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高画素=高画質は間違い? 撮像素子のサイズに注目するコンデジ選び

特集

2008/06/25 00:12

 高画素化が進み、1000万画素時代に突入したと言われるコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)。これまで一般に、画素数が多ければ高画質と考えられていたが、実は必ずしも「高画素=高画質」というわけではない。画質を考える際にもう1つ注意しなければならない要素、それがCCDやCMOSといった撮像素子の大きさだ。では実際に、どのように影響してくるのか、コンデジの撮像素子サイズとその特徴について紹介しよう。

●撮像素子って何? 大きさが画質に影響する

 デジカメには、なくてはならない撮像素子。銀塩カメラのフィルムにあたる重要な電子部品だ。レンズから入ってきた光を電気信号に変換し、デジカメ画像のおおもとを作り出す。そのため、撮像素子の性能がデジカメの「画質」を大きく左右する。現在デジカメに使われている撮像素子は、CMOSとCCDの2種類。コンデジでは販売されているモデルの9割以上がCCDだ。以前はCMOSとCCDで画質の違いが大きいといわれていたが、最近ではその差はないといっていいだろう。それより重要な意味をもつのは、撮像素子のサイズだ。

 現在発表されているコンデジには、1/2型、1/2.5型、1/2.3型といった比較的小さいサイズの撮像素子を搭載するものと、1/1.65型、1/1.7型、1/1.8型という前者よりひと回り大きいサイズの撮像素子を搭載するものの2つがある。代表的なサイズを取り、小型の前者を1/2.5型クラス、ひと回り大きい後者を1/1.8型クラスとして、それぞれを比較し、画質の関係について解説しよう。まず、「1/2.5型」は実寸サイズで横5.7×縦4.3mm。一方「1/1.8型」は横6.9×縦5.2mm。実際の大きさをみると、いずれもいかに小さいかがわかる。


 まず、小型の「1/2.5型クラス」から。このクラス最大のメリットは「小型である」という点だ。撮像素子が小さい分レンズも小さくできるうえ、カメラ本体も当然小さくまとめることができる。小さければそれだけ原材料も少なくてすみ、コストダウンにもつながる。そのため、エントリークラスやスリム・コンパクトモデルには、1/2.5型クラスの小型撮像素子を採用するモデルが多い。「BCNランキング」で、5月の販売台数シェアトップ10をみても、すべてが撮像素子に1/2.5型クラスのCCDを搭載するモデルだった。


 一方、ひと回り大きい「1/1.8型クラス」は、各メーカーの中級以上のモデルに多く採用されている。これは高画質を求めた結果だと考えられる。例えば、同じ800万画素でも、片方は1/2.5型、もう片方は1/1.8型の撮像素子を搭載したカメラがあるとする。高画質が期待できるのは、後者の大きい撮像素子を搭載したカメラだ。

 画素数が同じでも撮像素子が大きいため、1画素あたりの面積も大きい。すると、1画素に受ける光の量が多くなり、光を集める効率が高くなる。最初に入ってくる光の情報量が多いため、以後の画像加工でも余裕をもって処理することができ、結果的にノイズが少なくなる。つまり、より自然な状態の画像を記録することができる、というわけだ。

 また、大きな撮像素子を使うと、背景をぼかした写真が撮れる、というメリットもある。一般に、撮像素子の面積が大きければ、それだけピントが合う範囲、つまり被写界深度が浅くなる。例えば1点のみピントが合い、そのほかの部分はぼかした写真が撮れるようになるわけだ。被写体の存在感を強調したり、立体感ある絵作りには欠かせない手法だ。

 背景を大きくぼかした写真は、APS-Cサイズや35mmフルサイズの大きな撮像素子を搭載したデジタル一眼レフの得意分野。それらに比べると、1/1.8型は1/2.5型と同様に「極小サイズ」でボケ具合はそこそこだ。とはいえ、撮像素子がより大きければそれだけ大きくぼかすことができる。


 デジカメの画質は、撮像素子のほかにも、レンズや画像処理エンジンの性能にも左右される。一概に1/1.8型の撮像素子だから高画質とは言い切れない。しかし、いずれのメーカーもこうした1/1.8型搭載機をコンデジの中級クラス以上のラインアップに据えている事実を踏まえれば、1つの傾向として「1/1.8型CCD=高画質なコンデジ」といえるだろう。


●こんなにある1/1.8型CCD搭載モデル

では、1/1.8型クラスのCCDを搭載した代表的な機種と特徴を挙げていくことにしよう。

■Caplio GX100

メーカー:リコー
画素数:1001万画素
撮像素子:1/1.75型CCD
レンズ:24?72mm(35mmフィルムカメラ換算、以下同)/F2.5?F4.4




 コンデジの中でも名機と呼ばれる「GR Digital II」同様の1001万画素1/1.75型CCDを搭載する。現行コンデジで唯一、24mmの超広角から72mmまでをカバーするズームレンズを採用。VF KITには「着脱式液晶ビューファインダー」を同梱しており、ウェストレベルやローアングル等、自在なアングルで撮影できる。コンデジでは珍しくマニュアルモードを搭載している点も大きな特徴の1つだ。豊富なアクセサリーによるカスタマイズが可能で、一眼レフにも通ずる操作性の良さも備え、デジタル一眼のサブとして愛する上級ユーザーも多い。

■FinePix F100fd

メーカー:富士フイルム
画素数:1200万画素
撮像素子:1/1.6型 スーパーCCDハニカムHR
レンズ:28mm?140mm/F3.3?F5.1



 高感度撮影で高い評価を受けた「FinePix F31fd」の後継機種。高感度でのノイズの少なさは現行機種でもトップクラスを誇り、富士フイルム特有の鮮やかで色乗り美しい発色と相まって、ブログ目的の料理撮影などに利用するユーザーも多い。これらに加え、「従来比400%のワイドダイナミックレンジ」をうたうダイナミックレンジ拡大機能も搭載。ズーム比の高さも大きなポイント。

■IXY DIGITAL 2000 IS

メーカー:キヤノン
画素数:1210万画素
撮像素子:1/1.7型CCD
レンズ:36?133mm/F2.8?F5.8

 IXYシリーズ特有の曲面を多用し官能的な形のチタンボディを採用したシリーズ最高峰モデル。こうしたデザイン性の高いコンデジには珍しくマニュアルモードを備え、長時間露光も可能。また、光学式のファインダーも備えている。デジタル一眼のEOSシリーズで磨かれた映像エンジン「DIGIC III」と併せたコンデジ最高クラスの画質を実現する。

■Cybershot W300

メーカー:ソニー
画素数0:1360万画素
撮像素子:1/1.7型CCD
レンズ:35?105mm/F2.8?F5.5



 傷と指紋に強いチタンボディを身にまとった硬派なデザインが特徴的。1360万画素という現行コンデジで初の1360万画素クラスを実現。また、光学式のファインダーを搭載している点も大きなポイントだ。黒ツブレおよび白トビを抑え、階調感ある画質を作り出す「Dレンジオプティマイザープラス」も備えている。

■COOLPIX P5100

メーカー:ニコン
画素数:1210万画素
撮像素子:1/1.72型CCD
レンズ:35-123mm/F2.7-5.3



 露出やピントをマニュアルで設定できるニコンのコンデジ最高峰。コンデジというカテゴリーながら、外付けストロボやコンバーターレンズなど、豊富なアクセサリーを揃える。グリップしやすいマットなデザインで上級ユーザーからの評価も高い。

 以上、1/1.8型クラスの撮像素子を搭載した現行の代表的なコンデジをざっと挙げてみた。新たなデジカメ買い換えを考えている人や、「もう一歩、高度な撮影を楽しみたい」という人、現状のコンデジの画質よりワンランク上の画質を求めるなら、こうした1/1.8型撮像素子搭載のコンデジに注目だ。

●マニュアルモードの積極活用のススメ

 現在あるほぼすべてのコンデジは、「風景モード」や「マクロモード」といった、シーン毎にホワイトバランスや露出の設定がされているオート撮影モードを搭載している。これは、カメラ初心者でも簡単・キレイに写真が撮れて便利だ。また最近では、カップル認識や笑顔認識機能も登場するなど、撮影モードは年々独自の進化を続けている。カメラのシャッターを押すだけで、キレイな写真が撮れる環境はどんどん整ってきた。

 しかし、1/1.8型撮像素子搭載モデルに代表されるハイエンドモデルの多くは、オート撮影モードだけでなくマニュアルモードも備えている。自分で各種設定をするモードだ。例えば、マニュアルフォーカスにしてピントを固定してシャッターを押せば、AFが動作しない分素早くシャッターを切ることができる。また、シャッタースピードと絞りを自由に設定して露出を決定することで、表現の幅も広がる。

 例えば、川を撮影するときに、シャッタースピードを遅くすることで流れてゆく川の勢いを撮影することができる。逆に、シャッタースピードを速めると水しぶきのような一瞬の表情を撮ることができる。このように、シャッタースピード1つとっても出来上がる写真は変わってくる。自分で設定して写真は、撮影者の意思が吹き込まれるといってもいいだろう。コンパクトでもこういった自分だけの表現方法を楽しみたいなら、撮像素子のサイズと同様にマニュアルモードの有無もチェックしてほしい。(フリーライター・市川昭彦)


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