高専プロコンの王者・井上恭輔さん(津山高専専攻科)と対談――第7回

千人回峰(対談連載)

2007/03/19 00:00

井上恭輔

国立津山工業高等専門学校 井上恭輔

 奥田 私は、Antwaveのキャッチコピーを見て、なんて詩的な表現ができる人なんだろうとまず感じたんだけど、背景にはそんな苦い経験があったんだ。

 井上 3回目以降は、プレゼンにも十分気を配ることにしました。とくに、4回目の第16回大会は、私にとって最後のプレゼンになるので気合いを入れました。

 奥田 第1回ITジュニア賞の表彰式は、06年1月27日に青山ダイヤモンドホールで開いたんだけど、あの時の井上さんのプレゼンもしっかりしたものだった。

 井上 表彰式に呼んでいただいて、本当にありがとうございました。名だたる企業のトップの方々がずらり並んでおられる。その前なので緊張しましたが、何とかプレゼンをこなすことができました。懇親会場では、実機を使ってのデモのチャンスもいただきましたが、多くの企業の方々がAntwaveに関心を示され、様々な議論ができました。そんな環境のなかで、「そうか、ここは新しいステージへのスタートラインなんだ」という実感が湧いてきて、ものすごく感動していました。

BCN AWARDの大きなトロフィーも獲得したい

 奥田 ところで、井上さんは、モノづくりの意義をどの辺に感じているの?

 井上 津山高専には、1週間、企業に行って実際の体験をする研修授業があります。私は家具屋さんで研修したことがあります。その店では商品を全国に発送しているんですが、受注台帳から、発送先の宛名書きをおばさんが一人で手書きしていたんです。その作業に毎日1-2時間かかるといいます。それで、仕事の合間をみてはエクセルで、台帳から自動で宛名印刷もできるソフトを開発してあげました。そしたら、おばさんが涙を流して喜んでくれるんです。誰かの役に立っている、その実感を持てる瞬間が、私にとっては一番うれしい出来事です。

 奥田 来年は卒業だね。行きたい企業はあるの?

 井上 外資系ではなく、国産のソフトウェアメーカーがいいなと考えています。みんなを感動させるようなアプリケーションソフトを開発したい、そしてBCN AWARDで大きなトロフィーをもらいたい、それがいまの夢です。

 奥田 あなたなら、きっとできる。ぜひ「大きいトロフィー」を獲得してください。期待していますよ。

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Profile

井上恭輔

(いのうえ きょうすけ)  1985年5月、広島県福山市生まれ、21歳。中学校入学直後にパソコンの面白さに目覚め、1年生の時に英単語学習ソフト「English君」を独自に開発。01年4月、国立津山工業高等専門学校情報工学科に入学。2年生の02年10月に、全国高等専門学校プログラミングコンテストに初参加、自由部門で最優秀賞(文部科学大臣賞)受賞。03年には審査員特別賞、04年、05年は最優秀賞を連続受賞。06年4月、同高専の専攻科に進学。