<strong>――冬休み特別企画:とにかく大接近して撮る「マクロレンズ」で遊ぼう</strong><br> 06年はデジタル一眼レフが大ブレイクした1年になった。コンパクトデジカメから、デジタル一眼にグレードアップした人も多いのではないだろうか? せっかくデジタル一眼を手に入れたのなら、いろんなレンズを試して遊んでみたい。その1つが、小さなものを「ドアップ」に写せるマクロレンズだ。好評だった? 夏休み特別企画「写真はとにかく『寄り』だ! 今日から写真家が気取れる広角レンズのススメ」に続く第2弾。今回はマ

――冬休み特別企画:とにかく大接近して撮る「マクロレンズ」で遊ぼう

 06年はデジタル一眼レフが大ブレイクした1年になった。コンパクトデジカメから、デジタル一眼にグレードアップした人も多いのではないだろうか? せっかくデジタル一眼を手に入れたのなら、いろんなレンズを試して遊んでみたい。その1つが、小さなものを「ドアップ」に写せるマクロレンズだ。好評だった? 夏休み特別企画「写真はとにかく『寄り』だ! 今日から写真家が気取れる広角レンズのススメ」に続く第2弾。今回はマクロレンズで遊んでみた。


●「ゲージツ家」気取りで日常の小物を「作品風」に撮ってみる

 「視点を変える」と、同じのもにもいろんな顔があり、いろんな見え方があるというのがわかる。それが一番実感できるのはマクロ撮影、つまり接写ではないだろうか。普段使っている日常の小物を思いっきり「寄って」撮ると、まったく別なものに見える。マクロ撮影はそんな意味で楽しい。「場面を切り取る」という写真作法の真骨頂が味わえるのもマクロ撮影ならでは、といえるだろう。

 デジタル一眼でマクロ撮影をする方法はいくつかあるが、最も一般的で使いやすいのはそのものズバリ「マクロレンズ」を使うことだ。マクロレンズは、接写用に設計された専用のレンズ。最大撮影倍率が等倍程度のレンズをいう。最大撮影倍率とは、フィルムや撮像素子にどのくらいの大きさで写るかという倍率のことで、等倍なら同じ大きさまで写せるということを示す。


 これに対して、50mmの標準レンズでは15%程度までの大きさでしか撮影することができない。つまりマクロレンズは小さいものを「ドアップ」で写せるレンズ、ということだ。今回は、35mmフィルムカメラ換算で90mmのマクロレンズを使ってさまざまなサンプルを撮影した。なお、実際の焦点距離は60mmだが、以後レンズの焦点距離を表す際には実際の焦点距離に1.5をかけ、35mmフィルムカメラに換算した値を示す。

●まず花を撮ろう! でも屋外での撮影は意外に難しい

 マクロレンズを使っていくら「ドアップ」で撮影できるといっても、調子に乗って女性の顔の毛穴などをクローズアップすると大変怒られてしまうので、通常は花などを撮ることから始めればいいだろう。コンパクトデジカメでも、クローズアップ撮影モードは「チューリップマーク」が一般的になってきた。接写といえば花なのだ。ということで、まずは花を撮ってみよう。


 屋外で花を撮る際、難しいのは風だ。無風の日なら問題ないが、多少でも風が吹いていれば、花が揺れてしまい、構図が決まらないばかりか、ピント合わせもきわめて難しくなる。その上、シャッタースピードが遅いと花がぶれてしまい、かっちりとした絵にならない。風がやんだときを狙ってすばやくピントを合わせ、すかさずシャッターを切る必要がある。とはいえ、花がぴたりと止まることはめったにないから、シャッタースピードは遅くとも1/250以上の高速に設定しておきたい。もちろん、紐などを結んで一時的に花の動きを止めることができればそれに越したことはない。

 ピント合わせにもコツがある。まず、マクロレンズではAF(オートフォーカス)があまり使えない。被写界深度(ピントの合う範囲)がきわめて浅いため、まさにピンポイントでピントを合わせる必要があるからだ。どこにピントを合わせるかで写真の印象も大きく変わる。しかしAFでは意図したところにピントが合わない場合が多く、そのためマニュアルでピントを合わせたほうがいい。


 花の撮影に戻ると、風で揺れている花を追いかけてピントを調節していると、まったく間に合わないのでやめたほうがいい。ピントをマニュアルモードにして、ある1点に固定しておき、花がピントが合う範囲に入ったときにシャッターを押すようにする。また微妙なピント合わせに関しては、ピントリングを動かすのではなく、カメラごと、つまりカメラを持った自分が微妙に前後に動いて調節するといい。このように屋外で花の写真を撮るのは意外に難しく、いい写真を撮りたいなら沢山シャッターを切って数をかせぐ必要がある。フィルムがいらないデジカメはその点気楽だから、できるだけ沢山撮ってみて「作品」をモノにして欲しい。

●屋内で撮れば環境はコントロール可能、道具だてが大変なのもまた楽し

 部屋の中であれば風の影響もなく比較的楽にマクロ撮影ができる。寒い冬、カメラバックを担いで外に出なくても、家の中でも十分楽しめるのもメリットだ。もちろん、花屋で買ってきた花を花瓶に入れて、無風状態で花の撮影を思う存分楽しむことだってできる。初心者にはこちらのほうがオススメだ。

 ただ、部屋には太陽がない。太陽というのは偉大かつ強力な照明装置であり、晴れや薄曇りの昼間の屋外であれば、明るさで困ることはまずない。しかし、部屋の中は意外に暗い。そのため、シャッタースピードを遅くして撮る場面が増える。だから三脚は必需品だ。マクロ撮影はカメラブレの影響が大きいため、屋外の撮影でも三脚を利用したい。三脚は故障することが少なく、その結果として長く使う機材。それに陳腐化することもほとんどないから、少し奮発しても大丈夫だ。ぐらぐらするようなものは論外。できれば実売で数万円級のガッチリしたものを選びたい。


 さらに最近では、小さな静物を撮るために作られた「スタジオボックス」などと呼ばれる組み立て式の撮影用品が売られている。これを使うことによって、光が被写体に回り込んで、綺麗に撮れると同時に、バックに白や黒の紙や布をたらせば、被写体がより際立った写真を撮ることができる。そのほかには、外付けのストロボなども欲しくなってくるが、徐々にステップアップしていけばいいだろう。

 マクロ撮影で一眼レフの本体についたストロボをそのまま発光させると、濃い影ができてなんともみっともない写真になってしまうので要注意だ。ディフューザーと呼ばれる光を拡散させる布や紙をストロボの前に置いて撮れば解決する。最近では「影とり」というナイスなネーミングの製品も市販されているのでそれを使う手もある。


 室内での撮影は、風や天候の影響を受けない代わりに、いろいろと道具だてが大変だ。ただ、こうした道具を少しずつ充実させていって、自分なりの撮影環境が整ってくれば、いろんなものの撮影がより一層楽しくなるのは間違いない。

●ピントにシビアなマクロレンズと絞りの関係

 ここで少しお勉強をしておこう。花の撮影の部分で、被写界深度、つまりピントの合う範囲のことに少し触れた。マクロ撮影では被写界深度はきわめて浅くなり、ピントの合う範囲は狭くなるというものだ。しかしこの被写界深度はある程度コントロールすることができる。それが絞りだ。


 デジタル一眼で使える交換レンズには、ほとんどすべてに人間の目の瞳孔と同じように、穴の大きさが調節できる板が入っている。それを「絞り」という。穴を小さくすることを「絞り込む」といい、光の量が減るために暗くなる。逆に穴の大きさを大きくすることを「絞りを開ける」といい、光の量が増えるため明るくなる。明るさの単位はF値で表現し、F2.8など数字が小さければ明るく「絞りを開けた」状態、F32など数字が大きくなれば暗くなり、「絞り込ん」だ状態になる。ちなみに、レンズそのものの明るさもF値で表し、数字が小さいレンズは明るいレンズ、ということになる。

 絞りは明るさを調節するだけではなく、被写界深度もコントロールすることができる。絞りを開けると被写界深度は浅くなり、ピントの合う範囲はきわめて狭くなる。逆に絞り込むと、被写界深度は深くなり、ピントの合う範囲が広くなる。実際の例は、絞り値を変えながら物差しを撮った写真で確認していただきたい。


 つまり、ある1点にだけピントを合わせて他をぼかしたいときには、絞りを開け、広範囲にピントを合わせたい場合には絞り込めばいいのだ。なお、この絞りと被写界深度の関係は、マクロレンズだけでなく、絞り機能がついたレンズ、つまりほとんどのレンズでも同じ。いろんな撮影に応用できるから覚えておいて損はない。

●マクロレンズの種類と使い勝手、また、マクロレンズ以外の接写方法は?

 マクロレンズは大きく3種類ほどに分けられる。90mmmクラスの標準、160mmクラスの中望遠、300mmクラスの望遠などだ。それぞれ最大撮影倍率が等倍前後のものが販売されていていて、どれだけ大きく被写体を写せるかについては同じ。違いは、最も寄って撮影する場合のレンズの先端から被写体までの距離。これを「ワーキングスタンス」という。90mmクラスだと等倍の撮影をするには70mm程度の「ワーキングスタンス」しかとれないが、160mmクラスでは140mm程度、300mmmクラスでは260mm程度の「ワーキングスタンス」がとれる。


 焦点距離が長くなれば、被写体との距離を長くとることができるため、昆虫などのなかなか近づけない被写体を狙う場合や、凝った照明を使いたい場合などは、望遠系のマクロレンズが有利だ。しかしその分レンズは大きく暗くなり、ぶれやすくなるため三脚が必須になる。焦点距離が短い90mmクラスのマクロであればワーキングスタンスは大きくとれないが、気軽に撮影できるため、こちらのほうが初心者にはオススメだ。


 デジタル一眼でマクロレンズを使わない接写の方法はいくつかあるが、一番手軽なのは「クローズアップレンズ」を使うことだろう。これは普通の標準レンズなどの先端につける虫眼鏡風のアタッチメントレンズのこと。撮影倍率はあまり稼げないが、専用の「マクロレンズ」を買うより安上がりで気軽に楽しめる。そのほか、通常のレンズをさかさまにつけてマクロレンズの代用品として使うアタッチメントや、ベローズと呼ばれる蛇腹を使ったマクロ撮影のアクセサリーもある。

●実はコンパクトデジカメでも撮れる接写、デジタル一眼を使うメリットは?

 コンパクトデジカメでもほとんどのモデルに「チューリップマーク」の撮影モード、つまり接写モードがある。条件さえよければ、コンパクトデジカメでもかなりいい感じの「作品」を撮ることはできるだろう。だだ、表現の幅はかなり制限される。


 ではデジタル一眼のメリットは何か? まず、AFでなく手動でピンポイントのピント合わせができる、という点だ。仮にAFを使ってもピント合わせのスピードが格段に速い。さらに、コンパクトタイプでは、その構造上1点のみにピントを合わせ前後をぼかすような写真は撮りにくい。見せたいものだけにピントを合わせ、他をぼかすことで被写体を引き立たせることが難しいのだ。

 さらに、外部ストロボとの連携を図ったりしようとすると、とたんに無力になってしまうのが、コンパクトデジカメ。ある程度までは大丈夫だが、本格的にマクロで撮りたいなら、やっぱりデジタル一眼を使ったほうが断然楽しい。

 この冬、何かレンズを1本買い足したいと思ってるデジタル一眼初心者ユーザーには、マクロレンズもぜひ選択肢に入れて検討してみて欲しい。手に入れたら、きっと新しい発見があるはずだ。(WebBCNランキング編集長・道越一郎)