既報の通り、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯電話大手3社が、5月9日から「+メッセージ」を開始する。SMSを発展させた国際規格「RCS」(Rich Communication Services)を採用する新しいメッセージサービスだが、平たく言うならば「電話番号で送れるLINE」。各社は「LINEへの対抗サービスではない」と強調するが、新サービスでできることはLINEと酷似する。国内のスマートフォンユーザーでは年代を問わず、LINEが幅広く使われるなか、勝算はあるのだろうか。

LINEとの競合は否定するも、アプリの見た目は「キャリア版LINE」そのもの
LINEとの競合は否定するも、アプリの見た目は「キャリア版LINE」そのもの

「友だち」以外にも送れるメリット

 「SMSは電話番号だけでテキストが送れるという点で評価されているが、送れる文字数を多くしたい、写真などのファイルを送りたいといった多くの要望をいただいている。+メッセージでは、電話番号で送れるSMSのよさを継承しながら、さらに便利で使いやすいサービスを提供する」「LINEに対抗という意識はない。携帯電話におけるメッセージサービスの正常進化、SMSの機能拡張というかたち」

 携帯大手3社共同という異例の形式で開催された発表会で、NTTドコモ スマートライフビジネス本部スマートライフ推進部 コミュニケーションサービス担当部長の藤間良樹氏は、+メッセージを提供する意図について、そう説明した。
 
NTTドコモ スマートライフビジネス本部 藤間良樹担当部長
NTTドコモ スマートライフビジネス本部 藤間良樹担当部長

 LINEに代表されるチャットアプリは、基本的に「友だち登録」などで事前につながっている相手とメッセージのやりとりを行う。このため、電話番号は知っているがLINEではつながっていない仕事上の知人関係や、企業と顧客との間での連絡には使いにくいという問題があった。

 +メッセージは、SMSと同様に電話番号だけでメッセージの送受信が可能で、70文字を超える文字や写真なども含めることができるので、LINEとSMSの利便性をあわせもつサービスになっている。当初は+メッセージのアプリをダウンロードする必要があるが、今後3社が販売するAndroidスマートフォンには+メッセージが標準搭載となる。電話番号でユーザーが特定され、ID・パスワードも不要なため、アカウント登録の煩雑さを嫌って、チャットアプリを使わなかった高齢者などの間でも利用が進む可能性がある。

Wi-Fiでも送信可能、迷惑メッセージ対策は

 しかし、+メッセージの普及には課題も多い。まず、ここ数年で拡大した、いわゆる“格安SIM”ユーザーとの間では、今のところメッセージのやりとりは行えない。MVNOの利用者だけでなく、ソフトバンクの別ブランド・ワイモバイルも+メッセージには非対応だという。

 +メッセージのアプリで電話帳を開くと、+メッセージを送信可能な相手にはそれを示すアイコンが表示される。それ以外の相手にはSMSでテキストのみが送信されるが、友だちリストに表示される相手には区別なくメッセージを送れるLINEに比べると、少しわかりにくい。
 
吹き出しと+のマークが付いていない相手にはSMSで送信される
吹き出しと+のマークが付いていない相手にはSMSで送信される

 3社では今後、MVNOからの要望に応じて、+メッセージの提供を検討していくとしているが、おそらく大手3社がもつRCSの設備を、一定の対価を得る条件のもとでMVNOに使用を認めていくことになるだろう。しかし、現状のMVNO各社に、+メッセージを積極的に提供する動機があるとは考えにくい。大手3社がMVNOに対して、従来のSMSと同じ費用でRCSを解放するといった施策を打たない限り、格安SIMユーザーに対する+メッセージの浸透は進まないのではないか。

 +メッセージをビジネスとして、どのように発展させていくかも現時点ではみえにくい。スタンプなど有料コンテンツの提供、決済サービスとの連携といった道筋が考えられるが、現時点ではそのような収益化の方策については完全に未定だ。+メッセージはWi-Fi経由でも送受信可能なため、通信料収入の拡大効果も限定的だ。当面の収益化が難しいサービスに、各社がどこまで本気で取り組めるかも気になるところだ。

 また、電話番号だけでメッセージを送れるため、広告配信にも使用される恐れがある。従来のSMSは1通あたり最低3円の通信料がかかったが、+メッセージは前述の通り、Wi-Fiでも送れるので配信側にかかるコストは劇的に低下する。「ある一定のルールのもとで、問題があれば止める」(NTTドコモの藤間氏)仕組みがあるとしているが、ドメイン単位で受信を拒否するといった設定が行えない+メッセージは、ユーザーが行える対策も限られてくる。

 +メッセージのアプリをみると、3社がそれぞれが開発したソフトウェアであるにもかかわらず、画面のデザインやメニューの文言なども含め、ほとんど共通の仕様に仕上がっている。おそらく、ユーザーに混乱を与えないよう、事前に3社の間で相当のすりあわせを行ったのだろう。
 
Android版アプリは、共通の仕様に基づき各社が独自に提供する
Android版アプリは、共通の仕様に基づき各社が独自に提供する

 ただ、今後も3社の足並みを揃えること自体に時間がかかってしまうと、何か問題が発生した際に対応が遅れる可能性もある。迷惑メール対策なら文字通り「迷惑」の範囲で収まるが、過去のチャットアプリをみていると、この種のツールを通じて若年層が犯罪に巻き込まれるといった事例もある。ときには「通信の秘密」との兼ね合いが問われるような微妙な局面においても、3社がスピード感をもって対策を打っていけるかも試される。

LINEとは異なる用途に活路か

 このように課題も多く、国内において+メッセージがLINEの牙城を崩すのは容易ではないと考えられる。ただ、ベースとなるRCS自体は、前身の技術から数えると10年以上の歴史があり、チャットアプリ対抗のために開発されたわけではない。欧米を中心に世界の携帯電話事業者が採用しており、Androidの提供元であるグーグルも積極的に推進している。

 先日、LINEが交通・運輸や電気・ガス各社と組み、企業から顧客への連絡手段としてLINEを使うための「通知メッセージ」機能を発表したが、このような用途であれば、むしろ携帯3社のほうが有利な位置にいる。端末標準機能としての搭載が進み、企業による利用が始まるまで、+メッセージの普及は長期戦となることが予想される。(BCN・日高 彰)