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どうなる「年収130の壁」!? 問題は「連続2年まで」の時限措置

時事ネタ

2023/09/30 18:00

【家電コンサルのお得な話・146】 9月24日、各報道機関が「厚生労働省は年収130万円を超えても、連続2年までなら扶養の範囲内とする方針を決めた」ことを報じた。この10月から始まる制度は2年間という時限措置だが、「130万円を超えても扶養の範囲内」となれば、従来のような勤務調整をする必要なく、企業・パート労働者等、双方にメリットが生まれることになる。ただ、問題は「連続2年まで」という制限だ。

図1 税金の壁と社会保険の壁

デメリットしかない「年収130万円の壁」を改善

 10月から始まる制度の対象は「従業員が100人以下の企業で働いているパート労働者等」である。このパート労働者等が配偶者(扶養者)の扶養に入っている場合、これまでは年収130万円を超えると扶養者の社会保険の扶養対象外となり、自分で社会保険に加入することが求められる。実質の手取り額が大幅に減少する上、年金も増えないため、130万円の壁はデメリットしかない。

 そのため、現状では130万円を超えそうになると、パート労働者等は勤務時間の調整を申し出るようになる。結果として、企業は人手不足、パート労働者等は収入を抑制することとなり、お互いにとって思わしくない状況をつくり出している。

 この10月から始まる制度は2年間の時限措置だが、「130万円を超えても扶養の範囲内」となれば、こういった勤務調整をする必要なく、企業・パート労働者等、双方にメリットが生まれる。

 この制度の条件には、雇用主が「130万円を超えたのは、残業等、一時的な収入増であること」を証明し、健康保険組合等に個別に判断してもらうことが挙げられている。この手続きにより雇用主らの負担が増加しないよう、書類作成を簡素化することも考えられている。

2025年に予定されている「年金制度改正」が本丸か

 ただ、問題は「連続2年まで」という制限である。3年連続となると雇用主側も「一時的なもの」とは言えなくなり、パート労働者等は扶養の対象から外れ、自分で社会保険に加入することが求められる。

 ちょうど、ここまで記載したとき、岸田首相が会見(9月25日)で「労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金制度を創設する」ことを発表した。これは、106万円の壁(図1参照)に対するもので、従業員101人以上の企業が対象となっている。

 これらの制度によりさらに働きやすくなるが、気になるのが2025年に予定されている5年に一度の年金制度改正である。

 従業員101人以上の企業では106万円が社会保険の加入対象だが、24年10月からは51人以上に引き下げることが既に決定している。
 
図2 「106万円の壁」と2024年10月からの改正

 社会保険の加入対象引き下げの流れと「国の基本姿勢が、より多くの人から社会保険料を徴収すること」を考えると「各壁の金額引き下げ」や「第3号被保険者の廃止」などが行われるかもしれない。

 目先の今は働きやすくなったとしても、3年後に大幅な負担増の可能性もあるため、今後の動向を注視していく必要がありそうだ。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)


■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。
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