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無線LAN搭載で突入するカメラの「新世紀」、一体何が起きる?

特集

2007/07/06 23:00

<strong>――借りモノレビュー、ニコン「COOLPIX S50c」</strong><br />
 ニコンが4月25日に発売した「COOLPIX S50c」は、今流行の「全部入り」のコンパクトデジカメだ。薄型ボディに、「光学式手ブレ補正」「顔認識AF」「ISO1600の高感度撮影」と、コンパクトデジタルカメラで必要とされている機能が一通り盛り込まれている。さらに特徴的なのは無線LAN機能を内蔵していること。カメラに無線LANを搭載すると、一体どんなことが起きるのか? 実際に使って体験してみた。

――借りモノレビュー、ニコン「COOLPIX S50c」

 ニコンが4月25日に発売した「COOLPIX S50c」は、今流行の「全部入り」のコンパクトデジカメだ。薄型ボディに、「光学式手ブレ補正」「顔認識AF」「ISO1600の高感度撮影」と、コンパクトデジタルカメラで必要とされている機能が一通り盛り込まれている。さらに特徴的なのは無線LAN機能を内蔵していること。カメラに無線LANを搭載すると、一体どんなことが起きるのか? 実際に使って体験してみた。




●無線LAN機能の搭載にこだわってきたニコン

 ニコンはコンパクトデジカメに無線LAN通信機能を世界で初めて搭載したメーカーだ。05年に発売した「COOLPIX P1/P2」を第1弾として、薄型で使用時にレンズが繰り出さないフラットボディを採用した「COOLPIX S」シリーズで「S6」、「S7c」にIEEE 802.11b/g規格準拠の無線LAN通信機能を搭載。機種の世代が進むごとに使い勝手を確実に進化させてきた。

 「S6」では、パソコンを経由せずに直接プリンタとつなげてプリントできるのが最大の特徴だったが、そのためにはプリンタのUSBポートに、別売のアダプターをつなげておく必要があり、無線のメリットを十分に生かし切れているとは言い難かった。

 続く「S7c」では、「S6」の機能に加え、「COOLPIX CONNECT」というオンラインのフォトアルバムサービスを開始して用途を広げた。これによって、外出先からでもソフトバンクテレコムの公衆無線LANサービス「BBモバイルポイント」経由で、カメラから直接、撮影した画像をオンラインアルバムに転送できるようになった。ここにきて無線LANのメリットが、ようやく生きてきた。

 そして最新機種「S50c」の登場。オンラインサービスも「COOLPIX CONNECT 2」に進化し、無線LANのアクセスポイントでは、NTTコミュニケーションズの「HOTSPOT(ホットスポット)」に対応させた。


 「COOLPIX CONNECT 2」は、「S50c」限定で利用できるサービスで、カメラ1台につき2GBの保存スペースが用意されている。これだけの容量があれば、外出先から転送する画像の保存先としては十分だろう。

 また、オンラインアルバムとは別に、「COOLPIX CONNECT 2」のサイト内で、転送した画像をアルバムに見立て閲覧できるようになった。友人などのパソコンのメールアドレスをカメラに登録しておけば、「COOLPIX CONNECT 2」に画像を転送したことをメールで知らせる機能も新たに搭載している。

●カメラ、オンラインサービスともに設定は意外とカンタン

 「S50c」と「COOLPIX CONNECT 2」の使い勝手はどうなのか、早速試してみた。「S50c」での無線LAN通信機能の設定、「COOLPIX CONNECT 2」の利用手順などは、自宅で家庭内ネットワークに無線LANを利用している人ならば、それほど難しくはないと感じた。


 今や家庭用ゲーム機も無線LANを搭載する時代。ネット接続が当たり前になってきているので、無線LAN利用者は意外と多いと思う。そうした人たちならば、付属のマニュアルを見ながら、手順を追って設定していけば、まず迷うことはないだろう。

 筆者の場合、自宅の無線LANはセキュリティのため、MACアドレスでフィルタリングして、SSIDは非公開、パスワードはWEPキーで暗号化している環境だが、カメラの設定はほとんどマニュアルを確認することなくできた。


 「S50c」には、BBモバイルポイントのワイヤレス接続が最長1年間、無料で使える設定がすでに組み込まれている。これを利用すれば、特別な設定は必要なく、外出先での無線LAN接続をすぐに使うことができる。ただし、利用にはパソコンのアカウント設定が必要だ。ちなみに、BBモバイルポイントは、全国2600店舗のマクドナルドなどで利用できる。

●カメラ付き携帯電話の画像メール機能と最大の違いは?

 ところで、撮影した画像を、パソコンを使わずにワイヤレスで転送するということでは、多くの人が真っ先に思い浮かぶのは携帯電話だろう。カメラ付き携帯電話で撮った画像をメールで友人に送るのは当たり前になってきているからだ。

 携帯で写真を撮って送るのと、「COOLPIX S50c」の無線LAN通信機能でできることとの一番の違いは何か。それは、「撮った画像そのものを、そのまま転送できる」という点に尽きる。「S50c」の有効画素数は720万画素。最大・最高画質で撮影すればハガキやL版、A4サイズはもちろん、A3サイズでも十分なクオリティでプリントできる。この画質を、そのまま共有できてしまうのだ。

 携帯電話からの画像送付では、相手に送ることができる画像のサイズには制限がある。おそらく多くの人が携帯電話から送る画像のサイズは、「QVGA」と呼ばれる待ち受け画面サイズがほとんどだろう。1回に送れる画像の数も、ほとんどの機種が一枚のみだ。

 一方、「S50c」では、撮った画像のサイズや画質を落としたりすることなく、オリジナルのサイズ・画質でオンラインアルバムに転送が可能。それがカメラ単体で、できてしまうのだ。さらに、メールで知らせを受けた友人などが、ネット上から、オリジナル画像をダウンロードできるのも魅力だ。一度に送信できる画像はバッテリー使用時は最大・最高画質で30枚が可能で、ACアダプターに接続すれば無制限で送ることができる。


 「S50c」の特徴を考えた場合こんな使い方も考えられる。たとえば、旅先で撮った写真を最寄りの無線LANのアクセスポイントからオンラインアルバムに転送。画像を贈りたい友人や家族に連絡すれば、相手はすぐに、きれいな写真を閲覧したり、ダウンロードができるわけだ。また、オリジナル画像を共有できることで、写真を素材として使ったデジタル作品の制作などといった楽しみかたもいろいろと広がってくるに違いない。

 そう考えると、ニコンが、「COOLPIX S」シリーズに無線LAN通信機能を搭載し続けている「狙い」のようなものが見えてくる。それは、カメラで撮った画像を自分だけのものとして溜めるだけではなく、たくさんの人と共有して、もっといろいろなデジタル画像の使い方を創造していこうということなのだろう。

●無線LANのインフラ充実がポイントに

 一方、「S50c」を使ってみてわかったこともある。それは「S50c」が搭載する無線LAN通信機能は盤石なものとは言い難いということだ。今回、借用したカメラでは通信途中で接続が切れてしまうことが何度かあり、BBモバイルポイントに接続できないことがあった。もしかすると、電波の受信状態や感度にかなりシビアなのかもしれない。そのため、無線LANとの接続機能については少々不満を感じた。

 屋外で利用できる無線LANのアクセスポイントがまだまだ少ないのも残念だ。これはカメラ側の責任ではなく、インフラの整備の問題だが、携帯電話のように、地下街や移動中の車など、外出先のどこからでもすぐに無線LANにアクセスできる環境が早く整ってくることを期待したい。そうなれば、将来的にはカメラ同士や他のデジタル機器とも画像共有もできるようになるのではと思っている。

 写真がフィルムからデジタルに移行し、写真そのものの概念や楽しみ方が変わり始めている。つまり、今まではフィルムカメラの後を追っていたデジタルカメラが、ついに追い付き、いよいよデジタルならではの新たしい道を歩み始めた、ということだ。その中で、通信機能を搭載した「S50c」はデジタルならではの写真の楽しみ方を広げる「次世代のカメラ」と言えるだろう。(フリーカメラマン・榎木秋彦)

ニコン「COOLPIX S50c」
■撮像素子:1/2.5型原色CCD
■有効画素数:720万画素
■記録媒体:内蔵メモリ(約13MB)、SDメモリーカード
■レンズ:F3.3-4.2 38-114mm(35ミリフィルムカメラ換算)
■液晶モニタ:広視野角3.0型(約23万画素)
■サイズ:幅97.5×高さ59×21mm
■重量:約125g(バッテリー、SDメモリーカードを除く)


「COOLPIX S50c」の撮影画像

「COOLPIX S50c」の作画例。有効720万画素のCDD搭載で、高画質な写真が撮影できる