを配置することが多いが、同社の体感イベントでは営業やマーケティング部門の社員を中心に管理部門の社員までもが売り場で来店客に対応した。
 
店頭体感イベントでは
全社一丸となってお客の体感をバックアップ

 その準備や実施には相当の苦労があったことは容易に想像できるが、その成果は大きかったと浅見氏は語る。「なんといっても社員が直接、体験された方の生の声を聞くことができました。実際に体験された方からは非常にポジティブな感想を聞けて、対応した社員にとっても大きな自信となりましたし、その生の声は今後の商品開発や販売にも生かせます」。

 また、体感イベントは家電量販店のスタッフにも自ら体験してもらうことで情報提供の場にもなったという。社員にとっては自信につながり、来店客と家電量販店の販売スタッフには製品の良さを分かってもらった。販売スタッフは匠ブランジェトースターの接客で、自身の体験を接客に活かせる。「販売店のスタッフの方々も自信を持って接客できますので、体感イベントはポジティブスパイラルをつくることができたと考えています」。

 この店頭体感イベントについては期間を設けていない。今後も展開していくことでツインバードの認知度を高め、製品の価値をより理解してもらう活動を続けていく考えだ。
 

お客の生の声を聞いて開発にフィードバック

 生の声を聞くという観点で、同社が注力しているのがお客様サービス係だ。消費者からの問い合わせについては昨今、メールやチャットボットなどで対応する傾向にある。同社でもホームページに問い合わせフォームを設けているが、フリーダイヤルによる電話でも対応している。

 一般的に電話での問い合わせは、アウトソーシングのコールセンターを採用するケースが多い。だが、同社は本社内にコールセンター対応を行うお客様サービス係を設けている。

 「お客様サービス係は製品の問い合わせや修理などに対応する部署で、開発部署の隣に配置しています。問い合わせで寄せられたお客様の声で必要なものは開発部門にフィードバックすることで、製品の改善やブラッシュアップにつなげています」と浅見氏は話す。これも広義な意味でマーケティングコミュニケーションの一つと捉えることができる。
 
お客様サービス係は
問い合わせに対して実際の製品を手に取って対応

 ツインバードでは時代に左右されない、ずっと安心して使える、本質的な豊かさを実現する、の三点を大切にすべき価値観として考えているという。「これらをカバーするには、やはり品質が大事。品質重視のモノづくりを行っていくことで、ユーザーには持続可能な豊かさを提供できると考えています。このモノづくりの重要な要素が生活者視点です。生活者視点を大切にして、よりコミュニケーションを取ってCRM活動に取り組んでいきます」と浅見氏は結んだ。

 マーケティングはともすれば理論やデータ分析にフォーカスして、肝心のターゲットである生活者を画一的な集合として捉えてしまう場合もある。ツインバードは生活者の声をしっかりと拾いながらマーケティングの力を生かして今後のモノづくりや販促施策を進めていく。これからどのような製品が展開されるのか期待したい。(BCN総研・風間理男)
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