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「東京ユビキタス計画・銀座」体験レポート、未来の銀ブラスタイルとは?

特集

2008/02/13 23:19

 日本を代表する繁華街、銀座。ここでいま、「東京ユビキタス計画・銀座」という何やら怪しげなプロジェクトが進行中だ。東京都が取り組む、ユビキタス社会の実現に向けたプロジェクトだというのだが、これだけ聞いてもなんだかよくわからない。百聞は一見にしかず、ということで早速体験ツアーに潜入してみた。

●ユビキタスな社会ってどんなの?

 そもそも「東京ユビキタス計画」とは、東京都と国土交通省が取り組んでいる、ユビキタス・コンピューティングの実証実験プロジェクトだ。ここでいうユビキタスとは、日本語で「どこにでもある」という意味で、ユビキタス・コンピューティングは、高度なネットワークをいつでもどこでも誰でも使えるようになることを目指している。

 実用化の暁には、いま自分がいる場所や周辺の情報、最寄の施設情報とそこまでの道順などが簡単に手に入るようになるのだという。現在はその実証段階で、以前は上野や浅草でも行ったという実験の、次なる舞台に選ばれたのが銀座というわけだ。しかし本当にそんなことが可能なのだろうか? ケータイやノートPCがあればいいんじゃない? など疑問は尽きない。そこで詳細を知るべく、実証実験の体験ツアーに参加したレポートがこちらである。

 ちなみに、この体験ツアーは、3月1日まで毎日午前と午後で3回ずつ、それぞれ30名ずつ募集しており、「東京ユビキタス計画・銀座」のWebサイトから申し込める。中学生以上であれば、誰でも無料で参加可能だ。

●見上げれば天井にユビキタスの使者

 ツアー当日、まずは銀座駅地下の受付会場で、「ユビキタス・コミュニケータ(UC)」を受け取る。タッチパネル操作がメインの携帯端末で、銀座のさまざまな情報を表示する、今回の実験のキモといえる装置だ。さらに手首にICタグリーダー、頭にはヘッドフォンも装着し、なんだか不思議な格好に。周囲の視線を感じつつ、体験ツアーに出発だ。

 まずは銀座駅地下道からスタート。「銀座コア」へ向かってナビゲートが始まる。UCの画面には、さながらカーナビのように、周囲の写真と、道順が矢印で表示される。音声ナビも付いており、まずはヘッドフォンの謎が解ける。ナビ通りに進んでいくと、画面が切り替わり、次の道順が表示される。ユーザーの現在位置をUCが認識しているらしいのだが、いったいどうやって? ふと天井を見上げると、何気なく埋め込まれた赤外線ポート。このポートの下を歩くと、自動的にUCが場所情報を読み込み、画面に表示する仕組みなのだ。

 移動中、今度は地上の様子がパノラマ写真で再生された。パノラマ写真はぐりぐりと左右に動かせ、銀座に初めて来た人ならずとも面白いだろう。また、この伝えるべき情報を伝えるタイミングが絶妙なのだ。赤外線ポート、いい仕事をしている。

●ちょっと切実なあんな時にも――

 地上に出ると、「銀ブラモード」なるモードが起動した。なにやらセレブな響きだ。これは銀座4丁目交差点を中心に、付近の地図や店舗情報などが利用できるモード。地上で位置情報を送信するのは「無線マーカ」というボックスで、植え込みの陰や、街灯の袂にさりげなく佇んでいる。この中に発信器が入っており、半径10-20m以内に入ると、UCが位置情報を受信する。
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 基本的には銀座の歴史などのあらかじめ用意してあるコンテンツを見ながら街を散策するのだが、時おり店舗や観光地の紹介が挿入される。さらに、店舗に近付くと、フロア構成などの情報が一目瞭然。なんとなく気になっていたけど、入ったことはない、そんな店の情報が将来見られるようになれば、入る勇気が湧いてくるかもしれない?

 また、街を歩いていて意外に困るのが、急にトイレに行きたくなったとき。そのためだけにどこかのカフェに入るのもイヤだし、かといって手近な場所は思いつかないしで焦りばかりが募る――そんなちょっと切ない時もUCの出番。なんとトイレなどを検索し、その場所までナビゲートしてくれるのだ。

 さらに、設置場所だけでなく、トイレ内部の写真まで用意している。これは、たとえ障害者用のトイレでも、設備によっては利用できない人がいるための配慮だという。ユビキタス・コンピューティングの掲げる、「いつでもどこでも誰でも使える」という精神は、こんなところにも反映されていたのだ。

●受付に戻るときまでがユビキタスです

 散策中、辺りを見渡すと、街灯や店頭など、そこかしこで「東京ユビキタス計画・銀座」と書いたプレートが目に付く。これは中にICタグが埋め込まれており、手首のリーダーを近づけることで情報を読み取り、UCが対応するコンテンツを再生するためのものだ。忘れた頃ではあるが、リーダーの役割もここで明らかになる。


 プレートにはICタグの他、3種類の情報タグもプリントされており、携帯電話でも利用することができる。キャリアによって対応するコードが違い、詳細は「東京ユビキタス計画・銀座」のWebページで紹介している。情報タグを読み取るためのソフトのダウンロードもここで行う。

 さて、「銀ブラ」を堪能したので受付に戻ることにする。もちろん帰り道もナビ付きだ。UCの「返却場所」を検索し、案内してもらう。すると、筆者が全く知らなかった地下道への入り口が表示された。銀座にはよく来るのだが、これには驚いた。たとえ初めて銀座に来た人でも、これなら目的地まで最短距離で移動でき、とても便利だ。銀座の道に詳しいと自負している人は、UCと対決してみるのも一興かもしれない。

 会場に戻って端末を返却すると、「パーソナルホームページアカウント」なるものをもらった。指定のWebサイトにログオンすれば、自分が散策した情報を見られるのだという。今日のツアーの戦利品といったところか。

●今後の可能性が楽しみな「ちょっと先の未来」へ向けたプロジェクト

 今回ツアーを体験して思ったのは、非常にユーザーに優しいサービスだということ。システムが現在位置を自動的に判別し、必要なときに適切な情報を提示してくれるのは便利だ。今回実験用に用意されたコンテンツだけでも、観光客は非常に喜ぶはず。

 端末に関しては、現段階では、持ち歩くには少し重い気がした。ただ、まだ実験中なので、とやかく言うところではないかもしれない。また、端末の小型化や高機能化、サービスの普及のために、民間企業が参加してくれば面白い。たとえば、スマートフォンiPod touchと、このサービスが連携したら、と考えるとなかなか楽しみになってくる。

 ネックになるのは、莫大な数の無線・赤外線マーカの設置だが、このインフラに関しては都や国も積極的だという。東京都は、観光振興や産業の活性化を目標に、国土交通省は少子高齢化を見越し、年配の方や障害者の方に社会参画をしてもらうための「自律移動支援プロジェクト」として参加している。

 このプロジェクトが実現すると、たとえばちょっとした情報であれば、ネットにつないで検索する必要がなくなる。欲しい情報がまさに「リアルタイム」で手に入るようになるのだ。この「リアルタイム」という部分は、携帯電話やノートPCにはまだない部分だ。いずれは街そのものが、いつでもどこでも誰にでも優しい、ユニバーサルデザインとなる「ユビキタス」の時代は、すぐそこまで来ているのかもしれない。(アバンギャルド・柳谷智宣)

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