再開発で塗り変わる商圏、東京都多摩エリアの例

データ

2017/07/31 22:00

 【Visualization~商圏・人口・消費……地域経済分析システム「RESAS」より】 内閣府 地方創生推進室が作成した地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」から、商圏や人口、消費行動に関わるグラフ/数字を紹介する。

第6回・大型店出店の影響

 全国各地で再開発が進んでいる。特に東京都多摩エリアは活発で、わずか数年で、JR中央線沿線の商圏は激変した。

 立川市は2014年以降、高い集客力を持った家具専門店「イケア立川」、大型ショッピングモール「ららぽーと立川立飛」がオープンし、それらに対抗するため、駅周辺にも大型店の出店や再オープンが相次ぐ。駅直結の32階建ての超高層複合ビル「立川タクロス」の3~7階にはヤマダ電機が出店。新しいコンセプトの都市型店舗として、カフェを併設するなど、新しい試みを取り入れた。

 「RESAS」の「地域経済循環マップ」によると、これら大型店が出店する以前の10年の集計値で、立川市の雇用者所得(総額)は地域住民ベースで4758億円、地域内勤務者ベースで6275億円、地域内収支(地域住民ベースの所得と地域内勤務者ベースの所得の差額)はマイナス1517億円で、地域外に所得が流出している、すなわち他の地域に住む人が多く働いている状況にあった。

 対して、近隣の八王子市、日野市は地域内収支はプラス、すなわち、雇用が少なく、住人が他の地域に働きに出ている状況にあった。しかし、日野市のJR豊田駅から徒歩3分の立地に、14年に「イオンモール多摩平の森」がオープン。八王子市の高尾駅近くには今年6月、エリア最大級のショッピングモール「イーアス高尾」がオープンした。こちらにはノジマが出店している。
 

 

 雇用や税収、昼間人口に対する大型店の影響は大きく、特に、関係者の期待が集まる再開発エリアへの出店は、確実に成功が見込める安定性と、他の店にはない独自性の両方を打ち出さなければならず、舵取りは難しいところだ。(BCN・嵯峨野 芙美)


■地域経済分析システム「RESAS」
 「RESAS」は、国の統計資料を中心に、民間の調査データも含めた膨大な量のデータを「見える化」して、課題解決を手助けするツール。都道府県/市町村単位で集計でき、全国や他の自治体の数値と簡単に比較できる。

※『BCN RETAIL REVIEW』2017年8月号から転載