2018年12月に実施して大反響だったスマートフォン(スマホ)決済サービスPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」は、大手家電量販のビックカメラにとって苦い教訓となった。ビックカメラがこのほど発表した19年8月期の通期連結決算は、売上高が8940億円(前年比5.9%増)と好調だったものの、営業利益が258億円(同11.5%減)、経常利益や当期純利益も2桁の減益となった。その減益要因の一端に、PayPayのキャンペーンが関係していた。

ビックカメラの店頭に顧客が殺到

スマホ決済サービス普及の火付け役になった2018年12月のPayPayの
「100億円あげちゃうキャンペーン」だが

 PayPayで支払うと20%分のPayPayボーナスが還元された同キャンペーンは、スマホ決済サービスの認知度がまだ低かったこともあり、家電量販の中でもスマホ決済に関心の高い都市部に店舗が多いビックカメラに、高額の家電製品を求めて顧客が殺到した。

 その結果、ビックカメラ単体の18年12月の売上高は23.4%増(速報ベース)に急増した。「通常の値引き率の低いApple製品やゲームにお客様が殺到した」と宮嶋宏幸社長は、先の10月18日の決算説明会であらためて、普段からあまり値引きしない商品の購入に集中したことを明かした。一般ユーザーだけでなく、その差益でビジネスをする転売業者などのターゲットにもなったとされる。

 確かに、昨年12月の売上高伸び率の内訳をみると、PCを含む情報通信機器は32.9%増、ゲームを含むその他商品が26.9%増だった。テレビなどの音響映像商品(14.5%増)や白物家電などの家庭電化商品(19.2%増)も、それはそれで好調だったが、それをも大幅に上回る勢いだったことが分かる。
 
2018年12月の伸びが顕著だった。
19年9月は消費増税の駆け込みで今期(20年8月期)決算に反映される

キャンペーン原資はPayPayなのに、利益が下がるからくり

 ただ通常なら、キャンペーンで多くの顧客が来店して売り上げが大幅に増えれば、連動して利益も向上するはず。とりわけキャンペーンによる還元原資は、ビックカメラではなくPayPayが負担するものだろう。なおさら利益が増えてもおかしくない。なぜ、利益は減ってしまったのか。

 それは、Apple商品やゲームソフトなどの粗利率がほかの商品に比べて低いからだ。宮嶋社長は、「もともとPCの粗利率は高くないが、中でも粗利水準の低いApple製PCの販売が好調だったことで、売上全体の粗利率に大きな影響を及ぼした」と語った。粗利率の低い商品が昨年を上回るボリュームで売れたため、結果的に昨年よりも利益率が低下してしまったというからくりだ。

 今後については、「あそこまでの現象は、もう起こらないのではないか。今回の件を教訓に、不確定要因にならないようにしていきたい」と戒める。同様のことが起きない一つの根拠に、100億円キャンペーンでは、20%の還元額の上限金額が月5万円と高かったことを挙げる。これが、家電製品の購入に拍車をかけてしまった。

 今では、上限を数千円に抑えたりするなど、金額の低い商品をターゲットにしていることから、「日用品の購入による、より広範囲な会員の獲得に向かっているように思う」と宮嶋社長は分析する。

 ちなみに、ビックカメラでは金額ベースで6割以上がキャッシュレス決済となっているが、その多くはクレジットカード決済で、電子マネーを含むスマホ決済の比率は数%程度だという。PayPayの100億円キャンペーンがいかに異例で強烈だったかを浮き彫りにする。

 昨年12月における売上高の伸び率が高すぎたこともあり、反動減から業界平均を上回るまでに6カ月ほどを要したというビックカメラ。20年8月期は、年内が厳しく推移すると織り込み、年明けから上回ると予想する。

 東京五輪に向けた大画面テレビや、時短ニーズによる白物家電の販売増、利益率の高いPB商品の開発・販売、1000億円を突破したEC販売とのオムニチャネル化、3300平方メートルの中規模店の販売効率の向上などで、20年8月期は売上高9410億円(5.3%増)、営業利益252億円(9.8%増)、経常利益269億円(4.0%増)の増収増益を予想する。(BCN・細田 立圭志)