<売れるワケ>PCケースのENERMAX、ドスパラと密連携

時事ネタ

2015/09/11 19:14

 PCの電源やファンの世界的ブランド「ENERMAX」。この台湾のENERMAX社製品の国内販売子会社であるクーラージャイアントは、PCショップのドスパラと協業し、PCケース市場を席巻し始めている。現在、エントリー機の「Fulmo-Q ECA3360」を中心に、「ENERMAX」のPCケースは、販売台数の半数以上の販売をドスパラが担っている。ドスパラの店頭では、両社で「記念イベント」を頻繁に開くなど、自作PCユーザーの裾野を広げている。

 両社の出会いは、台湾で開かれる2年前のコンピュータ見本市「COMPUTEX」にENERMAX社が出展し、そのブースにドスパラ担当者が立ち寄ったことに始まる。このブランド製品は、電源やファンを含め、世界5か国(米国、中国、ドイツ、フランス、日本)で展開中だ。重要市場は、ゲーミングが盛り上がる中国とドイツ。日本では、自作PCユーザーが減少傾向で、ゲーミング市場も盛り上がりがいまひとつ。ENERMAX社は日本市場開拓を狙い、ドスパラは自作PCユーザーの裾野拡大を狙っていたが、両社の思惑が一致した。 
 


主力のPCケースでカラバリを揃えた「Fulmo-Q ECA3360」の製品群(後ろに立つのは周湧盛副社長)

 「Fulmo-Q ECA3360」は、2013年12月にドスパラで販売を開始した。実質的には、ドスパラのPB(プライベート・ブランド)として両社で盛り込む機能を協議の上、開発したPCケースだ。PCケースは、エントリー製品だと特に、きょう体の表面が黒い。「以前のユーザーであれば黒のままでいいのだろうが、最近はカラバリにこだわる層が出てきた」(クーラージャイアントの周湧盛副社長)と、昨年9月に縁がグリーン色の機種を発売したところ売れた。この経験をもとに、今年2月には縁が赤、8月には表面と内側を白にした製品を発売した。 
 


PCケースでは他にあまりない白のきょう体の「Fulmo-Q ECA3360」(右)

 この絞り込み戦略が奏功し、BCNランキングの上半期(2015年1月~6月)の「PCケース」カテゴリで、「ENERMAX」がシェア14.0%を獲得し首位。2位で同11.7%のZalman、3位のCOOLER MASTERの同9.0%を僅差で制した。「Fulmo-Q ECA3360」は店頭価格が3500円程度。高機能なPCケースが1万円前後で販売されている中、「Fulmo-Q ECA3360」は、自作PCの初心者の心をつかんだ。 

 「Fulmo-Q ECA3360」は安いだけではない。ケース裏側の配線やCPUクーラーの配置、エアーフロー部分の工夫など、ATXミドルタワーPCケースでありながら、低価格で購入できることがうけた。ドスパラ専売モデルのPCケースとしては、中級機として店頭価格で6000円程度の「COENUS」もある。同機はゲーミング向けと、自作PCの既存ユーザーや一般ユーザーにも波及を狙っているという。 

 「ENERMAX」ブランドのPCケースは、12アイテムを国内で販売している。ドスパラ以外の量販店で販売するモデルも、例えば、2万円程度で買える高級機の「THORMEX」は、スペースや鉄板の厚さ、フロントに置いたファンなどにこだわっている。 

 年末に向け力を入れている製品は、ミドルタワーケースの「OSTRON」。8月1日には、東京・秋葉原のドスパラ・パーツ館で発売の記念イベントを開催。ニコニコ動画が同時中継したこともあり、来場者は600人を超えた。「超豪華賞品がもらえる『じゃんけん大会』も開催した。予想以上の来場者があったので、年末に向け期待を寄せている製品だ」と、周副社長は自信を見せている。(BCNランキング 谷畑良胤) 

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