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<ヘッドホン・イヤホンメーカー座談会・2016秋>ハイレゾ市場の現状と活性化に必要なこととは

特集

2016/11/28 11:00

 2013年秋、ソニーがオーディオ事業でハイレゾリューション(ハイレゾ)対応製品を全面的に展開すると発表した。以降、オーディオ業界にハイレゾの波がきている。そのなかで、ヘッドホン・イヤホン市場のハイレゾ化はどのように拡大しているのか。

■ハイレゾ市場の現状と活性化に必要なこととは

拡大するハイレゾ市場 今後の発展にも期待

 ヘッドホン・イヤホン市場で、ハイレゾ対応モデルの販売台数・金額は伸びている。市場拡大の背景には「いい音を聞きたいというニーズがある」という。CDの約6.5倍の音の情報量を収めたハイレゾ音源は、アーティストの息づかいやライブの空気感など、CDでは聞こえなかったディテールやニュアンスまでを感じ取ることができる。
 

売り場でもハイレゾ対応製品の存在感は増す。ハイレゾマークの認知度も上がってきた

 CDで何千、何万回と聴いた曲を、ハイレゾ音源で視聴すると「これまで聞こえなかった楽器の音が聞こえたり、音の奥行きがまったく違って聞こえた」と、音の違いに新しい感動が得られる。このようなユーザー体験こそが、ハイレゾ市場の拡大に必要不可欠な要素となっている。
 

10月末にオープンした「e☆イヤホン梅田EST店」。ハイレゾ対応スマホ聴き比べコーナーを設置する

 ハイレゾのロゴマークも商品を選ぶ際に大いに貢献しているという。イヤホン・ヘッドホン市場は参入メーカーが多く、売り場には数多くの商品が並ぶ。そのなかから顧客が選ぶ際、「ロゴマークがついた商品は音がいい」「ロゴマークの付いた商品を選べば大丈夫」という安心感につながっている。

 また「ロゴマークの付いた商品自体が増えることで、さらにハイレゾに対する関心が高まるという好循環を描きたい」という、メーカー各社の思いは同じだ。

 ハイレゾ市場は、発展途上のカテゴリだ。ハイレゾ対応のヘッドホン・イヤホンはまだ伸びしろがあり、各社とも引き続き販売店と協力して強化していく方針に変わりはない。
 

日立マクセルの河原氏(左)とソニーマーケティングの新宮氏
 

ハイレゾ偏重に危惧、音の良さは伝わっているか

 ただ、座談会ではハイレゾ化が進むなか、ハイレゾマークに振り回されすぎることを危惧する声も上がった。「マークがなくてもいい音が出るモデルがある」のに、購入者の間で「買うならハイレゾでないと」といった偏重した価値観が広がっていく恐れがある。

 行き過ぎたハイレゾ偏重は、対応しないモデルが売れなくなったり、コア層からユーザーが広がらなくなったり、まさに自分で自分の首を絞めることになりかねない。「マークが付いていれば大丈夫、というのもどこかで限界がくる」と警鐘を鳴らすメーカーもあった。

 ハイレゾ本来の魅力を、ユーザーに伝えきれているか、という不安もつきまとう。圧縮音源をダウンロードして視聴する人は多く、それで満足してしまっている人も少なくない。また、音に対してどのくらいの深さでつきあっているか、個人差もある。

 つまり、ハイレゾだから良い、というのではなく、ハイレゾがもたらす音体験を広げていくことが今後の課題になる。幸いにも今は、ハイレゾ市場全体が活性化しており、ユーザーにハイレゾ音源の体感を薦めやすい環境にある。

 販売の現場からは「今はハイレゾに頼っているが、それだけでは」と、もう一歩先の提案を求める声が上がる。しかし、「ハイレゾ化が進むことで、各社の音のレベルが上がったのは確か。音へのこだわりを持ったものづくりの姿勢を感じる」と、エールを送った。
 
<ヘッドホン・イヤホンメーカー座談会・2016秋>
開催日:2016年11月2日
場所:BCN 22世紀アカデミールーム
モデレーター:タイムマシン(e☆イヤホン)
参加メーカー:エレコム、JVCケンウッド、ソニーマーケティング、ディーアンドエムホールディングス、日立マクセル、ボーズ(50音順)


・ヘッドホン・イヤホンメーカー座談会
 
※『BCN RETAIL REVIEW』2016年12月号から転載