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ポケモンに続き、マリオも登場? 任天堂の資産を生かしたスマホ戦略

オピニオン

2016/09/28 09:31

 家庭用のコンシューマゲームにこだわり続けてきた任天堂が、スマートフォンゲームへの参入を表明し、業界に衝撃が走ったのは2015年3月。DeNAと資本・業務提携のパートナーを組んだ新たな船出に注目が集まった。スマホゲームの収益の主軸は、継続的な課金。任天堂が目指すゲームとは相反するだからだ。

第一弾はコミュニケーションアプリ、その思惑は?

 任天堂には、「小さい子どもに安心してゲームをプレイしてもらいたい」という信念のもと、頑なにスマホゲーム開発を拒んでいた過去がある。そして、2015年10月末に、第一弾としてリリースしたのが『Miitomo』。プレイヤーの分身となるMiiを通じて友人と情報をやりとりするコミュニケーションアプリだ。

 ゲームではなかったため、一部のゲームファンから失望の声が上がったが、背景には、まず外堀を埋めることで、ユーザーを囲い込みたいという任天堂の慎重な思惑があった。
 

スマホアプリの第一弾としてリリースした『Miitomo』

 ヒントは、コミュニケーションツールとして国内で圧倒的なシェアを誇る「Line」だ。メッセージアプリとしての知名度はいうまでもなく、関連するゲームアプリ『Line バブル』や『Line ポコポコ』もトップセールスを記録している。

 好調の要因は、Lineが提供している安心感、そしてゲームの成績を共有したり、アイテムを友人同士でやりとりしたりできるソーシャルの要素だ。任天堂はこの手法を確立することで、ユーザー基盤を固めたいと考えているようだ。現在はまだ十分なユーザー数を確保できていないが、今後の展開次第では、ゲームに欠かせないホームアプリになる可能性は十分にあり得る。
 

「ポケモンGO」は始まりに過ぎない?

 待望のゲームアプリが登場したのは、今年7月。米Niantic(ナイアンティック)と共同で開発した「ポケモンGO」だ。GPS情報を活用する仕組みはすでに同社が展開していた『Ingress』と同様で、現実の世界にポケモンが出現するという、ARを取り入れた。全世界でヒットし、こちらの成功は疑いようがない。

 ゲームのためにリアルで歩き回る必要がある仕組みにも関わらず、万人に受け入れられた理由は、馴染みのある「ポケモン」のキャラクターによるところが大きい。『Ingress』と『ポケモンGO』のユーザー数の差こそ、任天堂が打ち出した既存コンテンツの活用がスマホゲーム戦略の正解であった証拠といえる。
 

全世界で社会現象を巻き起こした『ポケモンGO』

 二の矢、三の矢も控えている。2016年12月にはiOSデバイス向けにゲームアプリ『スーパーマリオラン』をリリース予定。最新iPhoneと同時発表というサプライズも功を奏し、「スマホでマリオ?」という不安より「スマホでマリオができる!」という期待感が上回っているようだ。ゲームのフルバージョンをダウンロードするための課金は必要だが、プレイの継続や消耗アイテムを購入するための課金はない。自社のポリシーを堅持し、子どもが安心してゲームを楽しめるよう配慮している。
 

年末にリリースを控える『スーパーマリオラン』

 『スーパーマリオラン』のリリースの影響で、公開が来年3月に延期されたが、任天堂の人気コンテンツ『どうぶつの森』と『ファイアーエムブレム』のスマホ版の開発も進んでいる。ほかにも、「ポケモン」と同程度の知名度・人気を誇るコンテンツをいくつも抱えており、続々とスマホゲームとして登場することが予想される。

 これまでのスマホゲームは“課金ありき”だったが、任天堂は、このマイナスイメージを払拭し、既存のコンテンツを活用し、新しいスマホゲームのカタチを提案した。今後、後発の任天堂が、どこまで業界に新風を巻き起こせるか、市場の未来を占う大きな指標になりそうだ。(BCN・大蔵 大輔)