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<ヘッドホン・イヤホンメーカー座談会・2016秋>製品のアピールポイントについて

特集

2016/11/28 11:00

 ここ数年で、音質だけでなく、デザイン性や機能を売りにするモデルが急増した。顧客に選ばれるセールスポイントとは何だろうか。

■製品のアピールポイントについて

顧客の目的を意識 成功例にみる共通点

 ヘッドホン・イヤホンの本質は「良い音」であることだが、全体のレベルが底上げされたことで、音質だけの差異化はシビアになってきた。ラインアップ数が爆発的に増加していることもあり、顧客に選ばれるためには、別の切り口でキラリと光るアピールポイントが必要だ。

 分かりやすい例だと、デザイン性。ヘッドホン・イヤホンがファッションアイテムとして認識されるようになり、各社とも顧客動向に合わせて、デザインの刷新に取り組んでいる。また、ワイヤレス・ノイズキャンセリング・防水といった機能も、メリットが明確で購入を後押しする材料になり得ている。
 

形状もカラーも多彩なラインアップが登場、デザインの重要性は高まっている

 デザイン・機能という切り口に共通しているのは、どんなシーンで、どのように音楽を聴きたいか、という顧客の目的が土台にあることだ。座談会では、この成功例をヒントに新しい切り口についての議論が活発に行われた。
 

JVCケンウッドの吉田氏(左)とボーズの硲氏
 

一点特化のモデルを追求 顧客に刺さる新機軸とは?

 一例として挙がったキーワードは「ライブ」だ。CD販売が低迷するなかで、生で音楽を聴く機会であるライブやフェスの来場者は、年々増加傾向にある。「ライブのような臨場感」を表現するモデルであれば、顧客の琴線に触れる範囲は広そうだ。「ある人にとっては50点でも、ある人にとっては100点を目指す」というコメントが出たが、中途半端では山ほどある他の製品に埋もれてしまう。ラインアップが氾濫しているからこそ、キャラクターの強度が要求される。

 同じように存在感が高まっている「アニソン」も、顧客に刺さる切り口として注目を集める。「海外ではストリーミング配信が全盛期を迎えているが、日本ではいまいち普及していない。かつてガラケー時代に着うたが浸透していたように、日本は音楽文化についてもガラパゴスな面がある。アニソンもその部類かもしれない」という見解も。ソフトを軸にしたヘッドホン・イヤホンは今後、ますます増えていきそうだ。

 逆にハードを切り口にした新しい視点もある。例えば、売り場で徐々にコーナーが拡大している「リケーブル」。同じヘッドホン・イヤホンでもケーブルを交換することで音のカスタマイズを楽しむスタイルが台頭してきている。「リケーブルはカスタマイズだけでなく、断線リスクを回避できるのも利点」という意見もあり、双方の需要から見逃せないトレンドだ。
 

ケーブル交換の需要も拡大中、カスタマイズ性だけでなく耐久性からも支持を受ける

 カスタマイズ性の追求は、連携アプリを用意するモデルが急増したこともあり、将来的に重要なキーワードになりそうだが、一方で「製品選びをより複雑にするのでは?」という反論も挙がった。飽くことなく音を探究する顧客もいれば、シンプルイズベストを求める顧客もいる。二極化するターゲットそれぞれに満足度の高いモデルを提供するために、顧客の志向を読み取る力がこれまで以上に求められるだろう。
 
<ヘッドホン・イヤホンメーカー座談会・2016秋>
開催日:2016年11月2日
場所:BCN 22世紀アカデミールーム
モデレーター:タイムマシン(e☆イヤホン)
参加メーカー:エレコム、JVCケンウッド、ソニーマーケティング、ディーアンドエムホールディングス、日立マクセル、ボーズ(50音順)


・ヘッドホン・イヤホンメーカー座談会
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2016年12月号から転載