「録って聴く時間差聴取」で広がる新しいラジオのカタチ

特集

2007/10/11 10:15

 ビデオデッキやHDD-DVDレコーダーで、予約録画してあとで観る「時間差視聴」は今や当たり前。ところがラジオはいまだに「リアルタイムで聴くもの」という風潮がある。トークや音楽、語学講座など、お気に入りのラジオ番組を欠かさず聴く熱いリスナーは意外に多いはず。とはいえなかなか放送時間にキッチリ聴くのも大変……。そこで「録って聴く時間差聴取」にスポットを当てた、イマドキのラジオ事情を探った。

●そもそもラジオつき携帯オーディオはどのくらいあるのか?

 ラジオ事情を知る手始めとして、まず携帯オーディオのラジオチューナー搭載状況を調べた。06年7月から07年9月の「BCNランキング」で、携帯オーディオにおけるFMチューナー搭載モデルの販売台数推移を見てみると、当初は、FMチューナー搭載モデルと非搭載モデルの割合はおよそ3対7だった。



 ところが06年10月にFMチューナー搭載モデルが52.9%まで急成長して非搭載モデルを追い越した。しかしこれは一時的なもので、サンディスクの「SDMX2-512B-J65A」が急激に伸びたため。FM搭載ながら税別平均価格で3115円と、極めて安価だったのがウケたようだ。アップルが独占することも多い、月次の携帯オーディオの機種別販売台数トップ10で8位にランクインしたほどだ。

 しかしその後、FMチューナー搭載モデルは再び下降に転じ、直近の07年9月では非搭載モデルが64.4%、FMチューナー搭載モデルが35.3%と勢いは奮わない。とりあえず携帯オーディオでは、ラジオつきの製品がそもそも少数派、ということがわかった。

●FMラジオ・音楽の両方が楽しめる携帯オーディオ 語学専用モデルも



 とはいえ、根強いファンのための製品も登場している。特に、リアルタイムではなかなか聴けない昼間や深夜の番組などを予約録音しておいて後で聴くという、普通の小型ラジオでは難しい機能を実現した製品がある。

 まず、ラジオ番組が聴けて予約録音もできるタイプ。最初に見つけたのがSIRENの「DP300」。フラッシュメモリタイプの携帯オーディオだ。海外でも受信可能なワールドバンド対応のFMチューナーを搭載し、ラジオ番組をMP3形式で予約録音できるのが特徴。なお、FMラジオ受信時にはアンテナとしてイヤホンを接続しておく必要がある。容量は1GBと2GBの2種類。ラジオ番組のほかに音楽も同じくらい頻繁に聴くという方にオススメ。

 一方、ラジオ番組の中でも語学講座向けに工夫された携帯オーディオが、サン電子のトークマスター2「RIR-500SW」。こちらは同社が「ラジオMP3レコーダー」と分類しているもので、FM・AMチューナーを搭載する製品。予約録音は最大20件まで可能で、月・日・曜日を設定して行える。内蔵メモリの容量は128MBだが、SDカードも使えるので、外部メモリに番組を保存することも可能。語学に便利なリピート機能や再生スピードのコントロール機能も備える。

●FM・AM両対応のお得なICレコーダー 乾電池の交換がちょっと面倒



 社会人なら、会議のやり取りなどが録音できるICレコーダータイプが一石二鳥で使いやすいかもしれない。三洋電機の「ICR-RB76M」は、FM・AMチューナーを搭載し、MP3形式でラジオの予約録音ができるICレコーダー。毎日・毎週・1回の3パターンから選択して、最大5件までの予約が可能。内蔵メモリの容量は256MB。同モデルの後継機でメモリ容量が1GBに増えた「ICR-RB78M」も10月下旬に登場する予定だ。

 また、NHC製で128MBのメモリを内蔵する「DR-A250」と1GBの「DR-A1000」もFM・AMチューナーを搭載する。最大5件の予約録音が行えるほか、放送中の番組を約1分遡って録音できる「タイムシフト録音」にも対応。カラーは、128MBがブルーとワインレッド、1GBがブラック。乾電池式なので、電池が切れても予備の電池に交換すれば使い続けられるメリットがある一方で、充電式に比べ電池代がかかる上電池の交換も少々面倒なところがデメリット。デザインもビジネス仕様で、ちょっとおしゃれ感に欠けるのはちょっと残念だ。

●携帯電話はFMのみ 予約録音不可でリアルタイムな操作が必要



 携帯電話にも、実はFMチューナーを搭載するモデルがある。ただ、各キャリアに確認したところ、現在主に流通している携帯電話では、FMラジオを聴いて録音することはできても、予約録音できるモデルはないそうだ。したがって、リアルタイムで聴ける人には向いている。

 KDDI(au)で東芝製の端末「W54T」は、FMラジオのほか、デジタルラジオやワンセグも視聴できるモデル。SDカードスロットを装備し、外部メモリにFMラジオを1回につき最大120分録音できる。ラジオの放送中に流れる楽曲やアーティストに関する情報を画面で確認でき、ダウンロードできる楽曲があれば表示する機能も備える。また、同じくauで三洋電機製の端末「W52SA」も、FMチューナーを搭載する。イヤホンアンテナなしで、FMラジオをスピーカーから聴けるのが特徴。内蔵メモリに最大約120分の録音ができる。

 なお、au以外のキャリアでは、録音はできないがFMラジオの受信のみできるタイプとして、NTTドコモの三菱電機製の端末「D904i」「D903i」は、同社のサービス「iアプリ」を利用して聴くことができる。また、ソフトバンクモバイルでは、ノキア製端末「705NK」とシャープ製端末「905SH」も聴くだけなら可能だ。

●自宅で録音してモバイル機器に転送 たっぷり録音ならHDD内蔵モデルを

 さて、次に、据え置き型のラジオチューナー搭載機器に番組を一旦保存して、その後携帯オーディオなどにデータを転送して聴く、というスタイルのアイテムを見てみよう。持ち歩く機器に直接録音するよりも手間はかかるが、HDDやPCに保存するため、より多くの番組を録音して溜めておけるのがメリットだ。



 自宅でFM・AMラジオを録音するのに手軽なオーディオ機器がコンポ。ソニーのネットジューク「NAS-M75HD」は容量80GBのHDD内蔵型コンポで、本体にどんどんラジオ番組を溜められる。保存した番組はPCと接続せずに直接同社の携帯オーディオ「ウォークマン」に転送したり、USBケーブルで接続した携帯電話に転送したりできる。ラジオ番組は最大10件の予約録音ができ、通常の録音のほか、番組内の音楽部分とトーク部分を自動で分類して録音する機能も備える。

 保存するコンテンツをラジオ番組だけに絞りたいなら、オリンパスのHDD内蔵ラジオサーバー「VJ-10」という選択肢もある。FM・AMチューナーを搭載し、最大20件の予約録音ができる。USB端子を備えるので、ICレコーダーなどを直接差し込んでデータ転送が行える。HDDの容量は37GB。複数のラジオ番組を録り溜めておきたい場合にぴったりだ。

●PCに収録するコンテンツにもラジオ番組が仲間入り



 大容量のラジオ番組をデジタル化して溜めておくには、PCを利用する方法もある。サンコーの「USB AM/FM RADIO」は、PCとUSBで接続してラジオが聴けるFM・AMチューナー。同社のホームページから専用ソフトをダウンロードすれば、FM・AMラジオの予約録音、局の登録、チューニングなどが簡単に行える。予約録音は複数登録でき、開始時間・終了時間・局を選択するだけで完了。FM用の外付けアンテナも付属する。

 プリンストンテクノロジーのUSBオーディオキャプチャーユニット「PCA-ACU」も、PCにラジオ番組を予約録音できる。PCとつないで付属のオーディオ変換ソフト「Pod Sound Ripper」をインストールし、FM・AMチューナー搭載のオーディオ機器と接続すればセットアップは完了。予約録音機能は、録音時間をタイマーで設定する「クイック録音」と、日時と録音開始・終了時間を設定する「スケジュール録音」の2つを備える。対応ファイルはMP3、WAV(PCM)で、録音後は携帯オーディオに番組を転送して楽しめる。

●「FM・AMラジオチューナー&予約録音」は意外に少ない

 以上のように、持ち運んで使うモバイル機器でラジオが聴ける5つのアイテムについて特徴をまとめたのが以下の図だ。FMは5アイテムすべてで聴けるが、携帯オーディオでFMチューナーを搭載するモデルは全体の3割程度。また、予約録音できるものも中にはあるが、ごく一部だ。携帯電話もFM対応機種は数えるほどしかなく、予約録音ができないので注意が必要だ。

 一方、AMが聴けるものは、ICレコーダー、HDD内蔵コンポなど、PCとラジオチューナーなどのPC周辺機器の組み合わせ、となっている。ただ、ICレコーダーも、FM・AMラジオチューナーを搭載する機種が大変少なく、選択肢が限られてくる。PC周辺機器も同様に製品自体が少ないので、製品の数が豊富なものとしてはHDD内蔵コンポということになる。ただ、HDD内蔵コンポとPC+PC周辺機器は、録音したデータをモバイル機器に転送しなければならないので一手間かかる。



 一口に「モバイル機器でラジオを聴く」といっても、FM・AMのどちらを主に聴くのかといったことや、予約録音の有無、録音の記録容量など、優先する機能は個人のリスニングスタイルによってさまざま。上記のように、各ラジオチューナー搭載機器の特徴を踏まえた上で、自分に合ったものを選ぼう。(BCN・井上真希子)

*「BCNランキング」は、全国のパソコン専門店や家電量販店など23社・2200を超える店舗からPOSデータを日次で収集・集計しているPOSデータベースです。これは日本の店頭市場の約4割をカバーする規模で、パソコン本体からデジタル家電まで115品目を対象としています。


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