敵か味方か、急成長するCtoC市場

オピニオン

2017/08/01 11:43

 フリマアプリを利用した消費者間での商取引が活発化している。影響を真っ先に受けたのは、リユースショップを運営する企業だ。昨年夏を境に業績が悪化し、窮地に立たされたところもある。消費者間取引の規模は膨らみ続けており、B2C市場全体に影響がおよぶ可能性は低くはない。なぜここまで急速に市場は拡大したのか。そして、既存の小売りと共存することは可能なのだろうか。



■行政 <経済産業省
 

経済産業省 岡北有平 商務情報政策局情報経済課 課長補佐

スマホ普及で若年層に浸透 高まる節約志向も追い風に

 2017年7月にフリマアプリを代表する存在である「メルカリ」が4周年を迎えた。自社ホームページで公開したインフォグラフィックによると、ダウンロード数は7500万(日本で5000万、米国で2500万)を突破。月間の流通総額は100億円を超えたという。
 

 国もオンラインにおけるC2C市場の盛り上がりを新しい経済活動として捉えている。経済産業省が毎年実施している「電子商取引に関する市場調査」には、2016年度分からC2Cの市場規模が初めて追加された。調査を担当した商務情報政策局 情報経済課 課長補佐の岡北有平氏は、「スマートフォンの普及と節約志向の高まりがフリマアプリの拡大に拍車をかけたのではないか」と分析する。
 

 安心して商取引するための土壌が、すでに整えられていたこともプラスに働いた。ネットオークションの黎明期には、決済は完了したが物が届かないという問題を解決するために、売り手と買い手の間に第三者が介入することで取引の安心を担保するエスクローの仕組みが培われた。フリマアプリが若年層を中心に支持を得ているのは、このエスクローの成熟があってこそだ。

新しい経済活動に期待 成長をサポートする施策も

 17年4月にメルカリで発生した「現金出品」の横行は記憶に新しいが、行政の見方は冷静だ。「メルカリの対応は迅速だった。それ以降、出品に対するレギュレーションも強化されている。トラブルを事前に防止することは必要だが、新しい経済活動を促進するためにも市場が健全に成長できるようサポートしていくことが重要」と、国が推奨するシェアリングエコノミーの一形態としてフリマアプリに期待を寄せる。

 経済産業省では16年に「シェアリングエコノミー検討会議」を実施し、フリマアプリを含む幅広いシェアリングサービスの今後について議論した。そのなかで、新しいビジネスモデルが登場する業界では、一律の法規制はマッチしないという考えが示された。

 そこで策定されたのが、「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」だ。相談窓口の設置や本人確認の実施、トラブル時の保険制度などの項目が設けられており、シェア事業者が安全性を確保するための判断基準にすることを目的とする。前例のない新しいムーブメントゆえ、フリマアプリ関連の問題は大げさに取り上げられる傾向にある。

 しかし、行政は発生したトラブルには的確に対処することを求めつつも、指導によってプラットフォーム事業者が委縮する事態は避けたいと考えているようだ。もちろん今後の議論次第では、現在のサービスに見直しを要求する可能性はあるが、まずは成長の土台を整えることに意識を向ける。


■フリマアプリ<ラクマ / フリル>
 

楽天 長谷川健一朗 ECカンパニー C2C事業部 ヴァイスジェネラルマネージャー
 

手数料無料でメルカリを追撃 「将来性考えれば必要な投資」

 最大のユーザー数を誇る「メルカリ」をライバルも追撃する。楽天が運営する「ラクマ」と「フリル」は、「メルカリ」が出品者の手数料を販売価格の10%を設定しているのに対して“手数料無料”で差異化を図る。相当な負担を強いる戦略だが、「ラクマ」の運営責任者であるECカンパニーC2C事業部 ヴァイスジェネラルマネージャーの長谷川健一朗氏は、「フリマアプリの将来性を考えれば必要な投資」と語る。

 経済産業省の岡北氏と同じくフリマアプリの急速な拡大は、スマホおよびモバイルアプリ普及の影響と分析する。「手軽ゆえに出品数はどんどん増える。すると購入したいユーザーの検索機会が増え、流通金額も増える」。好循環が連鎖していることに加えて、オークションよりスピーディに現金化できる点も支持を集める要因のようだ。長谷川氏は「欲しい商品を購入するための軍資金をつくる目的で利用しているユーザーが非常に多い」と、ブームの中心にいる若年層の行動様式の変化を指摘する。

手作りや廃棄物も出品対象? 広がる商取引の可能性

 従来のC2Cサービスと比較して決定的に異なるのが、出品商品のカテゴリだ。フリマアプリ黎明期である3~4年前の出品商品は、ブランド品の衣類やアクセサリが中心で、リユースショップや古着屋のオンライン版に近いイメージだった。しかし、フリマアプリはリユース事業者のように在庫や価格変動を気にする必要がないため、徐々に対象は拡大。例えば、ファストファッションは価格が手頃だが、実は在庫を残さないために流通量は多くなく、中古でも欲しいというユーザーは一定数存在するという。

 ハンドメイドのアクセサリや家庭菜園で育てた野菜など、これまで個人では販売自体が難しかったアイテムもフリマアプリなら出品可能だ。趣味を生かしたこづかい稼ぎとしても機能している。さらにユニークなのが、これまで無価値だと思われていたアイテムも対象になりうることだ。「夏休みにはトイレットペーパーの芯が子どもの自由工作の材料として売れる」。ビジネスとして意識していない分、既存の小売りが思いもよらなかった需要をフリマアプリが発掘するかもしれない。
 

ハンドメイドのアクセサリやトイレットペーパーの芯も出品対象に
 

逆転の可能性はあり 楽天が追求する安全性

 ユーザー数を比較すると「メルカリ」の優位は盤石にみえるが、長谷川氏は「逆転の可能性はある」と語る。手数料無料はもちろん、楽天市場で培った“安全な商取引”を実現するノウハウがあるからだ。現時点でフリマアプリを利用していない潜在顧客の最大の障壁は安全性だという。「ラクマ」では6月からAIを活用した出品監視を導入。安全性を高めるべくプラットフォームを強化する。

 若年層が中心ということもありサービスが浸透すれば、教育機関で議論される機会は増えてくるだろう。そうなれば、安全性は決定打にもなりうる。新興市場ゆえに、ちょっとしたきっかけでシェアバランスがひっくり返ることは十分hに考えられる。


■リユースショップ<ソフマップ
 

ソフマップ 渡辺武志 代表取締役社長 代表執行役員

 デジタル家電の中古販売を強みとしてきたソフマップもC2Cサービスを脅威に感じている。渡辺武志 代表取締役社長 代表執行役員は「中古品取引の規模は伸びているが、フリマアプリで売るという選択肢の台頭によって、事業として中古品販売を営む者は厳しい状況に立たされている」と語る。
 

ソフマップの買取カウンター

 対策としてソフマップは、新規ターゲットを模索する。例えば、C2Cサービスを利用しないシニア層。購入した商品で不要になったものを売ってもらうように、これまで以上に働きかけていく。すでにグループ会社のビックカメラコジマの約200店舗には買い取りカウンターを設置。買い上げた商品を販売可能な商品に再生する拠点をもつメリットも生かしながら、ビジネスの循環を強化する。「売りながら買い取る力をつけ、販売と買い取りのサイクルを徹底できれば、まだまだチャンスはある」(渡辺社長)。C2C普及後の生き残りをかけた戦いはすでに始まっている。(BCN・大蔵 大輔)


※『BCN RETAIL REVIEW』2017年8月号から転載

 

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